オープニングの「MOON STRUCK PARTY」からラストの「ELECTRIC MESSAGE」まで、この日演奏された曲は全部で17曲、さらにアンコールでは「TOKYO JOY」、「ヒネモス」、「青い羊の夢」、そして「砂の雫」の4曲が演奏された。しかし、その「砂の雫」が終わった後も、再度のアンコールを求める拍手は鳴りやまなかったーーー。

PINK最後のコンサートとうたわれた”THE FINAL” は、PINKのメンバーにとっていったいどういう意味を持っていたのだろう。おピンク兄弟の時代からPINKのライヴに足繁く通い続けたファンのひとりとして、この原稿は書きます。

現存する日本のバンドの中で、PINKは間違いなく3本の指に入ると僕は思っている。ただし、それはレコーディング・バンドとしてであって、ライヴ・バンドとしての評価はもう少し厳しくせざるを得ない。というのも、デビュー直後に行われたライヴの印象があまりにも強烈だったからだ。メンバー各自の演奏テクニックもさることながら、何よりも驚かされたのはステージから客席に吹きつけてくる風圧の大きさ。そのとてつもないエネルギーに満ちあふれた演奏には、ただただ驚かされた。

デビュー当時は、そんな多大なエネルギーを秘めていたPINKだが、その後のライヴではそのエネルギーが効率よく消費されたいたとはいい難い。メンバー各自のエネルギーのひとつの大きな固まりとなって客席に押し寄せてくるのではなく、むしろ拡散してしまう傾向にあった。それとPINKのライヴには”物語”が欠けていた。言い換えるなら、起承転結というものが見当たらなかった。この日のPINKは久々のライヴであったにもかかわらず、平均点以上のステージを見せてくれたが、ついに最後まで彼らはその”物語”を見つけることができなかったという印象が残る。

・・・・・などと言いつつ、もうこの先PINKのライヴを見ることができないと思うと、たまらなく淋しい。PINKのファンには明日からどのバンドのライヴに足を向けるのかな? PINKの代わりになるバンドなんて、日本にはいないよねー。

(渡辺 亨)