PINKは、時間と空間の隙間をくぐり抜けて、光と闇の交差するその美しい瞬間を見せてくれるバンドであった。風に震える木々の繊細さと、太陽にのびる草々の力強さを歌うバンドPINK。生まれて初めて万華鏡をのぞいたときの幻想的な気分を鮮やかに甦らせてくれる不思議な音楽集団--彼らのことをそんなふうにとらえていたのは、一体、このワタシだけだったのでしょうか、ねぇっ、教えて、教えて、教えて、エンちゃんっっ。と、本気でステージ前までにじり寄り、問い詰めてしまいたくなったのは、3月29日に中野サンプラザで行われたPINK初のホール・コンサート。これまでにも都内のライブ・ハウスやファッション・ホールでの彼らのコンサートには足しげく通っていたし、そりゃあ、PINKが十分、フィジカルなバンドであることは分かっていたけど。でも‥‥‥さ。‥‥‥うぇん、だぁーって、今夜のコンサートったら、会場に入ったとたん汗のニオイなんだもん。オシャレなピンクが、かしこいピンクが、これじゃまるで体育の授業みたいじゃんかっ。コラッ、となりの少年、ゴブシなんか振り上げんなっ!

それはすでに7曲目。エンちゃん、つまり福岡ユタカ氏のめずらしく(?)キンチョーが窺えるMCの後、眠る前に何度も聞いた佳曲「青い羊の夢」が始まった。と、前方の一群がドッタンバッタン踊りだす。その激しめの波は徐々に後方へと広がって、ふっと気がつけば、一部を除くほとんどの観客がドッタンバッタンをやっているではないか。まあね、揺らす程度に体を動かしたくなる曲ではある。うん。が、だな、今夜のPINKはやけに挑発的、妙に元気。の、せいで。見てるこっちもなんだか気合い入っちゃってラクに踊るっつうより、踊らねば!みたいな感じになるわけだ。澄んだ歌声がひたすらきれいだった「LUCCIA」はともかく、全般的にどの曲もガッツがあってタジタジ。以前、ドラムの矢壁少年が、「ステージに立つ前はユンケルをゴクゴク飲んじゃう」なんて、ルックスから想像しがたい事実を教えてくれたけど、それが精一杯証明されました。ステージのサイズが大きくなったとともに、彼らのサイズも大きくなったということでしょう。個人的好みはともかく、このツアーのPINKはパワフルでダイナミック。フル・ボリュームのフル・エナジー。スゴイ。「星のピクニック」のような、どちらかというと軽めの曲も、ずいぶん音が厚くなって、そのぶんイメージの広がりもありました。豊か。うん、そーゆーニュアンス。肉も骨も両方ついて、サウンドがいっそうドンとした。重いリズムがぶつかり合い、重なり合い、ホールのテンションが高まって、結果、一人残らずのダンス天国ってわけなのだ。汗ぐらいで文句いうなって?わーってるよ、わーってる。ぶんっ。

さて皆さんお待ちかね。「Don’t Stop Passengers」、「砂の雫」となだれ込むダンス・チューン。コンサートは佳境に入って、ここでダメ押しのごとく、いまいちどの起爆剤「Young Genius」がドカンと落とされ、会場は一気に燃えた。メラメラと、ゴーゴーと燃えまくったのであります。そして、極めつけ「Zean Zean」でドラムとベースの華麗にして野蛮な戦いを見せつけ、「HINEMOS」で終了。アンコールも実に軽々としたステップで現れて、どうにも頑丈なPINKの面々。それにしてもねぇ、この不気味なまでのたくましさ、どないしょ。

(文・宇都宮美穂/撮影・管野秀夫)

1986年4月12日/福岡都久志会館 ¥3,000-