中国地方~大阪エリアのコンサート情報誌「オアシス」(岡山市の会社が発行)に、PINKのロンドンライブ(1986年10月)のレポートが掲載されている。

 

”元気だった⁉” 到着第一日は既にロンドン入りしていたstaffの出迎えの言葉から始まった。
ヒースロー空港AM6:55まだ薄暗く、朝靄が立ちこめており、空気は気温の低さを抜きにしても肌に冷ややかな重みを感じさせる。

空港から市内のホテルへ向う途中、目に入るロンドンは原色を排し、染み入るような中間色で伝統美を称えており、その風情がより一層の異境感を深く感じさせた。PINKのメンバーもきっと同じ事を感じているだろうと6人の顔に目をやる・・・・・。 ”イイ顏をしているナ!” 正直な感想が口から漏れた。日本で見飽きる程見ているのに。ミュージシャンとしての意識が高まっているせいだろうか、それとも・・・・・。

時差約8時間。多少の睡眠はとったものの、狭い機内で15時間以上も過ごした後の顔とは思えない程目が輝き澄んでいる。きっと6人6様にこの滞在期間中のスケジュールを思い描いているのだろう。ただでさえ個人行動が多く、自我が強い6人の活性分子から成るPINKなのに、加えて今回はロンドンBUSBY’SにおけるLive及びリハーサル、ロンドンLIMEレコードからリリース予定の12inchに関する最終打ち合わせ、そして来年一月のアルバムリリースに次ぐスティーブ・ナイによる12inchのMix Downとハードなスケジュールを消化しなければいけないのにこれからが思いやられるなあ。そんな不安と共にロンドンの街が動き出した

滞在期間のうち3日間昼間はほとんど撮影とRH、移動時間に費やされた。撮影中、朝靄で霞むハイドパークの池を背に逆光を浴びて立つ6人のシルエットを見た時はPINKの未来が開かれていく様を見たようで最も感動的だった。RHは John Henry Studioで行われた。
コーディネーターのPuddley Allen、パブリシティプロモーターのJohn Peason、プロダクションステージマネージャーのJohnny Allen、サウンドエンジニアPeter Gumleyが温かく迎えてくれた。皆、生で見るVocalとSoundのリズム&メロディの迫力に驚きの表情を隠しきれず ”Very Nice”etc.の言葉が口から飛び出した。PM9:00 RH終了。明日にLiveをひかえているというのにMemberは思い思いの場所にくり出していく。好奇心に関しては子供以上の彼らに思わず明日の事も忘れ笑ってしまった。

翌朝、いよいよLive当日。
メンバーは少し緊張しているかなと思いロビーに降りて行くと、これが又肩すかし、皆ここ3日間のLondonの街の空気や鼓動を体一杯深呼吸して来たらしく、コンサート、ディスコ、クラブetc.の話に余念がない。その会話をたち切るようにマネージャーのLive出発のかけ声がひびいた。
会場はCHARING CROSS ROADをOXFORD STREET手前まで登ったかなり人通りの激しい場所に位置するBUSBY’S。途中町のいたる所でPINKのLiveポスターを見かける。少し照れくさそうな表情を見せるエンチャンが印象的だった。

PM8:00
”Hello London We are PINK!!” の声と共にLiveの幕が切って落とされた。観客は約400名。音楽関係者がかなりの数をしめている。演奏曲目は、LINEレコードリリース予定のSoul Flight(英語バージョン)、Young Geniusと新曲3曲を含め10曲。ノンストップでグイグイ引っ張っていく。うねりのあるリズムと美しいメロディがこんなにもスリリングなバランスを持って打ち出されて来るBandって数少ないなあ。背後からそんな話し声が聞こえる。曲が進むにつれ踊る人達が増えてくる。イギリス人はシャイで一歩身を引いて鑑賞するからリアクションがつかみにくいという話は聞かされていたがそれ程でもないじゃない。今まで緊張していたスタッフの気持ちがほぐれ笑顔や喜びの声に変っていく。そしてあっという間に予定の10曲を終えアンコールの拍手と指笛。アンコール2曲も終え再度のアンコールを背にメンバーが楽屋に戻って来た。
お疲れ様。 ”次はヨーロッパツアーだネ!!” ジョークが飛びかう。

思えばはじめてPINK Liveを見て洋楽アーティストと対抗できるBandだなァとショックを受けてから3年弱、そのPINKがLondonerの前でLiveやってしまった後なのだから。PINKならこのジョークがジョークでなくなる日もそう遠くないような気がする。短期間ではあったが、密度の濃い時を過ごしたPINK。

10/9 14:30 ヒースロー空港から成田に向けて帰国の途についた。機内でLondonerにとってInpactがありすぎた やらスティーヴ・ナイ・ミックスの曲を聴きながら騒いでいたメンバーもLondonが遠ざかるにつれ無口になっていった。きっと短すぎたLondonを思いおこし、再度の渡英に思いをはせていたのだろう。憎めない程素直にわがままするアーティスト集団PINKのこれからが楽しみだ。

【演奏曲目】
光の子
BODY SNATCHER
LOVE IS STRANGE
SOUL FLIGHT
日蝕譚
SCANNER
青い羊の夢
砂の雫
RAMON NIGHT
YOUNG GENIUS
―――●―――●―――
ZEAN ZEAN
SOUL FLIGHT

 

コンサート情報誌「オアシス」1986年11月号掲載

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