夏ぐらいからセカンドアルバムのレコーディングにかかりきりで、しばらくぶりのPINKのライブが12月14、15日、ラフォーレ・ミュージアム飯倉で行われた。会場は舞台がかなり広くとられ、客席はすべてスタンディング形式。観客の9割以上は踊りまくるPINKのライブにはうってつけの空間だ。いつものように普通のロック・コンサートよりもお洒落な子の姿が目立つ。

BGMが止み、エスニック風なパーカッション・リズムがテープで流れ、いよいよPINKの登場。ステージ後方のカーテンの後ろからメンバーが飛び出すと観客は早くも大声援。メンバーは、ちょっとプリンスのバンドを思わせるようなグラマラスかつシックな衣装できめている。視覚的なカッコよさもPINKの大きな魅力だ。オープニングはニュー・アルバムからのシングル曲「Don’t Stop Passengers」。全員のコーラスが肯定的な力強さを感じさせるダンス・ナンバーだ。続いてニュー・アルバムから「光の子」「日蝕譚」の2曲を披露。小柄な体からパワフルなビートを叩き出す矢壁アツノブ、ソリッドで重い岡野ハジメのファンクベース、カラフルでエスニックな香りがするスティーブ衛藤のパーカッション、渋谷ヒデヒロは冷静沈着にギターのカッティングをきざみ、キーボードのホッピー神山はぶっといビートの上にさまざまな音色で色彩をそえていく。めくるめくようなPINK独特のダンス・ビートが会場を支配して快調なスタートだ。

「Soul Flight」「Secret Life」「Private Story」とおなじみのナンバーが続き、再び新曲に戻って「星のPicnic」。ちょっと’70年代風のゆったりした雰囲気が感じられる明るいナンバーだ。続いてオーソドックスな8ビートのロック、「Gold Angel」。次の「Luccia」は吉田美奈子が詞を書いた、メランコリックなアコースティック・ナンバー。暗いステージにピン・スポットで浮かんだ渋谷クンとエンちゃんの生ギターの幻想的な響きにしばしウットリ。ラテン・ジャングル・ファンクといった感じのリズムの「Moon Struck Party」から再びダンス・ナンバーが続き、舞台上も客席もグイグイとボルテージを上げていく。「Young Genius」では岡野クンのヘビーなベースがうなりをあげる。リズムに合わせてフラッシュがたかれ、盛り上がりは最高潮に達した。「Zean Zean」「Hinemos」とスピーディーなナンバーで終わりを告げたが、まだ踊り足りない客席からは熱烈なアンコールがかかる。アンコールの3曲では客席も照明を上げての大ダンス大会。手をふってメンバーが去った後は、汗ビッショリで満足気な表情をうかべた人々の顔、顔・・・・・。

新曲7曲を含む全20曲。今まで以上に多彩な色合いを感じさせ、いちだんとたくましくなったサウンドで、2月25日発売の新作「光の子」への期待がいやがうえにも高まった一夜だった。

(文・野口顕/撮影・磯田守人)

「GB」1986年3月号掲載