---ドラマーの話って誰々のスネアがのタメがカッコイイとか、すごく細かいところに行きがちだけれど・・・。

そうそう、それもいいんだけれど、タメが凄いって、真似しちゃうとつまんない。そうじゃなくて、この人はなんでこういうタメをするのかなって考えて、そうか、こういう音楽だからっていうところから、自分との距離を計るみたいなね。フレーズやノリばっかり見るんじゃなくて、まず、自分と音楽との距離を見ると自ずから変わってくるじゃない。そのタメがかっこいいって認めても、消化の仕方が変ってくる。

---それが足し算、引き算なんだ。

そうそう。それをオカズまでコピーしたら、距離もクソもなくなっちゃう。日本人て、その辺をどっぷりしすぎちゃう人が多いよね。

---自分の得意なパターンっていうのはハッキリしている方?

すごい片寄ってるんじゃない?まず跳ねものは全然駄目だから。シャッフルとか、僕はできないんですよ、なぜか。ジャズもやってたけれどすっげえ下手だった。フィルが一杯あるのも苦手だし。得意っていえば、勢いを要求される音楽の中のドラムが得意なのかな。すごく具体的に言うと、♪=140以上のエイト・ビートで、あんまりオカズの入らないやつとか。ワンパターンのファンクみたいのは、黒人の体力には敵わないと思うし、やっぱり他に逆立ちしても敵わない人がいるものからは遠ざかるよね。

---僕の印象では、タイム感がすごくジャストで、かつ同期ものの中でダイナミクスを出していくのが巧いドラミングって感じがするけれど。

うーん。ジャストかどうかは自分ではよく分からないけれども、タイム感に関しては、今までのドラムの人と一線を画しているとは思う。あんまり、人を追っかけなかったからね。日本人のドラマーって、新しいタイム感を打ち出すみたいなことには、凄く遅れているって思うんだ。あんまり、そういうことを考えていないみたい。黒っぽいのやりたいから、髪アフロにして、派手な格好して、みたいな人が多いじゃない。自信がない人が多いのかな。

---PINKのメンバーの誰かが、カメのドラムは女性的だって言っていたことがあるけれども、それはどういうところだと思う?

僕もそう思うけれど、巧く言えないな。みんなを引っ張っていくっていうよりも、よく聞いてるって感じのドラムなのかな。でも、女性っぽいとしたら、わがままな女だね。みんなを包みこむような、そういう包容力あるドラムは叩けないし、岡野くんのベースが男性的だからちょうど合っているんじゃないかとは思うんだけれど。

---あと、ドラムのチューニングも凄く個性的だと思うんだけれど?

うん、レコーディングでペッカーと一緒になった時に、カメのドラムはちょっと昔だったら、即、音変えて下さいって言われてたチューニングだなって言われたことある。たぶん、誰もが慣れ親しんだドラムの音とは違っているんじゃないかな。リズム・ボックス使った曲で、僕のドラムはドンカマによく馴染む音だから楽だって言われたこともあるし。でも、別に人と違う音を作ったっていうわけじゃなくて、好きな音の好みみたいのは昔から全然変わってないと思う。

---エンジニアの手を通しても、その個性的な音はあまり変わらない?

たまに、よくわからなくなっているのもあるけれど、デジタル録音になってからは、凄くよく出ていると思うな。PINKの『サイコデリシャス』のCDは、一番生音で聞いた感じの音が出てると思った。デジタル録音の前は、自分が耳で聞いてる以外の要素の方が大事だと思っていたのね。

---エンジニアリングでどう音を作るかっていうことね。

そう、これだったら作った方がいいんじゃないかって思ったのかもしれない。アナログってレコードになった時に、すごく音が変っちゃうから。ギターやキーボードはそれほど変わらないけれど、ドラムは凄い変わるんだ。

---今、ドラマーはエンジニアリングのことも分からないと、自分の音が出せない。

そう。だから、知識増えたよ。自分ではある一定のレベルでチューニングしているのに、部屋によって全然音が違うし、エンジニアによっても違う。自分は同じ条件でやっているって分かっているから、向こうの違いがよく分かるんだよね。だいたい、ドラムだけでしょう。EQとか、マイクとか、定位とか、リヴァーブとか、ミキサーの人があんなに発言権あるのって。ギターやキーボードだったら、副調室で弾きながら、ああいう音にしてとか言えるけれど、ドラムはそれができないからね。

---それが、デジタル録音になってからは、生音に近づいてきた?

うーん、うまく言えないなあ。そういう要素が増えた。音色そのものよりも、雰囲気かな。

---そうか、生音っていってもオン・マイクで拾っている音じゃなくて、叩いている時に自分が聞いている音が基準なんだ。

そうそう。聞く位置によって音って変わるからね。それで、エンジニアを呼んで、ここでこういう感じに聞こえてる音を録ってっていうと、今は結構、それが録れるのね。マイクの選び方とか、立てる位置とかを工夫していくと。デジタルになる前は、できたのかもしれないけれど、そういうのはすごく大変だって思って、先に音を作っちゃっていたんだけれど。

---さっき言ってたタイム感の話なんだけれど、新しいタイム感ていうのは、どういうものなのかな?もう少し聞かせてくれる。

うーん。 時代を作ってくビート感みないのってあると思うんですよ。例えばプリンスにしても、マイケル・ジャクソンにしても、それまでのものとタイムが明らかに違うでしょう。ヒップホップにしても、新しいタイムだし。日本人ってそういうのが出てから、追っかけることしかしないと思うんだ。そういう発想があまりないんじゃないかな。僕の知っている中じゃ、山木秀夫さんぐらいかな。あの人はかなり新しいかなって思ったけれど。こういうとおこがましいかもしれないえれど、結構近いものを感じた。あと、巧いってことでいえば、ポンタさんとか、カシオペアの神保くんとかは大リーグ級だって思うけれど。はまる人でもあそこまでいけば、向こうの人となんら遜色ないよね。

---でも、日本人独特のタイム感みたいのを打ち出すのは、まだまだ難しいと・・・。

うーん、それは日本語のもってるタイム感とか、メロディー感とか、そういうものとも関係した問題なんだと思うけれど。別に日本語が洋楽のリズムに合う合わないとかいうこととは別にね、日本人てただこのタイムは新しいとか、そういうところに価値を認めにくいんじゃないかな、すごく音に意味を求めちゃう傾向あるから。でも、これからは、そこを切り開いていかないと、つまらないよね。

INTERVIEW:KENTARO TAKAHASHI
PHOTOS:NAOTO OHKAWA

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「Player」1987年11月号掲載