個性派揃いのメンバーによる最強のロック・ユニット、PINK。
その彼らが活動休止を宣言、新作『RED&BLUE』が一応のピリオドとして発売される。キーボーディスト、ホッピー神山の語るその中身とは!?

●今回のアルバムは、各メンバーがそれぞれ自分の曲をやるような形になってますが、全曲を聴いてみた感想は?

うーん、まあ、すごいバラバラだよね。でも全体的にかなりポップで。バンドの場合、バンドで何か決まりごとをつけてやらない限りは、個人でやるとそんなに変なものはやらないですよね。僕の場合はディレクターの方からポップな曲を作ってくれという要請があったからね、実験的なものや変なアプローチしたものはやらなかったし。エンチャン(福岡ユタカ)もそんなにしてないみたいだしね。一番彼の得意な雄たけび/詞がのらない/ケチャもの、みたいなのがあるでしょ?(笑)あれは彼の個性が出てて、彼しか出来ないやつで好きですね。ここまでくればイブシ銀というか。

●ホッピーさん作曲の「ベルリンは宇宙」が1曲目、「ICON」がラストという曲順になりましたね。

曲順はディレクターが決めたんだけど、結果的にはおいしいところをいただいてね。(笑)「ベルリンは宇宙」はこのアルバムの中で唯一、スティーブ(衛藤)も含めた6人のメンバー全員が参加してるということですね。これがトップに入っているというのはいいことだよ。実は、この曲は前の『CYBER』の時に録ったものなんだけど、いろんな関係上落ちたものなんです。あの時は、4曲書いた中で1曲落とさなきゃいけなくて、他の人は別の曲を落としたら?と言ってたんだけど、PINK的なポップさを持つ曲は避けようと思ったんでね。それでおクラ入りになってたんだけど、作品としてはいいものだったんで、キーボードとギターをちょっと録り直して復活させたと。

●「ICON」については?

今回は、曲はポップにということだったんで、僕の3曲についてはサウンドのトリッキーな感じとか考えずに、詞のコンセプトなんかを重視してね。「ベルリン3部作」と呼んでるんだけど、全部ベルリンに関した歌でね。「小さな男の大きな夢」は、ヒットラーのことがテーマだし、「ICON」はNICOに捧げた曲で・・・・・ICONていうのが彼女のニック・ネームのもとになってるんだよね。来日した時に、今までになく調子良さそうで、顔付きも殺気だってなくて普通の顔してて暖い感じで・・・・・そしたら2、3ヶ月したら死んじゃったから。やっぱり最期の顔っていい顔になるのかなと思った。まあ、そのNICOの死のショックとか、これからの自分のこととか考え込んだりして、去年の夏場は結構落ち込んでいたんです。前向きのことが何もできない状態でね。でも「ICON」の詞を書いたことで、悩んでいたことがふっ切れたんだ。もちろん、詞の場合は悩みをただ言ってるだけじゃしょうがないし、美しい言葉を持ってこなければいけないから、大変だったんだけど、自分で実際にやってみたら、いきおいで1日くらいで書けちゃったんですよね。詞を見てもらえればわかると思うけど、人間が死んで他界に行って、また戻ってくるという輪廻のようなこととか、平和に対してのメッセージとか、PINKがなくなってこれから自分がどうするか、あるいは僕は音楽が好きでやってるんだけど、それは何のためにやっているのかという不安とかね。そういった意味を込めている。サビの「千の光が星降るように体の中突きぬける」というのがすごく言いたかった言葉でね。人間がとても純粋になれた時、夜の空を見上げると星の光が身体にすいこまれていくように感じることがあるんだ。丹波哲郎の言う霊界のようなことじゃなくて(笑)、つきぬける瞬間ていうのがあると思うのね。その瞬間こそ、人間がいちばんピュアになれる時じゃないかと・・・・・実際、そういう気持ちになれたことが、夏に何度かあったんですよ。僕はこれまで詞を書いたことなかったから、言葉で表現することで、作品をすごく可愛がれるというのに初めて気付いた。サウンドや曲以上に、詞の方が可愛いみたい。自分で歌ったし。人に伝えるという点で、詞というのはずっと具体的だからね。

●曲と詞はどっちが先に出来たんですか?

曲。もとは他の人のために書いたんだけど、あの曲ってコードがAとDの2つしか出てこなくて、メロディを変えていく曲だから、意外と難しいんですよ。で、案の定ボツになって(笑)。そうなると、もうこの曲は他の人には歌わせない、自分が何かの時に歌うためにとっておこうと思ってね。

●すごくシンプルですよね。

うん。人のプロデュースしたり、ユニットでやったりする場合にはトリッキーなことをやるけど、こと自分のものとして何かやる時には、僕はボトムを出したいんですよ。デコレーションではない部分をね。だから今はね、PINKの時も含めて自分のものはそうしたい。もし自分がアルバム全部の曲を書かなくちゃならなかったら全部はそうしないけど、PINKの場合、サウンド面では他のメンバーからひとくせもふたくせもあるものが必ず出てくるから、僕の担当の部分は裸一貫のボトムの部分を出すのが今は大切だと思って。・・・・・外でひねりすぎてて飽きてるっていうのもあるけど(笑)。ひねるのを求められるでしょ、外では。あまりシンプルなものをやらせてもらえない。たとえばトッド・ラングレンなんかも、すごく変な時もあるけど自分のものだととてもポップだったりするよね。まあ、ポップ・アーティストの性というか、シンプルなロックであるというのがね・・・・・。シンプルだけど中身もないというものが氾濫してるから、シンプルでもちゃんとしてるものをあえてやりたいというかね。

●結構ギターの方が多く入ってたりして。

そうなんですよ。自分が歌ったりとかいうことになると、自分のキーボードで曲をどうにかしようという気持ちは全然ないんだ。人の作品に参加する場合はキーボーディストとしてプレイするから、自分のキャラクターを出すためには何も考えずに弾きまくったりするけど、自分の曲に関してはどうでもいい。自分のキーボードが入るより、違うものが入った方がいい。ギターの方が好きだからね(笑)。何か安心して。

>>(2)へ続く