---PINKが好きな理由を述べよ。

ヘェッ!だってカッコイイもん。オシャレだもん。・・・・・・じゃあ困るか。そうだろうな。
しかし、私が察する限りPINKというとどうも通受けの感がぬぐい切れない。いわゆる評論家筋には評価が高いとかそういうプロのあれね。だから「PINKが好き」と言うと、「キミのなかなかわかってるじゃない」みたいな暗黙の了解が取り交わされてお互いにイイカッコができる。それが一概にイケナイとは思わない。ハード・ユーザー同士の連帯も時には必要だ。レコード・コレクターを私は”おたく”差別するつもりはない。

PINKの魅力を語るには、私の場合は読者の皆様と同じく彼らの人柄や好きな食物や女のコのタイプはほとんど知りませんので、当然彼らの音楽に言及するしかない。他の人はよく知らないが、私はPINKをカッコイイロック・バンドだと思っている、音がカッコイイっていうのは私がロックを聞く場合に非常に重要なポイントであるらしい。その判断基準をえらく生理的なものだったりする。テクニックに関しちゃ自他共に認める腕前の持ち主だが、楽器を弾かない私のような者にもカッコイイ音がどんな音であるかがPINKを聞くとわかるのだ。

で、PINKのオシャレ部門に入る。この言葉がまたやっかいなシロモノである。私、常日頃から感じていることがありまして、それはロックがいつからかもっともオシャレじゃなくなったという点。やってるヤツも観に来てるヤツもパッとしないコンサートなんてアタシは行きたくないもん。それをアーティストとファンの壁がなくなっただの、ロックの一般化だのとホザクな、てーの。
「適当にダサイ方が売れるんですよ」だって!何だい、その志の低さは!と、私は言いたい。「だってね、オシャレなコなんてレコード買いませんから」。キミ達、こんな失礼な言い方されて黙ってるつもりか?

話がそれた。PINKがオシャレだというのはステージ・コスチュームやヘア・スタイルの次元ではない。彼らの音楽は最もコンテンポラリーなロックのスタイルを打ち出している。彼らが刺激なり感銘を受けた音楽が血となり肉となって、”力量”に”技術”に達し、誰にも真似のできない個性=オリジナリティを生んだ。だからPINKのオシャレはスタイルと同意語だ。

オシャレに流行があるように、PINKも時代の音には敏感な臭覚を持っている。流行モノに手を出すこのC調さ、否フットワークの軽さも私はロックだと思っている。十年一日の如しの一筋さんロッカーだってイイやね。ファッションだって”定番”はある。トラッド・ブームが何年か周期でやってくるように、やれジャズだ、モータウンだ、サイケだと音楽界も原点回帰現象(レトロという名の煮つまり)ブームらしい。それでも、きっときっと面白いこと、新しいことできるに違いないとPINKは旺盛な好奇心でもって常に挑戦的な態度を崩さない。

「オレだってステージ立ちゃ汗くらいかいてるんだゼ」と、福岡ユタカが言ってたっけ。キャラクターと資本投資にモノを言わせるロックがまかり通るこの状況で、PINKの「音だけで勝負してみせる」態度は清々しく男っぽいと思う。
PINKの音楽にふれるとき、私が一番感じるのは”ロックの恵み”である。そいつを「PSYCHO-DELICIOUS」というのだ、きっと。

(COPY・KYOKO SANO/PHOTO・SHO KIKUCHI)