昨年念願のファースト・アルバムを出し、12インチ・シングル「YOUNG GENIUS」も好評だった、あのPINKが、早くもセカンド・アルバムを完成させた。タイトルは「光の子」なんで、カンタンだけど何か意味がありそう。
「このアルバムのコンセプトが<光の子>だったんだよ。」
ボーカルのエンちゃんこと福岡ユタカが説明してくれる。
「アルバムの1曲目に同じタイトルの曲があるでしょ。この曲のイメージ」
PINKといえば当代一流の腕前のミュージシャンが集まったスーパー・バンド、といってもよくありがちな、コンセプトの何もない、ただ集まっただけといった感じのグループとは違って強力なバンド意識と明確なコンセプトを持っている。だからこの前のアルバムだって、<SILVER SIDE>と<GOLD SIDE>に両面が分けられ、それぞれのサイドがまとまりのある、そしてトータルなイメージも明確なアルバムだった。
なんて書いていくと、ムズカシーイ音みたいだけど、実際には耳で聞くというより全身で感じたいダンサブル・サウンド。その点は、今回も同じだ。「サウンドは、カラフルに、ポジティブに、明るいものを、目指したんだ。だから<光の子>っていうコンセプトも生きてくる」
エスニックやアバンギャルド・ファンクやサイケやグラム・ロック。いろんな要素を取り入れながらエイヤッとひとつにまとめてPINK!っていうサウンドにしてしまう。そこが彼らのスゴイところ。でもそれだけに、レコーディングはたいへん。
「みんなそうだと思うけど、時間とお金との競争だよね。こういう音を作りたいっていう希望をスケジュールどおりやっていくのなんて、まず無理な話だからさ。いろんな条件と折りあいをつけていくのがタイヘンで」
6人のメンバー全員が、まるで頭の中がレコード屋さんになってるみたいに、いろんなレコードのことやサウンドのことをよーく知っていて、あれやこれやいいながらレコーディングしているんだから、そりゃひとすじナワではいきません。
「スタジオにはいって、みんなやり始めちゃうと止まらなくなっちゃうんだよね。だいだいこれでベスト、なんてすぐにできっこないからさ。熱中してくると、そろそろ時間だな、ヤバイなと思っても、誰もいい出さないわけ。ホントは自分たちでプロデュースしてるんだから、そういうお金のことなんかもちゃんとやんなきゃ、いけないんだけどね」
きっとレコード会社やプロダクションの人たちは、ハラハラしながら、つきあってんだろうなあ。
「そんなことないよ。いちばん入りこむのがレコード会社のディレクターだもん」
今回はアコースティック楽器をたくさん使って、さらに個性的なサウンド作りを目指した様子。
「でもさ、基本になるものがよくないとだめだからね。いい曲とメロディがないと」
この前のアルバムでは、宇辺セージ氏という謎の作詞家の手による詞を中心に、ちょっとヘビーなイメージを展開したが、今回はPINKのメンバーによる書き下ろしのオリジナル曲が中心。エンちゃんの詞、曲を中心に、ドラムスのカメちゃんこと矢壁カメオ、ギターの渋谷ヒデヒロも曲作りに参加している。また吉田美奈子なども詞を提供して、バラエティに富んだ曲がそろった。
「全部、曲が先で詞は後でつけてもらったんだけど、こういうイメージでっていうより、どんなシーンが見えるとか、小道具とか、そんな具体的なものを並べて詞のイメージを伝えてったりする。だからそういうことをわかってくれるんじゃないとむずかしいよね」
その点、このアルバムは大成功。エンちゃんの意味不明ボイスも含めて、ありふれたところのない、それでいてポップでダンサブルな曲でアルバムは固められている。
その中から次のシングルになるのは「DON’T STOP PASSENGERS」。すでにプロモーション・ビデオもできあがり、あとはみんなが聴いてくれるのを待っているだけ。スピード感に溢れたシャッキリしたサウンドのこの曲は、ディスコでバンバンかかってもお似合いのダンス・ナンバー。ビデオのほうも、編集する機械で、できることは全部やった、というほど凝った編集で、見てると目まいがしてくるほど刺激的。
このアルバム、シングルをリリースした後、PINKはいよいよ全国ツアーをスタート。オシャレでダンサブルな彼らのステージは、アルバムとはまた違った楽しさに溢れているから、このツアーをお見逃しなく!グイグイ押してくるようなビートに身を任せて、カラダでPINKを聴いてほしい。こんなバンド、他の国を見回したって見当たらない。とにかくユニークでパワーのあるバンドなんだから。
撮影・植田敦/文・今井智子/メーク・山内ヒロミ(SEINTS)
「GB」1986年4月号掲載