読者の多くはすでにテレビのCMなどでPINKのサウンドに接しているはずだ。耳ざといファンならもうとっくにマークしてると思うが、PINKは現在もっともパワフルで良質なポップ・ミュージックを聴かせるグループだ。

―――まず、PINK結成のいきさつからお話しいただきたいのですが。

福岡 僕と矢壁君(カメオ、ドラムス)とホッピー(神山、キーボード)とで、昔、近田春夫さんのバンド(ビブラトーンズ)をやっていたんですよ。そのうちに個人活動もしようかっていうことになって、始めたのがPINKの前身の「オピンク兄弟」。で、「東京フリークス」というイベントに出たんです。最初はメンバーもすごく流動的だったけど、岡野君(はじめ、ベース)が入った頃からだんだん方向性が決まってきたという感じですね。

―――それは今の、いわゆるイギリス指向っていうことですか。

岡野 みんなイギリスものは好きですね。

福岡 アメリカの音っていうのはね・・・・・。最近あんまり聴いてないからわかんないし、ニューヨークっぽいものとかはいいんだけど。好きなものもあるんですけどね。

―――キーボードに関する好みはどうですか。

福岡 キーボードねえ(笑)。キーボードの在り方(笑)。

―――なしにするとか(笑)。

福岡 キーボードをなしにする!僕はねえ、家で弾いてますからそのうち(笑)。

岡野 それはいい意見ですね。

神山 本気になるからダメですよ(笑)。

福岡 もうちょっとソフトの部分がね、簡単にできるようになれば、もう。今は、まだ何か複雑すぎてねえ。お金もかかるし(笑)。

―――神山さんは本誌でもおなじみですけど、PINKでやってる時はどんな感じなんですか。

福岡 のってくるとシッチャカメッチャカになるんだけど、醒めてる時もあるんだよね。わりとキーボードらしからぬキーボードですよ。うちはみんなそういうところがあるんですよ。ベースらしからぬベースとか(笑)。みんな結構グッと前に出てくる人ばっかりだから。

―――ベースの人から見てどうですか、神山さんのキーボードは。

岡野 これがねえ・・・・・いい奴なんだ(笑)。

神山 迷惑でしょう。自分の音域に入ってくるから(笑)。もう、容赦なく。

―――PINKの音って、わりとベースの音が前面に出てますよね。

岡野 最初に曲ができる段階で、ドラムとベースが固まっちゃうんで、「ハイ、僕、これやりました。一番乗り」みたいなのがあるから(笑)。あとの人はかわいそうだね。

神山 早い者勝ちなんですよ。リフとられたら、あと何しようかという(笑)。

福岡 場合によって違うんだけど、キーボードがリフをやる時もあるし、白玉で弾く時もあるんですよ。シングルの「砂の雫」はギターがメインでキーボードが味つけという感じです。キーボードって、昔みたいにピアノとか、いわゆるキーボード・サウンドの特色みたいなのがなくなってきてるでしょ。ギターだったら、いくらエフェクター使ってもギター・サウンドっていうのが出ますからね。キーボードとかにMC-4なんかを絡ませると、もう、わかんなくなっちゃうから。そこがまた、面白い部分なんだけど。

―――ギターとキーボードのアレンジは、どうやっているんですか。

神山 曲はだいたいセッションみたいな形でできちゃうんですよ。そこで音がうまくかみ合っていなかったら、ディスカッションします。渋谷君(ヒデヒロ、ギター)がカッティングするなら僕はウラメロをとるとか。でもPINKの場合はわりと暗黙の了解でスタイルができているので、あんまり言う必要はないんです。

渋谷 アレンジに関してはギターがいちばん最後に入って上の方でのらなきゃいけないって立場だから、難しいことが多いんですよね。

―――パーカッションはどうですか。

STEVE衛藤 いやあ、たいへんですよ(笑)。ああいうベースにああいうドラムがあって、こういうキーボードがかぶってくるでしょ。リズムの洪水ですよ。

―――たとえばレコードの帯に「○○風サウンドのPINK」と書くとしたら、どんな文字があてはまると思いますか。

福岡 実力派のPINK(爆笑)。そういう言葉はとくにないけど、逆に、聴いてどう思います?

―――やはりエスノ=ファンクっていう言葉があてはまるような気がするんですけどね。

福岡 うん、僕自身、好きなのはリズムとメロディだから。メロディ自体にリズムってあるでしょ?今までの日本の曲って、歌謡曲のメロディにバックがエスノになっているとか、どっかでかみ合ってないんですよ。そういうリズムになったらそういうメロディがついて、そういうメロディになったらそういうアレンジになっていくという感じでわりと自然にできてると思うんですよ、PINKの曲は。

「キーボード・マガジン」1984年10月号掲載