「新しいものばかり追い続ける時代はもう終わったね」(岡野)
音楽の中身が問われる時代がきたんじゃないかって、PINKのメンバーは言う。小学生がパソコンをあやつる時代だから、きっと音楽ファンも耳が肥えていて、うわべだけの音楽テクニックなんかには、あきがきているんじゃないかって。「自分たちの信念を持っているバンドがそろそろ頭角をあらわしてくる時期でしょうね」(ホッピー)
「その意味で、ポップで、リズムとメロディーとビートが売り物のPINKはおススメです(笑)」(岡野)
2月25日に発表された彼らの2枚目のアルバム「光の子」を聴いてると、バンド・サウンドの楽しさ、おもしろさが伝わってくる。
「僕たちって、各メンバーがソロ・アルバムを出せるほどの力量を持ったアーチストの集合体なんだけど、個人としてやる音楽よりも、バンドとしてひとつの作品を作り上げることの楽しさが最近、ようやくわかってきたような気がするんだ」(岡野)
バンドでやる楽しさって、自分の中の何をバンドのために引き出すか、そして、自分にはない他のメンバーの魅力をいかに理解してあげられるかだ。
「みんなそれぞれが、いくつかの引き出しを持っていて、バンドのために、どの引き出しの中身を見せるか。今、僕がPINKのメンバーとして、おもしろく感じていることってそれなんだ。で、他のメンバーと意見の違いで衝突することもよくあって、こっちの音の方がかっこいいよって言い争う。そんなぶつかり合いがあって、初めて自分にはない相手の魅力や才能を理解することができるんだ」(岡野)
「自分をアピールすることと、自分にないものを得ること。バンドって毎日がとても刺激的なんだ」(ホッピー)
バンドの音楽性を語る以前に、アーチストとアーチストとのぶつかり合いがあって、その火花こそがバンドのより良い音への発火点になっていくわけなのだろう。そういうことを知ったうえで、もう一度、PINKのアルバム「光の子」を聴いてみると、自分の音楽世界がひとつ広がっていくような気がする。
「ダンサブルだけど、踊るための音楽じゃないよ。じっと瞳を閉じて聴いてくれてもいいんだ。ただ、その人がいちばん楽しい状態で聴いてくれさえすれば、僕たちはうれしいいんだ」(ホッピー)
「3月29日の中のサンプラザでのコンサートを皮切りに、全国をまわるけど、僕たちのステージに接すると今言ったことが理解できるはず」(岡野)
アルバム「光の子」を聴いて、ポップでダンサブルなサウンドの裏側に、メンバーひとりひとりがアーチストとして何を訴えていくか、そのハードな部分を感じてほしい。
「ザ・ベストヒット」1986年4月号掲載