---エンちゃんにとって、PINKっていうのは初めて自分で全面的に曲を書いて、歌うバンドだったと思うけれど、なぜ、そこにあのPINKのメンバーが集まったんだろう?

「あの当時っていうのは、ビブラがあって、ピテカンみたいなところがあって、ツバキ・ハウスでみんなで遊んでて、東京フリークスみたいなムーヴメントがあって、すごく面白かったんだけれども、PINKのメンバーっていうのはその中のメインストリームにいた人達じゃないんだよね。やっぱり音楽人間ていうか、自然に音でなんかやろうとする人間が集まった。やっぱり、僕のファッションの人とか、映像の人とかとつきあうのは楽しいんだけれど、つくづく自分は音楽人間だなって思うところがあって、やっぱり、こいつらと感覚があうなってところはあった。それで、そういう人達って、音楽産業の中で周辺の仕事に行きがちじゃない。CMの音楽とか。でも、そういう人達が本気でバンドやろうってドヤドヤと集まったのがPINKだったんだよね」

---PINKのデビュー・アルバムには、そういうお祭り的な喧噪みたいなのが残っていますね?

「バンドのね最初のレコードっていうのは、たいていそうじゃないかとは思うけれどね。でも、あの頃の東京って本当に面白かったから、そういうドヤドヤした雰囲気は残っているんじゃないかな。あの頃って、音楽のスタイルにしても半年ごとに新しいものが出てきて、あれは面白い、これは面白いって感じだったものね。でもあの頃のバンドってみんななくなっちゃって、残ったのはPINKだけたった」

---そのPINKの活動の分岐点みたいなものがあったとしたら、どのあたりだと思いますか?岡野くんなんかは『サイコ・デリシャス』でひとつ結論が出たって言っていますけれど?

「それはあるだろうね。でも、変わったといえば1枚目と2枚目の間でも、随分変わったと思うし、最初はあの頃の東京のカーニバルみたいな中にいたのが、アルバム出してからは自分達だけになっていったでしょ。そうすると、それまでゴッチャだったひとりひとりの色というのも見えてきて、最初はファンク、ファンクっていってたのが、岡野くんはいや、オレはグラムが好きだとか言い出すとかね。そこでもうある種の分裂というのは始まっていた」

---『サイコ・デリシャス』で、ある程度セールス的にも成功したことはどう感じました?

「こんなものかなって感じだった。ヒットっていうのは、あくまで副次的な欲望だから。それよりも、PINKとして、ひとつ完成されたものを作ったって満足が大きかったかな」

---『サイコ・デリシャス』は一番、エンちゃんの個人的な世界が強く出たアルバムじゃないかとも思いますけれど?

「そうだね」

ーーーそれが『サイバー』でメンバーそれぞれが曲を持ち寄る形になって、昨秋以降は活動休止状態になっていたでしょう。これはどういう過程でそうなっていったんですか?

「それはね、遡ると最初にエピックでシングルを作って、その後、ずっとアルバムを作らせてもらえなかったっていうのがあったでしょ。それで、ムーンに来た時に、2度とそんなことあっちゃならないっていうんで、俺達の方から2年間に3枚アルバム作らせろって言っちゃったんですよ。そのペースで結局、『サイバー』まで4枚作っちゃったんだけれど、それで結構しんどくなったっていうのはあった。でも、確かに外からみるとPINKは1年間何もやってなかったわけだけれど、自分自身の流れからすると、そういう意識はあんまりないのね。別に1年間なんにもしてなかったわけじゃないし、今は録音面白くてそれをやっているとか、そういう自分の中の時の流れっていうのが一番大事だから。

---ライヴやめて、レコーディング・バンドとして残るみたいなアイデアは、エンちゃんとしては?

「僕はPINKはライヴ・バンドだとか、レコーディング・バンドだとか、考えたことがないんだよね。そんなにバンド経験がないでしょ。ビブラとPINKだけで、他のメンバーみたいにいろいろバンドやって、人のバックとかの仕事もたくさんやっているんじゃなかったから、そういうことってよく分からない。ライヴ・バンドって言われる人達は40本、50本やるんだろうけれど、PINKのツアーは最高でも15本くらいしかやったことないし。まあ、みんな音いじくるのが好きな人達だから、そんなに同じことばかりできないんだよね」

---新しいアルバムの曲は、エンちゃんはどういう風に作っているんですか?

「12チャンを買ったんですよ。カメの家に置いてあるんだけれど、それで夏頃からカメと曲を録りためてきているのね。やっぱり方法論が変わるから、出てくる音もだいぶ変わると思う。メンバーはフル・ゲストで、主に(川島)バナナさんと窪田(晴男)かな」

---ラスト・コンサートのリハーサルは、どんな感じですか?

「最初リハーサルした時は、懐かしかったですよ。ああ、良い曲書いてるなって思ったり、自分との距離が違ってきているから、歌いながらレコード聞くみたいに聞いちゃうみたいなところがある。新しい曲はやらないわけだし、これでPINKが一段落して、次の自分のライヴをどうやろうとか、そっちの方が楽しみなんだけれども、まあ、気持ち良く歌えたらいいなあって思ってます」

1988.10.26(THU)
AT ALFA STUDIO “Ast”
文・インタビュー/高橋健太郎

 

◆ACT THE FINAL 特集記事◆
(1) ライブ・レポート(1988.11.5 渋谷公会堂)
(2) PINKの音楽的変遷 PINK 5YEARS
(3) 乱反射をくり返しながらPINKは今もころがり続けている
(4) つくづく自分は音楽人間だなって思う(福岡ユタカ インタビュー)
(5) PINKは革新的なスタイルを作った(岡野ハジメ インタビュー)