岡野ハジメ

私の辞書に「バラード」の文字はない ポップなファシズムに気をつけろ!!

■プロフィール:射手座A型。超ヘヴィーテクニックバンド「スペースサーカス」、超B級ビートバンド「東京ブラボー」のベーシストを経てPINKに。ヴィッキーのタイツ姿の写真に魅かれ、はじめて「ミュージックライフ」を買う。広い音楽性には定評あり。最近では、ちわきまゆみ、ウィラード等のプロデュースに辣腕をふるう。

Position

「PINKをどう思う?どう思うって急に聞かれてもねぇ(笑)。役割は―――、政治的な事も含め、いろいろあるんですけどね。わりとローリングさせようとする役って言うか、ウダウダやってんのオレ、嫌いだから。雰囲気が地味になってきたり、話が煮詰まってきたりするのもイヤだし、表面的なところで音楽をやるのもイヤだし、僕はつっこみ役―――ってところですね。まぁ、ずーっと言ってるんですけど、考える時間を作って、この長いトンネルをパンと抜けたいですね。」

Luccia

「PINKの曲で『Luccia』ってのがあるけど、あれは完全なラヴソングですよね。僕、あの歌詞スキなんですよ。曲はバラードだからやりたくねぇんだけど(笑)。なんでスキかって言うと、あれは作者の吉田美奈子さんが、女が女に書いたラヴソングだからスキなのね。仮歌をね、美奈子さんが歌ったのがあるんだけど、すごいエッチだったのね。どんな歌詞だったっけ、なんか結構GSっぽいんだよね。それにすごく感動してねあとで美奈子さんと話したんだけど、あの人その辺ちょっと変わってるって言うかオモシロいんだよね。例えば女の人でも乳房に顔をうずめて安心する気持ちはあるって言うんだよね。それって分かるしね。すごく綺麗な感じがした。」

Ballad

「バラードって言うか、テンポのゆっくりした曲でもスキなのいっぱいあるんですけどね。バラードって言うか・・・『バラッド』って言うのは私の辞書にはないからねぇ・・・・・とても困るんだよね。楽器で歌心を出さなきゃいけなくなるからね。バラードで味を出すってのがいちばん難しいわけだ(笑)。オレもう昔っから、そういうの大ッ嫌いでさぁ(笑)。例えばドラムがスタットトトーとかさぁ(バラード調ドラミングの真似)、ベースが♬ンーン(陶酔して弾く真似)とかさぁ、やるじゃない(笑)。ギターの人が目をつむってのけぞって陶酔しちゃうとかさ(笑)。そういうの見ると、オレ石投げたくなるんだよな(笑)。そういうの生理的にダメだね。」

Hobby

「趣味は多いですよ。とにかくなんでも、物でも音でも人でもヘンなものがスキなんです。具体的にコレクションしてるのはオモチャなんですよ。ブリキはあんまりないんですけど、SFとかアニメとか怪獣とか、B級のキャラクターものはプラモデルでもオモチャでもあれば買う―――という。最近は古いオモチャってブームになっちゃってるから手に入んないんですよね。新しいのは新しいのでどんどん出るでしょ。ガンダムシリーズとかバンバン出るじゃん?そういうの全部チェックして買ってたら破産しちゃうから最近はパワー落ちてますよね。地方公演のオフの時とか、めぼしいオモチャ屋があるとチェック入れますけどね。ヒマだった頃は『今日は赤羽に行こう』なんでいきなりひとりで出かけて街を探検したりしてね。商店街とか質屋とかスキなんですよ。おもちゃに関して言えばお店ができます!
あとは60年代楽器も結構ありますね。そんなに大自慢は出来ないけど、へんなギターが20本ぐらいはある。今度、機会があったらホッピーとオレの楽器コレクションを公開するとオモシロいんじゃないかな。」

Making of・・・・・

「僕は本当はギターだけでやりたい。キーボードはあくまでもオシャレなものであって欲しいって事が僕の内には秘かにあると思うのね。ベーシックなものはギターで構築されていて、その上の仕上げの香水みたいなものがキーボードであって欲しいなーと思うんですね。だからPINKの音作りは僕のやり方とはちょっと違う。」

Eros~Fascism

「基本的なバックボーンは音楽より絵画だね。最初、僕は絵描きになろうと思ってたんですよ。最初のアーティスティックなショックって絵画なのね。うちの親父って絵描き志願でね、戦争で夢断たれ―――って感じなんだけど、いろんな美術全集が家にあってね、それを小さい頃、絵本がわりに見てたんですよ。幼稚園に入園する前の頃、シュール(レアリスム)の作家たちの絵がすごいスキで―――。ミロとかエルンストとかね。自分でも結構すごいなーって思ちゃうけどね(笑)。フツーのロックよりグラムロックが好きだった―――ってところもそういう事だと思うんですよね。メッセージとして『エロス』を投げかけてくれるものがすごくスキですね。絵画でも『エロス』って永遠のテーマでしょう。『SEX』とか『エロス』を抜きにロックは語れないよね。
グラムってそういう事を露骨に出してくれたじゃん?名前も名前だしね。男が女のメイクやファッションをするって事だけで大変なメッセージだったと思うし。あれをね、女の子がキャーキャー手を振れるレベルでやったって事が偉大だよね。ビートルズより偉大だと思うね。
お化粧バンドもね、昔からいろいろいるけど90%はただのオカマでしょ。オカマってダメなんですよ。キラー○イのようにね(爆笑)。ただのスケベなくせしてさ。本当の女装趣味のヤツが見たら怒るぜ!失礼な奴らだ。抹殺したいね(笑)。
グラムって僕にとっては、もっと本気のものだし、政治的なものだと思うんですよね。今の世の中ってコワいでしょ?風営法にしてもね、中曽根の息がかかってると思うのね。それってポップな形の若者の洗脳だと思うんですよ。お茶の間でハダカは見れるよね、でも外でSEXする術はないっていう―――。ポップな抑圧っていうか、ファシズムっていうかね。レーガンがそうでしょ?トップガンとかロッキーとか見てもポップで楽しいじゃん?でも後ろに広がる星条旗ってのはコワイよね。」

Glamour boy

「個人は個人としてね、どんな主義だろうと宗教だろうと、どんなヘンタイであってもさー、そういうの抜きに存在すればいいじゃないか!って思いが僕にとってのロックだしね。
グラムはあくまでも個人だったしね、だからあんまりバンドがいなかったの。T-REXにデヴィッド・ボウイに・・・・・、あとスウィートとかジョーディとかはロンドン・ポップって感じだし―――。デヴィッド・ボウイの初期とマーク・ボラン以外にはあんまりないでしょう?なのにひとつのジャンルとして後後まで影響力があったのはそれが美しかったからだと思うのね。自分が自分として好きなように生きようよ―――ってメッセージだと思うし、なかなかできない事だよね。日本の土壌では少ないよね、そういうの。さっきの詞の話に戻るけど、1人称2人称のラヴソングでその最たるものが演歌でしょう。あれは傷をなめあって生きていきましょう―――ってところに優しさを見てるでしょう。でも、そんなの僕にしてみりゃ冗談じゃないよね。『ほっといて下さい』---っていう―――。でもパンクみたいにみんな大ッ嫌いだーって叫んでるわけじゃないしね。みんなスキだけど、僕は今、ひとりでいたい―――みたいなさ。」

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