おまつり”ルツボ”は刺激がエスカレートしていくのダッ!!

 

この時期の雑誌。マメに探せばやたら出くわすのが、何月何日なんとかカーニバルだのフェスティバルだの、ロック・デーだのetc.。ホント、石を投げれば”祭り”に当たるってくらい、これからの季節、それも土日は”お祭りラッシュ”している。そんなシーズンの先頭を切って行なわれたのが、6月8日(日)のANN CALL ’86だった。天候はまだ旬の前とあって、いまいちよろしくない。15:30スタートのノッケから、ドシャー!!とスコールが非協力的態度で客席を見舞う。そして次はギラギラの太陽攻撃、そして暗くなってからは急に底冷えの温度差攻撃ときた。けれどお祭りは、そんなことにかまっちゃイケナイ。みんなで濡れれば怖くない。ちなみに、こういった場合、正義が勝つみたく、お祭りが空模様に勝つという筋書きがちゃんとあって、結局この日も5時間近くを各人、下着のTシャツ汗びたしに気持ち良く踊ったのではあります。

会場は御存知、日比谷野外音楽堂。こなたかなたにオッと人目をひく奇抜ファッション。それがてんでバラバラ。このあたりサスガはジャンルを越えたアン・ルイスお姉様の息がかかっておるな、と感心させられるところ。みんなが楽しさを盛りたてようと、いつもよりお洒落して繰り出して来た気分が目に見えてウレシイのです。中にはお子様連れもいて、普段のコンサートとは違った人なつっこい雰囲気も。そして舞台セッティングの間の休憩タイムは、お定まりのビールに焼ソバ(タコ焼?)。とはいえ18歳未満が多いのか、小銭握ってジュース・コースが目立ったけれど。

ANN CALLは今年が2回目。アンがキャスティングも連絡もやる文字通り、アン・プロデュースのお祭りである。「やっぱ、アイドルをかませるところにロック・バンドの奴ってこだわるんだね、いまだにそーゆー奴いるヨ。去年、たいへんだったもん。ココ(ハート)とココ(オツム)が狭いのネ。そういう人には二度と頼まないけどサ」と以前、彼女が語ったように、ステージ上では狭いジャンルの垣根などとっくに取り払われていた。今じゃヘタなロックよりアイドルの方がよっぽど過激なことくらい、うちの猫だって知っている。ロックにアイドルにアナウンサー?なんでもござれ、と大きく構えてはいたものの、最後、ウルトラマンの円谷プロ・ファミリーがステージで決戦を始めたのには、さすがにのけぞりました。ハイ。

ここで、そのユニークなカップリングを紹介すると、アースシェイカー&荻野目洋子、PINK&近田春夫、森山達也&湯江健幸&シブがき隊&サンプラザ中野&古館伊知郎(このセクションのみ古館&アン司会による夜のヒットスタジオもどき)、BOØWY&吉川晃司、ウルトラマンの一家、チャー&うじきつよし&北島健二&織田哲郎&島田吉隆&高橋よしろう&佐藤準&忌野清志郎&アン(これぞメーンエベントのウルトラ・ギター・バトル)。

そしてラストは出演者一同に会しての「I WANNA ROCK」でトドメを刺したわけ。
キャスティングはこの通りの気前良さだ。その上、アイディア目白押しの面白いステージングがこれでもか、これでもかと畳み掛けてくる。過激な衣裳。ひとひねりもふたひねりも凝った選曲。それらがすべて興奮への触媒役となって、聴き手の気持ちを外へ外へと引っぱり出してゆく。ノッちゃうが勝ちサ。踊らなにゃ損々。夜が深まるにつれ刺激はエスカレートしてゆく。まさに、お祭りルツボ!
「若い子達はしらなくてツマンナイかも知れないけれど、たまには古いのやりたいのよ。やってる側もたまに自己満足入れないと」なわけでギター・バトル・ナンバーも休憩のBGMも、ドップリ往年のハード・ロック大会だ。なぜか、それだけでも胸にジーンとくる。
スタッフに聞けば、「直前までゴー・サインが出なかったり」の難しー企画なんだそうだ。出演当人が意欲的でも事務所がOKを出さない、複雑な絡みの世界もあるらしい。でも、そんな苦労をチラとも見せないアンは、いつも以上に生き生きしていた。その輝きは当然、こちらにも伝染してくる。ましてや日本人は元来の祭り好きだ。素質は十分ある。オンガクは本気で楽しまなくちゃ、なわけよ。

(撮影/吉浜弘之 文/三浦雅子)

BOØWY&吉川晃司

古館伊知郎&湯江健幸&アン・ルイス

荻野目洋子&アースシェイカー

サンプラザ中野&布川敏和(シブがき隊)

近田春夫&PINK

森山達也&アン・ルイス

北島健二&アン・ルイス

佐藤準

?&北島健二

織田哲郎

吉川晃司&アン・ルイス

忌野清志郎&高橋よしろう

チャー&忌野清志郎&アン・ルイス&高橋よしろう

 

「YAN-KEY」1986年8月号掲載

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