ここ数か月ほど「PINKは解散するらしい」「いや、ライブ活動はしないがレコーディング・バンドとしては継続するらしい」「ジェネシスみたいな活動形態をとるようだ」等々、PINKに関する様々な情報が当編集部に寄せられたきた。が、現時点で正式に決定しているのは、11月上旬に東京と大阪でライヴを行い、11月28日にコンピュレーション・アルバム『FINAL MIX』を、そして2月25日に5thアルバム『RED&BLUE』をリリースするということだけ。要するに、「3月以降PINKとしての活動は白紙である」ということが決まっているだけで、”PINK解散”とは断言できないのが現状だ。

もともとPINKは家族的な、運命共同体的なバンドではない。「日本では珍しい、いつ解散してもおかしくはないバンド」といった形容すらされるほど、バンドらしくないバンドである。それ故逆に、今回のような事態になった場合、解散なのかそうでないのか、非常に見えにくい状態になってしまう。そこでJAPANでは、中心メンバーである福岡ユタカ(V)、岡野ハジメ(B)、ホッピー神山(K)、にそれぞれ電話インタビューを行い、PINKの現状と今後について、少しでもわかりやすく整理してみようと試みた。

「まあ、活動中止ということでしょうね。レコードがどうなるかなんて、まだ全然話も聞いてないし、今後次を作るという話も全く聞いてないし。まあ、今次の『RED&BLUE』だっけ?(笑)、それを作ってるわけでしょう?だから、その後どうなるか僕はわかんないですね」(岡野)

「解散っていう形はとってないですね。もし、それぞれのメンバーが何か動き出すとしたら、契約が切れてからになるでしょうね」(ホッピー)

「でも、何年後かにまたアルバム作ろうとか、そういう約束事みたいなものも全くないですね」(福岡)

要するに、限りなく解散に近い活動停止、というのが現況であるようだ。だが、それにしてもなぜこの時期に、そういった結論が下されたのであろうか。

「一番最初は、PINKはバンドのはずだったんですけど(笑)。バンドらしいバンドっていうのをイメージしてましたよ。それがいつの頃からか条件が付いてしまった、みたいなのは感じますよね。条件付きでPINKやってる、みたいなね」(岡野)

「従来、『PSYCHO DELICIOUS』ぐらいまで、僕がほとんど曲を書いてたんだけど、メンバー各自も曲を書くようになって。それだったら、みんながうたった方がいいんじゃないってことになって(笑)。でも、そうしちゃうと、バンドとしてのベクトルが散漫になりますからね。ほら、前のレコードが多少散漫になったみたいに。それじゃあんまり一緒にやる意味がないんじゃないかっていう。よくある話ですね(笑)」(福岡)

「PINKの曲を作る段になって今回初めて思ったんだけど、曲はすごいいっぱい出来るんだけど、それがPINKの中に入ってどうかって考えると、絶対にこれはPINKじゃないってものばかり出来ちゃってすごい悩んだんですよ。出来る曲出来る曲が、思想性も含めてベクトルが、質感がまるで違うものになっちゃって。けっこう大変だったんですよ。PINKに合わせるみたいなね、僕がPINKに合わせるみたいな形で作品を作らなきゃいけなくなっちゃったなあ、みたいな」(岡野)

「やっぱり長くやってると、最初の勢いじゃないところで音楽をやらなきゃいけないから。そうすると、個人個人の細かい考え方の違いっていうのが出てきますからね」(ホッピー)

確かに、基本的には福岡の作品集である今作『FINAL MIX』を聞いても、ファンク・ナンバーからバラードまで、という音楽性の変化と幅広さ、そしてそれらをPINKサウンドとしてひとつにまとめる困難さは十分感じとれる。だが、それと同時に、これほどまで、音楽センス、演奏力、大衆性を兼ね備えたバンドが活動停止するという事実に対して、遺憾の念もまた禁じ得ない。

今後、福岡はドラムスの矢壁アツノブと共にソロ・ユニットを指導させる。また岡野はサロン・ミュージックの吉田仁とのコラボレーション、クラドロフォニックスを既に始動させており、12月21日にはそのファースト・アルバムのリリースが決定している。一方、ホッピーは当面布袋寅泰バンドにかかりっきりとなり、それ以降の活動は未定、ただし来年には新たなバンドを結成したい意向であるという。またギターの逆井オサムはセッションを中心とした活動をしていくようだ。

それぞれが名うてのミュージシャンであるだけに、バラバラになっても質の高い仕事が期待されるが、では一体PINKとしての活動再開というものはあり得るのであろうか。

「それはもう、その時になってみないとわかんないな」(岡野)

「でも、PINKのこの5人でやれば絶対こんだけすごいことが出来るっていう確信は全員ありますからね、とりあえず」(ホッピー)

「もし、万が一PINKが再開するとしても、全く同じメンバーになるっていうことはないだろうね」(福岡)

(ROCKIN’ON JAPAN記事/文:佐藤 健)