ショッキング・ピンクとモノ・トーンの神秘性が視覚に飛び込んだ。『PINK』デビュー・アルバム。すんごいビート感!
聴けばたちまち好きになる。鮮烈なるロック。民族っぽいスパイスはどこから運ばれたものなのか?
6人の男達。福岡ユタカ(ヴォーカル)、岡野ハジメ(ベース)、矢壁アツノブ(ドラム)、スティーヴ衛藤(パーカッション)、渋谷ヒデヒロ(ギター)、そしてホッピー神山(キーボード)。ユニークなる集団は今、その頭角をメジャー・シーンに現わすべく動き始めた。

―――PINKって写真では随分キメてますね。

「ほら、知らない人って見た目のイメージだけで受け取っちゃうでしょ。ほらほら、インタービュー記事に書かれた口調とかもそう。よく外タレ(外人タレントのこと)の記事でヘヴィメタの人だとかは ”オイラの”とか”オレがしてやったのサ”なんて言葉使いになってるでしょ(笑)。本当の口調じゃないのに、風貌だけのイメージで。読んだ人は ”そうか、ああいうヤクザっぽいしゃべり方するのか” って思ってしまう。それならPINKも硬派で売ろう!ってね」

―――ふう~む? ところで、結成の経緯はどうなってるんですか?

「かなり難しいですヨ。まず、ビブラトーンズにいたエンちゃん(福岡ユタカ)とカメ(矢壁アツノブ)がビブラトーンズの解散1年前くらいから、同じ近田春夫ファミリーで仲の良かったジューシー・フルーツの沖山くんと、ギタリストの鈴木賢司とでデモ・テープを作り始めたんです。自分のバンドで出来ない面白いことやろう!って。それを僕も手伝ってたんです。ピンク兄弟って名前でね、アッこれはあんまり書かないで! で、そこにShi-shonenの友田真吾とジャガタラのギターのOTOちゃん、パーカッションのスティーヴ(スティーヴ衛藤)が入って来て。メンバー10人くらいが入れ替わり立ち替わりで、いろんなヘンな連中たちとセッションしてたんです。最終的に沖山クンの代わりに東京ブラボーの岡野くん(岡野ハジメ)、鈴木くんの代わりにショコラータの渋谷くん(渋谷ヒデヒロ)が入った」

―――人脈に複雑なものがありますね。つかみ切れない・・・・・。

「かなり難しいけど、あの辺ってまとまってるんです。YMO一派やムーンライダーズ一派の息がかかってないところの、グループ。絶対、正統なものに仕上げないぞ(笑)というひねくれた集団なんです。板倉文ちゃんとかバナナとか」

―――誰か中心になる人のまわりに集まってるのですか?

「中心人物はいません。みんな同じレベルだから刺激し合って面白いものを作る。なかば遊びの精神でね。類は友を呼ぶというか、バラバラのところから似たり寄ったりで集まってきたんです。といっても、ここ2年くらいの間だけど。

―――この中ではPINKの他にグループはないのですか?

「いろんなバンドが出てきてるけどPINKだけが浮上してきたんです。音が刺激的で強力だったからね。あとの連中はなにせ正統なモノしないから。ヘンな言い方するとスノッブとか、そんな匂いがあるからね、どうしてもメジャーにならない。バンドでガン!とならないんだよね。いっこいっこの人間は面白いんだけど」

―――PINKって、どんなグループですか?

「PINKはまとも、正統なものだと思いますよ。でも、少しだけ、ひねりがある・・・ひねりばかりだと日本ではダメだからね。そうPINKはニュー・ウェイブというより正統派ロックに近いですよ。ニュー・ウェイブのようにひとつのカテゴリーの中でしか動けないようなものではなくて、もっとハジケよう!ということでね。まっとうに勝負してます」

―――バンドのコンセプトみたいなものは?

「コンセプトはないです。メンバー全員、ホントにロックが好きで、環境音楽みたいなチマチマしたものより、とはい環境音楽もホントは好きだけど、それよりもステージでグッといけるものがやりたい」

―――かなり民族的なニュアンスがしますが。

「ただのロックじゃ面白くないから僕らなりに・・・・・中近東ぽいものを入れましたね。とにかくPINKはヴォーカルのエンちゃんのメロと声をフィーチャーするバンドしょ。彼のキャラクターはロックを熱唱して歌い上げるタイプじゃないけど、民族的に沁みるシンガーだと思うんです。日本民謡とか”会津磐梯山”とか歌わせるとイケルよキット(笑)」

―――それで抑揚が少ないメロディだったり。

「うん、ニュー・ミュージックの作りじゃないね。洋楽に近い。ヘンなコードはいっぱいあるけれど、コード・チェンジは少ない。1コードに沿ってチョット変えるくらいですね。同じCは楽器のテンションの違いで差をつけるくらいで、もっと変化が欲しいからといってCmに落とそうとかはしない。日本人って、ひとつのコードとかメロディでガマンするタイプじゃないのね。変化がないのは苦手。アフロみたいにエンエンというのは飽きるでしょ。演歌みたいにメロディがグングン変化して、コードも変わる。民族性だよね。PINKはそれをガマンして、どこまで同じもの続けられるか勝負してる(笑)」

―――ヘンなことでガマンするんですね!? ヘンなことと言えばA③(YOUNG GENIUS)の歌詞。何です?

「ただのハナモゲラです(笑)。デタラメ。エンちゃんはアフロが好きなんですよ。わりとスワヒリ語っぽいでしょ?耳で覚えたスワヒリ語を雄叫びしてるだけ」

―――あと、リフが強力ですね。

「PINKは全員リフでくるから大変ですよ。どのリフを使うかは早いモノ勝ち。先に強力なものを作ったヤツが得するんです。後の人はそれに添って考えなくちゃなんないので大変です。弱肉強食!いつもね、録音するときドラムとベースからやるでしょ、そこで入れちゃわれると後はビャ~と恐れるしかない。みんな自己主張の塊でバンドの輪とか考えないですからね。悪いことに僕以外みんなA型だからダメなんですよ。僕だけO型でしょ。A型が集団で来られるとパワーで負ける。で、いつも口げんか」

とはいえ、バンドはそのくらいのほうが長く持つものだと笑う彼。なんだか最後はPINKののろけ話のようだなぁ。(三浦)

 「キーボードランド」1985年07月号掲載