今年が正念場なのでガンバリたいと思います。

ピンクが2月25日にセカンド・アルバム「光の子」をリリースした。
前作が研ぎ澄まされた鋼のようなクール・サイドを伝えるものであったのに対し、今回のアルバムは、ライヴでの熱気をも込めたねばりのあるウォームな印象を与えるものになっている。
改めてメンバーを紹介させていただくと、
福岡ユタカ(vo)
岡野ハジメ(b)
矢壁アツノブ(ds)
渋谷ヒデヒロ(g)
ホッピー神山(kb)
スティーヴ衛藤(per)
ここのところでは珍しいほどのバンドらしいバンド、バンド臭いバンドである。

 

---とりあえず、セカンド・アルバムづくりのスタートから・・・・・。

福岡 デビュー・アルバムが出て、割合思っていた通りのリアクションがあって。1枚目はデビューってことで題名も『PINK』にしたんだけど、2枚目はタイトルを付けて方向性を音でも出したいなあ、ということで。で、『光の子』っていうことになったんですけどね。

 

2枚目はより外へ向かうもの、カラフルなものを出したかった。

---1枚目よりはリラックスした感じですが。

福岡 そう、当然。それは、そう意図したし。生楽器を多く使いたいっていうことで、12弦ギターや生ピアノを使ったし。1枚目はもうすこし外へ向かうものとか、カラフルなものを出したいなと思って。これはもう3枚目以降どんどん拡がっていくと思うんですよね。

---曲に関しては、今回新たに作ったものですね。

福岡 それが一番大きい。「青い羊の夢」は昔からやってだけど、後は全部新しいですよ。

---今回のアルバム制作のうえでのメンバー個々の役割というのは?

岡野 それは前作と同じじゃないかな。

福岡 けっこうわかんないんだよね、みんな。

岡野 入れかわり立ちかわり制があるから。たとえばロックっぽいニュアンスのギターの音なんかは、僕がけっこう言うほうだし、唄のときとかはカメさん(矢壁)が出てきてやるし。6人がずっとついていると収拾がつかなくなるっていうのは前でもわかったし。

福岡 前回と違うとこっていうと、今回岡野君は12弦ベースをずいぶん弾いてますね。

矢壁 ベース弾いてる時間よりずっと長かったでしょ。

岡野 それはいえるね。

---じゃあ音作りの点でもかなりバンド的な進め方をしてるわけですね。

福岡 だからちょっと、時間かかっちゃった。

岡野 ”におい”を出すのに時間がかかるっていうか試行錯誤があったから。

---自分の担当楽器を録り終わったら帰る、なんていうことはないわけだ。

岡野 ホッピーにしたって、何もすることなくても(笑)最後までいる日っていうのもありましたしね。

ホッピー そうそう、よくあるね。

岡野 スティーヴにしてもパーカッションはいちばん最後に音を入れる場合が多いからね。ヒマな時間とか多いけど。

ホッピー ひたすらこの2人(ホッピーとスティーヴ)は場を盛り上げる役でね。レコーディングにありがちな張りつめた雰囲気をやわらげるというね・・・・・。

岡野 ウルサイから外へ出てろという(笑)。

ホッピー おかげでホットなLPができた。

スティーヴ 渋谷くんも盛り上げたりしてたしね。やったよね渋谷君、両側からガンガンに。

---(笑)じゃあ、そういう音以外の部分でも・・・・・。

ホッピー ええ、ガンバリました。

スティーヴ 気い遣って気い遣って(笑)。

 

結局ピンクは自分たちが”カッコいい”と思うものをやり続ける。

---1枚めのクールな感じからは温かみがあるような気もしますが・・・・・。

岡野 普通に聴けるポップスとしての曲も入ってるし。

---前のは緊張感があって、それこそ何度も続けて聴くのはツラいところもあったんですが・・・・・。

全員 (笑)

岡野 それはあるよね。聴く方もけっこう真剣になって聴かないと良さがわかんないみたいなのはね。

矢壁 来るなら来いという気持ちでね(笑)。

岡野 ウチは割とそっちの方が楽なんですよ。というか、すぐそういう方へ行きがちなの。

福岡 真面目な人たちですからね。

岡野 すごい入り込んじゃうっていうか、エキスっぽくなっちゃうからね。かえって普通に聴いて「あっ、カッコいいな」みたいなのをさりげなくやる方が、かえって難しい。

福岡 ミキサーが替わってるんだよね、前の人と。同じ寺田さんなんで気付かない人もいるかもしれないけど、この音の違いは大きいよね。ミキサー違うと音は全然違うもん。

岡野 当然やり方も変わってくるし。今回、最初の話し合いの段階では、けっこう寺田さんに委ねよう。っていうのがあったし。でも、結局口出しちゃったけどね(笑)。

---そのあたりにも、徹底した”こだわり”みたいなのを感じますね。思うとおりの音をレコードにしたいという。

岡野 結局ピンクは自分たちが思った”カッコいいもの”をやり続けるっていう・・・・・。

福岡 すごいシンプルなような気がする。やってることは。

---それがバンドとしてやってる理由でもある。

岡野 そうだね。バンドっていうのがカッコいいんだよ、僕らにとってね。多くのロックをやってる人にとってもそうだと思うけど。

福岡 カッコいいバンドが少ないし。世界的に見てもね。

岡野 今、日本でバンドっていうのを思いうかべるとプロジェクト的なものと、すごく古いタイプの、ヴォーカルの顔だけは知ってるけど、後はどうも・・・・・みたいなのしかない気がして。おのおののキャラクターがあってカッコいいっていうのがね。

