やってまいりました。12回目のリレー対談です。今回、ピンクのご指名はBOØWY。学園ツアーの合間を縫って、スケジュールを調整しての顔合わせでございます。ピンク側からは福岡ユタカ氏、岡野ハジメ氏、矢壁アツノブ氏の3名が、BOØWY側からは布袋寅泰氏、氷室京介氏の2名が出席して、話はフェイド・インします。
氷室 前も聞いたかもしれないけど、EAST WESTの78年に出てませんでしたか?
福岡 8じゃない、9。
氷室 79年。じゃやっぱりそうだ。
布袋 いっしょだったんだ。
福岡 あの頃はソウルバンドだったからね、僕。
岡野 (大笑)本当?
福岡 いや、別に僕はイヤじゃないですよ。
氷室 ヒゲはやしてましたっけ?
福岡 はえてたかもしれない。
岡野 (大笑)エーッ、知らなかった。ヒゲはやしてたのエンちゃん。
福岡 ヒゲ生やしたし、髪は長かったよ。
バンドやるのにジャンルを名のる必要はないと思うね。
---さて、出会ったキッカケを。
福岡 僕が意識したのは最初のレコードがでて『暴威』ってデビッド・ボウイみたいな名前だなと思って、そしたらヴォーカルが”氷室狂介”って名前で。こりゃすごいなと思ってさ(笑)。
氷室 ”布袋寅泰”の方がもっとすごくない?
布袋 そりゃ本名だからしょうがない。
福岡 その後、しばらくして一回ライヴ・インで一緒にやったことがあったんですよね。それで、僕は布袋くんのギターが印象にあったんです。そうこうしているうちに、坂本みつわと”布袋っていいんだぜ”っていう話になって。
---で、ピンクのレコードに・・・・・。
布袋 参加させていただいて。そん時初めて話したんですよね。
福岡 僕はそれが初めて。
---ピンクとBOØWYというのはけっこう聴く人の層がだぶってるようなところがあるし、両バンドとも”ロック”ってことにはけっこうこだわってるような気がするんですけど。
岡野 BOØWYはどうなんですか。その辺は。
布袋 けっこう逆のところもあるよね。ロックというイメージのなかで・・・・・
福岡 語られるのは本意ではないと。
布袋 やってることはロックなんだと思うんだけど。
福岡 ロックっていう言葉がもう消費されつくしているからさ。
布袋 バンドやるのにジャンルを名のる必要はないと思うのね。バンド名と自分らがあればいいというか。受けとる方がロックンロールだと思えばそれでいいし。
福岡 それで正解じゃない。
岡野 本当にそうだよね。
布袋 けっこうオレは楽しんでるな、自分たちの音楽を。
岡野 絶対そうだよね。でも、かえって”ロック、ロック”って言う若い子が出てきて欲しいなっていうのはあるんだよね。
布袋 あ、すごい岡野さん的。
岡野 うん。”僕はソウル好きです”とか”パンク好きです”っていう典型的な(笑)人たちがいなくなってきてるでしょ。
布袋 いろんなものが出すぎちゃったから、自分で自分のやりたいことがわかんなくなっちゃってるんだよ。”僕はハワード・ジョーンズとヴァン・ヘイレンとクラフトワークが好きなんだけど、自分はどれやっていいかわかんない”とかさ。自分のなかにへんに吸収しすぎちゃって新陳代謝ができなくなってる人が多いじゃん。ストレートにこう思ったらこうやる、みたいなバンドって聴きたいよね。
岡野 ホントにオレ、パンク・バンドが聴きたいの。すごいゴリゴリのパンクとか。
福岡 でも、それは僕とか岡野君の世代が言うことだと思うよ(笑)。パンクにしても何にしても実際の体験がない世代に来てるわけだからね。彼らなりのイメージでやってると僕らから見てて、”あれ?ズレちゃってるな”というのは当然あると思うし。だからといってどうのこうの言うつもりはないし。やっぱりソツない音楽をつくる人はドンドン増えてくるだろうし。そういったアクがドッと出てくるのは音楽じゃないのかもしれないけど。
やっぱりバンドって基本的にカッコ良いんだよね。
布袋 やっぱり、カッコ良くないとヤじゃん。たとえば自分のなかでいろんな試行錯誤をして、やりたいことができても、それがカッコ悪かったらやりたくない。
岡野 そうそう。たとえばここに現金をバーンと積まれて、やれっていわれることがあっても、それが自分の主張とか主義に完全に反するものであったら、僕は何億積まれてもきっとダメだ。一瞬考えるだろうけど、やっぱりダメだろうね。
氷室 オレはけっこう一瞬迷ったふりするけど、お金をもらうのは目に見えてるな(笑)。
布袋 オレもそうだな。
岡野 お金もらっちゃう。
福岡 まあ、実際にそういうことになってからの話でしょう(笑)。どうなるかわかんないよそんなの。
氷室 音楽を自分の本質としてすごいピュアなものとして扱えてるか、ファッションとして自分がそのつどそのつど気持ちが良ければいいってものだけに扱えてるかっていう部分で違ってくると思うんだよね。
