やはりポップ・ミュージックにはガッツが必要だ。貯め込んだエネルギーが、ツンツンと体全体を刺激する。ロックもポップスも含む広いフィールドに飛び出したPINK。けれど、彼らの精神は、デビュー以来まるで変わっていない。

1月28日に3作目のアルバム『PSYCHO-DELICIOUS』を発表する。これは、これまで以上に聴き手をこばまない内容でいて、しかも、前に書いたように、強力にツンツンくるのだ。前作の『光の子』よりもさらにシンプルなサウンドをめざし、音楽性もギュッとしぼられている。ぜい肉をそぎ落したような印象だ。

「あ、そう思うでしょうね。シンプルな感じにしたというのはあります」(矢壁)
「でも、見せ方というか、表に出している部分がそうなっているだけで、実際のレコーディングでは、まえとそれほど変わっていない」(岡野)

つまり、こうだ。レコードの作り方では、形を変えて、よりシンプルに”届きやすく”しているが、バンドの音をねじ曲げるようなことはしていない。あのPINKならではの様々な音楽性が同居して火花を散らしているサウンドをそのままに、少しレコード作りがうまくなった、と。

「昔のロックには、なんか良いんだが悪いんだかわからない、ヤバそうでいて、でも惹かれてしまう---背筋がゾクッとくるような、そういう感じがあったでしょ。やっぱり、どんなにポップになっても、それだけは持っていたいよね。ロックの部分は捨てたくない」(岡野)

『PSYCHO-DELICIOUS』は、ギリギリのところまで余分なものを捨てて、PINKの核を示したようなアルバムだ。聴いていて鳥肌が立つ。官能的というか、ロックのピュアな部分がにじみ出ているというか、裸のままでも充分にうったえかけてくる力強さを感じさせる。

PINKとして、また、様々なセッション・ワークをこなす音楽集団としても、一目置かれる存在になっているのに、いつもラフでいて斜に構えた、これぞロック・ミュージシャン!のスタンスをとっている。
アルバムがリリースされたばかりだというのに「もう次のことを考えはじめている」なんて、大胆なことを言うのも、正直さゆえ。

「ボクらは未完成ですよ。まだまだやることがたくさんある」(福岡)
『PSYCHO-DELICIOUS』は素敵な作品だが、これが、PINKの”はじまり”でも”終わり”でもない。走り続けるPINKの、輝かしい記録なのだ。

(文/高橋竜一)