---メンバー・チェンジしても気が付かない・・・・・というような。

岡野 それも大して話題にならないっていうね。そういうんじゃなくて、それぞれに必要な人で全員いるからピンクであるみたいなね。そういう意味では貴重な存在ですよね。

---一人抜けちゃうと、どうなるかわかんないっていうのは強そうですね。

福岡 換えはなかなかきかないですね。少なくともこの音にはなっていかないとね。

---今年は、ホール・コンサート・ツアーをやるという話ですが・・・・・。

福岡 やります。そのためにレコードをですね(笑)、たくさん聴いて欲しいし。1枚目は僕の思ってた以上に売れたんだけど、2枚目、3枚目くらいまでには、ある程度のところまで行きたいなと思うし。

---全国何か所くらいで?

福岡 12か所です。サンプラザを皮切りに。今年はけっこう忙しくて。ツアーが終わると3枚目の準備に入るし。まだわからないけど海外レコーディングっていう可能性もあるし。もし、向こうへ行けばレコーディングだけじゃなくて、コンサートもたぶんやるだろうし。そうなるといろんな展開が見えてくるだろうし。

 

今年はコンサートでパッ!とはじけて、気持ちよく3枚目を作りたい。

---海外でやるということについてはどうなんですか?

福岡 そういうことを僕は言い続けてるんだけど、まだ具体的に雑誌やなんかに発表できることはないんです。ただ、やっぱり相当厳しいみたいだね。インディーズで出すことは簡単なんですよね。ただ、1回出して十分なプロモーションもできずに売れないと、2回目からは全然相手にされないらしいし。

---海外で出しましたっていうことだけをいってもしょうがないしね・・・・・。

福岡 それで売れればいいのかもしれないけど(笑)。

岡野 もう通用しないでしょう。一応タスキに書くことが1行増えるぐらいのものでさ。

福岡 向こうでレコード出す費用ってのは日本と同じくらいかかるらしいのね。その足場を固める意味でも、こちらである程度やってないとダメだという。

---将来的には、引き合いさえあれば・・・・・。

福岡 その点についてはすごく積極的ですよ。

岡野 においをつかみたいっていうのもあるし。それがいちばん大きいね、僕の場合。アメリカはわかるの。日本の拡大版だと思うからね。もっと肉体的で、コカイン的な(笑)。ヨーロッパの暗黙のうちのアートっぽさっていうか、伝統をね。

福岡 やっぱり歴史が長くて、ふところがメチャクチャ深いんじゃないかな。

岡野 歴史だけなら日本も2,000年の歴史があるからね。

福岡 日本はそれが途中で切れてる気がするけど、向こうはそれが脈々と続いてるからね。

岡野 社会的なピリピリしたものを見てみたいね。

福岡 でも、アメリカも見ときたいんだよね。世界の実験工場みたいな。やっぱり人体実験してる国ってアメリカだもん。

---じゃあ、最後にひとりずつ今年にかける意気ごみというのを。まずスティーヴさんから。

スティーヴ まあ、レコーディングも終わりましたので、早くコンサートをやってパッーとはじけたいと思いますね。

渋谷 戦いたいと思います。

ホッピー ツアーが終わったらノンビリしたいですね(笑)。今年は休みの時とガン!と音楽をやる時をキチンと分けたいなあ。

スティーヴ お前ナニ文句言ってんだよ(笑)。

ホッピー 今年は好きなことをしたい!

矢壁 2枚目がやっと終わりましたけど、コンサートにいっぱいお客さんが見に来てくれて、気持ち良く3枚目のレコーディングに突入したいと思います。

岡野 それはいえるね(笑)。今年はピンクをさらにおっきくしたいというのはみんなあるだろうけど、バーンといきたい。あと、個人的にはやりたいこといっぱいあるんですけど、それをひとつひとつ着実に(笑)やり続けていくとヒマがないんです(笑)。久しぶりに充電したいんですよね。

ホッピー 働きバチだもんな。

福岡 3枚目のレコードをこの時期に出すってことは決めてたわけですよ。今、ロング・セラーっていうのがなくて、ちょっとたったらすぐ忘れられちゃうから。矢つぎばやに出して、しかも高度なものを・・・・・という。そのプレッシャーは大きいと思う。今年1年は、いわゆる正念場ですので、ガンバリたいと思います。

(取材・堀 裕一)

 

「MUSIC STEADY」1986年3月号掲載

>>アルバム「光の子」レビュー記事(MUSIC STEADY)