一人一人が強烈な個性を放つアーティスト集団、PINK。しかし、うまくその個性をつなぎ合わせ、ある種混ぜ合わせ、PINKはPINKの世界を作る。それはニューアルバム「CYBER」でも、同じこと。特に今回はメンバーのほとんどが曲を作り、それぞれの色合いを出しているというのに、やはりPINKらしい。収録時間66分30秒、CDは1枚、アルバムは1枚半(3面)、全14曲という快作だ。
「作品を出したいっていうメンバーの欲求が相当出てきて、ほとんどみんなが書いたんだけど、各々の個性が単純に出たって感じでいいなと思ったけどね。お互いに趣味趣向が違う人間を無理やりひっつけちゃったみたいなとこがあるバンドなんだけど、そういうところの熱みたいなものが、やっぱり出てると思いますよ」
というのは、ボーカルの福岡ユタカ。
作者によって曲の仕上げの方法論が違い、たとえばベースの岡野ハジメなどは、ほとんど自宅のスタジオで打ち込みでの音作り。また中にはベースの入ってない曲があったり、福岡自身、ほとんどタッチしていない曲もある。これまでのアルバムは、ほとんど福岡の楽曲だったので、今回全14曲にもかかわらず、彼自身は比較的ラクだったという。また、久しぶりに他人の作った曲をボーカリストとして歌って、思うところもあったようだ。今回のアルバム全14曲は、”東京”というテーマの元に作られている。
「僕らが住んでて活動の拠点にしてるとこが東京ってこともあるんですけど、東京は工場のような感じがするとこあるでしょ。同じ規格で日々が流れていくっていうか。で、PINKっていうのも、メンバーそれぞれPINKでは出せない自分のやりたいことって相当あるだろうけど、それを抑えてその中でやっていくっていうのは、やっぱり工場みたいなもんでしょ。ひとつの団体が、まだ崩れるわけにはいかんみたいな感じでやってるとこってあると思う。それは、いいにつけ悪いにつけ、東京の中の工場的な情況だと思うのね。」テーマを言葉で説明してもらうと、こういうことになるけれど、だからといって彼らが決して妥協の産物を作っているわけではない。全14曲はひとつひとつが生き生きと輝き、それぞれの色合いを誇るように、耳に訴えかけてくる。気持ちいい。
アルバムタイトル「CYBER」は、”コンピューター、機械のテクノロジーを、人間の肉体の中に融合させたい”という願いからつけられたもの。と、これもまた固くなってしまうけれど、要は、テクノロジーを駆使していても、PINKの音楽はとてもフィジカルで、マインドを大切にした、人間的な音楽だということだと思う。
百聞は一聴にしかず。まず、アルバムを。そして、ライブを。彼らの躍動感に誘われて、体もハートも踊り出すはずだ。
(角野恵津子)
Disk Review
「CYBER」と題されたPINKの4作目は、全部で66分半という大作で、アルバムにすると1枚半(CDなら1枚)となる。ジョー・ジャクソンが同じことやってたけど、作ってみたらこの分量でした、という素直な気持ちの結果なのだろうから、変則なんて言わないことにしよう。
今回は、明らかに話題豊富だ。というのも、ほぼ全員のメンバーが曲提供しているからだ。もともと、ひとつのバンドというより、プロデューサー集団という感じのPINKである。そこらのバンドが友情のために各メンバーの作品を採用したーーなんていうのとは状況が違うのだ。
ちわきまゆみの後見人として知られる岡野ハジメの場合、明らかに滲み出てくる体臭にギンギラのスパンコールが混ざる。重心が低くて怪しい。ホッピー神山は、これまでのPINKの理屈っぽさに反旗をひるがえすかのように、ストレートなサビをもつロックポップを用意した。あの、独特の角ばった肌触りのあるメロディも聞こえてくる。PINKの顏ともいえる福岡ユタカ描くところの風景だ。アイデアがアイデアを産み・・・・・そうしているうちに、4枚目は66分を超えてしまったようだ。
アイデアがアイデアを産む。世界中探してもどこにもなさそうなアンサンブルが、この「CYBER」に息づいている。例えば、「二人の楽園」の新鮮な音といったらない。僕にはなんか、ブラジルのビリンバウという楽器の奏でるビートが下敷きになっているように聞こえたが、聴く人によって様々に変化しそうなワンダーランドミュージックの手応えだ。「FIRE」のような、よりストレートなロックポップも頼もしい。「CHRISTMAS ILLUSION」にみられる大胆なエスノ的展開がハマるのもPINKならではだ。ハガネのような肉体でタフに踊りつづけようーーみたいな曲はライブの場に任して、アルバムではアルバムの為の変化に富んだ世界を追求するーーそんな姿勢が現れている。
しかしまあ、聴いてて飽きないのが一番の魅力だ。ボーカルとバックの楽器との間に境界線がなく、メンバーそれぞれ、誰にも遠慮しないで自分のキメ技を同時に炸裂させたりするスリルは格別だ。普通のロックバンドのレコードに比べて、想像力と創造力が飛び抜けている。未だ聴いたことのない音を想像する力。そしてそれを実際にシンセなどによって創造する力。ふたつの要素が健康的にバランスをとっているからこそ、PINKのアンサンブルは新鮮なのだろう。右耳を赤のセロハンで覆い、左を青のセロハンで覆いながら聴いてるみたいな奥深い世界なのだ。
取り敢えず「出せるものは、みんな充分に出しました」というのが「CYBER」なのだった。なお、ギターは新メンバーの逆井オサムにかわっている。
(小貫信昭)
「月刊CDay 創刊号/1987年11月」掲載記事



