ヤツらの話から、何かを盗み出せ・・・・・
THE SOUND CHECK / KING OF RHYTHM-2

ドラム特集の中で、MARU(LAUGHIN’ NOSE)、KEITH(A.R.B)、泉水敏郎(戸川純&ヤプーズ)と共に矢壁アツノブが取り上げられている。


最近は”ちわきまゆみ”のバック演奏も務め強靭なダンサブルビートが冴え渡る矢壁アツノブ。彼の、ドラムに纏わる各種電気楽器の使いこなしの上手さや、タムタムのサイズ、ヘッドの組み合わせ、更にはハットを多彩に使ったアクセントの絡み合いに、矢壁ならではのオリジナリティ溢れるビートが光る。来年も楽しみだ。

―――ロンドンはどうだった(笑)?

矢壁:ボクはマイペースでやった。でも自信を深めたって感じ(笑)・・・。ロンドンって凄く進歩が遅れてるっていうか、例えばニューヨークに比べたら昔からの時代の流れが全く変化してないっていうか。だから逆にPINKの音楽性についてこられなかったんじゃないかと思ってる。
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―――セッティング見て気が付いたけど、ジョン・ボーナムの影響を受けてるんじゃない(笑)?

矢壁:やはりボーナムは好きだったよ。でも極普通に、より自然な形で叩こうと思ったらこう淘汰されてくるんじゃない。だからボクのセットだって凄く自然だと思うし。でも椅子が結構低いんで、スネア・スタンドとか自分で切ってるよ。以前6インチ半のスネア使ってた頃も、深胴のスタンドを一番低くしてもまだ高かった位だから・・・。

―――ヘッドを色々貼ってる様だね。

矢壁:結構試してるよ。基本的にはアンバサダーが一番いいよ。基本的にはアンバサダーが一番いいよ、抜けもいいしね。でも、レコーディング、ライヴ、ツアー等ではある程度コンスタントに耐久力が必要だよね。そういった部分ではアンバサは駄目なんで、ピンスト使って裏にアンバサ貼ってる。割と使ってる人いないんじゃないかな。それに、新しいヘッドがきたら必ず試す様にしてる。特にレコーディングでは全てに於いてバランス良く鳴らそうと思った時、アンバサとクリアーがベストだよ。今はデジタルになってきてるから、ちょっと古いとも思うんだけど、だからこそかなり冒険して行きたいね。
ロンドンでやってて思った事だけど、音の伸びっていうのをある程度くどい位付けてやった方がいいね。

―――確か、ドラム始めた頃からドンカマ使ってるよね。

矢壁:そう、始めて日が浅い内から使ってる。その頃流行ってた音楽は、リズム的に段々タイトでヘヴィなものが美しい風潮になってきててさ・・・。TOTO、YMOとか、明らかにクリック使ってる事分かったんで、凄く楽に入れた。だから、ボクにとってドンカマ打ち込んだりするのは、ヘッドの角度やチューニングするのと割と同じ位置って言うかさ。でも最近、その辺が人と違うのかなって分かってきたけど(笑)・・・。

―――スプラッシュを入れてるのは?

矢壁:うるさくないし、好きなんだよね、音色とか結構ハットみたいに立ち上がりは早いし、、音も短いしね。

―――以前からノーミュートなのは?

矢壁:音の響きが無い分、ミュートするのは勿体無いよ。チューニングにしても、例えばCの音が音程で出たりするのって凄く聴き苦しいはずだよ、アンサンブルに於いてはね。とりあえず、ノーミュートでチューニングして行って、どうやったら上手く音が出せるかって事の方が重要じゃないかな。

―――アマチュア・ドラマーにアドバイスをしてくれる?

矢壁:コピーするのもいいんだけど、そのドラマーの譜面だけ見るんじゃなくて、その人が何でこういう事をやったのかっていうスタンスを学ぶと凄く上達するよ。それに、自分のドラムに凄く自信を持つ事だよ、そうするとプレイも変わってくるし。外人コンプレックスじゃないけど(笑)、「何かが一番」って思っちゃうのは、はっきり言って意味無い。東京って捨てた場所じゃないし、かっこいい所だから、町の雰囲気、テンポに気を使ってると必ず自分のドラムが分かってくるよ。つまり早く「東京のビート」みたいなのを見付けたら「凄い奴が現れた」って絶対思われるんだからね。それに、個性にもつながってくるしさ。

―――矢壁クンがアマチュアの頃は、どんな練習をした、時間的にも?

矢壁:凄い練習をしたよ。バンド2~3かけもって、毎日2~3時間練習したり、夜中神社へ行って練習台叩いて警察に怒られたり(笑)・・・。結局出来ないと悔しいみたいなさ。色々なレコード聴いて、そのドラマーがやらない様なスタンスで叩いてみたり。とにかく自分でいいと思ったら、それを誰よりも極端に演じきるって事だよね。

―――矢壁クンなりに今後のドラムシーンはどう移り変わって行くかって事について。

矢壁:凄く色々な分野で、それなりに極端に演じきれてポップに出来る時代だから、生ドラムでい行く人もいれば、そうじゃない人もいる。つまり、これをやらしたら誰にも負けないっていう人が益々増えてくるんじゃないかな。スペシャリストっていうか、その人のオリジナリティだね。

―――最後に、21世紀へ向けて・・・。

矢壁:もう少し上手くなりたいし、他の人とも一緒に演ってみたいね。

取材/構成/文 植田勉

 

「SOUND NEWS」掲載(1986年12月発行)

 

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