岡野 僕はそれ両方なのね。すごくピュアで一時一時の快楽でもあると思うね。
氷室 それは僕らも同じだ。
岡野 一時一時の快楽っていうのは僕がロックをやってる一つのテーマでもあるしね。
布袋 でも、バンドとなると別だよね。自分の音楽とバンドは。
岡野 そうだね。バンドのおもしろさは自分の自由がきかないってところにもあるしね。
布袋 で、予期もせぬパワーを引き出してくれる。
岡野 そうそう。たとえばレコーディングでも”これ・・・”と思ったのが、2~3日たってよくよく聴いてみると良かったなっていうのもあるしね。だからバンドって楽しいんだよね。
布袋 やっぱりバンドって基本的にカッコ良いんだよね。それって、もう子供でもわかってるんじゃないかな。
岡野 ミーハー心をくすぐるもんね。
---現在、両バンド共レコーディング中ですよね。(注:「光の子」「JUST A HERO」)
福岡 リハーサルやってたもんね。
矢壁 おんなじ頃に、同じスタジオでね。
布袋 けっこうマジでやってんだもん。”イエーイ”とか軽く入ってくと。軽く”あ、久しぶり”みたいにあしらわれて。
福岡 マジでやってるてもさ、人間たまにマジでやる時だってあるよ(笑)。運が悪かったんですよ。
布袋 で、隣のスタジオ戻ってさ。”ピンクはマジでやってるぜ、オレたちもマジでやろうよ”って言って(笑)。
岡野 そういう雰囲気醸し出すの得意ですから、ウチは(笑)。”怖い!”と言われる。
布袋 オレたちの今回のレコードは、三枚目で本質的な部分を出せた以上ハダカじゃない部分、オシャレしてる部分も考えて・・・・・
岡野 今回はそういうのなんだ。
布袋 だから、よりピュアな部分というのもある。ピンクさんの方はどうなんですか。
福岡 前はデビュー・アルバムだったからやっぱり力入ってたよね。なかなかデビューできなかったからグーッとたまってたものもあったし。
岡野 一枚目は内容はすごい濃かったと思うんだようね(笑)。
福岡 だから、二枚目はもうすこし聴きやすいと思うし、よりシンプルになってると思うね。
布袋 じゃあ、オレ達と逆だね。
福岡 カラフルにもなってる。あとちょっと東洋的な雰囲気も。
---一枚目の時に言ってた”骨太ロック”の部分は相変わらず・・・・・。
福岡 それは相変わらずありますね。
岡野 本質的に不器用だからね。最初にはいろいろ言ってても、やるとコレになっちゃったりね(笑)。相変わらず前傾姿勢だし。
矢壁 そうだね。だた、前のLPのときはライヴでずっとやってた曲だったけど、今回は曲に対するスタンスはちょうど良くなってる気はする。
福岡 今回ライヴでやってた曲は一曲だけで後は全部書き下ろしですから。
布袋 オレらも今回全部書下ろしで30曲ぐらいできたなかから10曲選んで、内容が濃いものになってる。
氷室 出ると、ジャーナリストの人たちにとってはよりワケのわかんないバンドに感じるんじゃないかっていう。それでいいと思うんだよね。
岡野 うん、全然かまわないじゃない。
矢壁 それは当然でしょ。
氷室 オレらにとっては思うツボだしね。
みんな狙ってるフィールドは違っても土俵は同じだよね。
氷室 音楽状況ってすごく良くなってますよね。本当の意味でのロック・バンドが見直される時代になりつつあるでしょ。
岡野 だといいけどね。
氷室 僕はそう思いますよ。
岡野 僕も疑い深いからね(笑)。
布袋 でも、見分けはつくと思うな本当かウソか。
岡野 そうね。もうインスタントな快楽の時代は過ぎてて、次は自分にとって何が本当に気持ちいいとか大切とかを掘り下げる時代に入ってると思うから。もうつまんないものはダメだと思う。
---そのへんで両バンドに共通してるものはあるんでしょうね。
布袋 スタイルが違うから表だってはないだろうけど。
福岡 でもやっぱり同じだと思うな。レコードを作って、ロック・アーティストでやってるってこと自体全部一緒だと思うよ。僕らもBOØWYも、ひょっとしたらチェッカーズも。土俵は同じだよ、それぞれに狙いを定めるフィールドは違っても。
---では、最後になりますが、両バンドの今後のスケジュールを。
福岡 12月14日、15日とラフォーレ・ミュージアム飯倉で・・・・・。
岡野 納めのコンサートで。
福岡 かつ、初めですね。2枚のレコードの曲も入ってくるし。
矢壁 あと、25日に大阪の近鉄劇場でもありますね。
福岡 で、来年の2月後半にはLPを出していよいよホール・ツアーに突入します。乞うご期待ということで。
布袋 オレたちは大都市ツアーが残ってて、レコードもつくってるから、それが同じ頃に出るはずだから、オリコン・チャートが気になるところです(笑)。そうじゃないけど・・・・・。
岡野 でも、やはり多少気になります(笑)。
(構成:堀裕一)
「MUSIC STEADY」1985年12月号掲載