宝島社(JICC出版局)発行の「モダーン・スポット 84-85/NEW WAVE LIFE FOR NEW AGE」よりカラーページの紹介。サブタイトルは、新しいライフ・スタイルのための厳選シティ・スポット完全カタログ。
モデルは中川比佐子。太眉の時代。
キーワードは、チープシック、エスニック、アンティーク、カフェ・バーなどなど。写真や文章表現から、あの時代の空気が感じられる。

モダーン・ピープルなら自分のセンスに自身を持ちたい・・・・
FANCY、直訳して好み、趣味、道楽又は嗜好物。ようするに、自分の好きな物。ファンシー・グッズとはつまり、お気に入りの品の数々というわけだ。
シックなモダーン・ピープルは、ハイファイ等のよりグレードアップしたビデオの普及もあってか、自宅でごく親しい友人達を集めて夜を過ごすことが多くなってきたようだ。そういった夜を演出してくれるのが、ビデオの他に、その人ならではの趣味がハッキリとあらわされる、これらファンシー・グッズだ。
高ければいい、というわけではないが、もちろん安ければいいというものでもない。やはりセンスがそこには要求される。雑誌等の受けうりはあまりほめられたものではないが、その中から自分独自のお気に入りのグッズを見つけ出すセンスはもちろん必要。まずは趣味、嗜好をハッキリさせることがセンス・エリートの第一歩だ。

和食をヌーベル・キュイジーヌ風に食す。これ当世風なり。
ひと頃は、ベジタリアン(菜食主義者)がナウな食生活のスタイルとしてもてはやされていた。カロリーを抑え、よりナチュラルに食すというその流れが、近頃は和食がクローズ・アップされている。
代官山の『だいこんや』や青山の『台所』、渋谷の『まる八』といったモダンな和食レストランをはじめとして、西麻布の『しりん』や原宿の『ピテカントロプス』といった最先端ナイト・クラブでも和食がフルコース(!?)で食べられるよう用意されている。
和食の他には中華、そして特に最近エスニックフードが注目されている。中目黒のタイ料理『チャンタナ』、ベトナム料理なら大久保の『喜楽南』や代々木の『アンコールワット』など。辛い味の刺激と値段の安さはとても魅力的だ。決してきれいとは言えないこうした民族料理の店に、わざわざ出かけていくのもモダン・ピープルの楽しみのひとつとなっているようだ。

チープ・シッカーの基本は趣味良くアンティークを選ぶこと・・・。
洒落たモダーン・ピープルならずとも、誰もが一度は着るなり持つなりしたことのあるアンティーク。近ごろのアンティーク・ブームは、正に絶好調といったかんじで、原宿の目抜き通りを歩いている人間で、アンティークじゃない、おニューの洋服だけで身を包んだ人間を探すのはひと苦労だ。
ここまでアンティークが人気を呼んだ秘密は、何といってもデザイナーズ・ブランドより安い。そして、一点物の魅力。ようするに同じ服を着た人とかちあうことがない。さらに何度も着こんだ後の物だから、着こなした雰囲気が出る、といったところだろうか。早い話が、安くてしかもセンス良くまとめられる物が多い、ということだ。しかし、これだけアンティークが普及してしまうと、例え安さが魅力のアンティークでも、驚くほど高いプライスがつけられたりすることがあるのも事実だ。だが、そんな物に金を払う必要はない。掘り出し物を探す、これもチープ・シッカーの楽しみなのだ。

独自のカラーがあるお店が、やっぱり面白い
東京の夜が、例の新宿歌舞伎町でのディスコ殺人事件やホーム・ビデオの普及によって、以前より活気を失ってしまったのは紛れもない事実だ。83年から84年の間で急増したカフェ・バーも頭打ちになりそうな感もある。だが、趣味の良い、その店独自のカラーを打ち出した店が何軒か存在することも確かだ。原宿の『ピテカントロプス』は、そういった店の中でも群を抜いて光っている。東京の夜はまだまだ面白い。
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