僕の体験上の具体例を交えて、一年間やって行きたいと思います。

みなさん、こんにちは。キーボード講座を任命された、ホッピー・カミヤマであります。ホッピーというのはみんなも知ってのとおりあれですよ。焼酎をホップで割ったあれ。関東地方以外にはあまりないから、関東以外の人にはピンとこないかもね。酎ハイのようなヤング向けのナウイイメージのものと違って、もっと下世話な赤ちょうちんぽいイメージを頭に描いてくれればバッチリ当てはまります。どうも最近酎ハイという軟弱なものに勢いがおされてホッピーの地位がゆらいでいるのが僕にとっては悲しい限りですね。ま、自分のやっている音楽にはほどとおいあだ名がついてしまっているのだけど、かれこれ6年もホッピーと呼ばれていると愛着があるもんですよ、これが。最近家にいるときは「いいちこ」という下町のナポレオンと呼ばれる焼酎をレモンやら何やらで割って飲むのにこっているんです。これは最高ダゼ。東京の酒屋でも「いいちこ」を売り始めたのは本当にうれしいね。関西系のホッピーといっても過言ではないでしょう。しかし、ホッピーの黄色い水に薄切りのレモンと氷をおとしたジョッキーの姿はなんともものがなしいシュールなものでありませんか。酎ハイなんかに負けないでくれ、哀愁のホッピーよ。

ここでいきなり話が変わりますが、僕は「ピンク」というバンドをやっているのです。知らない人がいたら残念だね。出ているレコードは今のところフジ・カセットのCMで使われた「砂の雫」と、映画チンピラの主題曲「プライベート・ストーリー」のシングル2枚なんだけど、8月に出す予定だった4曲入12インチシングルでお蔵になった曲も含めて来年(※注:1985年)のあたまからアルバムのレコーディングに入るからゼッタイに期待して欲しいな。
もともとピンクはおピンク兄弟というへんな名前のユニットがもとになっていて、さかのぼること2年前ビブラトーンズの土肥座円陣氏とジューシー・フルーツの沖山君とギターの鈴木賢二の3人でやっていたものにビブラトーンズで一緒だった僕が加わり、ドラムに同じくビブラトーンズの矢壁カメヲ氏が加わり、ベースに岡野はじめ氏が加わり、爆風銃で一緒だったパーカッション、スティーブが加わり、最後にギターがショコラータの渋谷ヒデマロ君にかわってできあがったバンドなのだよね。まさにドラマですな、これは。結構、一人一人の個性が強いから今までになかったタイプの独特なものができていると思うな。新しくできているバンド、室内楽的なものや暗くスノッブなものやうけをねらったものが多い中で真正面からロックで勝負できているんじゃないかな、ピンクは。まぁ、とにかく一度ピンクのサウンドに接してみて欲しいと思います。
ピンク自体でテレビのCMや他のアーティストのレコーディングを自分達の活動以外にもやっているんだけど、僕達の場合は、作曲、アレンジ、演奏というバックの仕事をするからすぐ聴いただけでわかるだろうね。結構サウンドを遊んじゃったりするから出来上がりのおもしろいものが多いかな。
今年一年僕個人でやったもののなかでは、春のNo.1バンド+植木等というユニークな組み合わせのツアーやNo.1バンド3枚目「ラジオ・ショー」のレコーディングんかおもしろかったんじゃないかな。植木さんとのツアー後に植木さんのうちに遊びにいってクレージー・キャッツ時代のジャケットをもらったことは一ファンとしては感激でありました。

さて、この講座のタイトルのキーボードのことに話を移しましょう。
僕としては普段ピアノよりシンセをいじってる方が多いんだけど、実はピアノの方が好きなんです。シンセサイザーというのはつまみとか色々ついていて操作するのにはややこしいけど電気的に作った音だから瞬間のインパクトはある。あるかもしれないけど耳に慣れてしまえば抑揚の落差はなくなるはずだし鍵盤で指を動かすことは簡単だよね。
それに比べてピアノはつまみはなくて鍵盤とペダルだけによって音楽を表現しなければならないし、気持ちを弾くときに入れることができるからダイナミクスは人間の気持ちと同時につけることができるから簡単のようで難しいし、奥深いものがあると思うんです。世界のどの地方の民族音楽もパワーがあって、エレクトロニックなサウンドが大音響をだしても勝てないのはやっぱりこの生楽器のパワーの違いなんでしょう。
シンセの音って人間の気持ちと同時進行しないし、逆なでするようなおどかしのようなものだから飽きちゃうね。これだけデジタル・シンセが発達した今になってクレプスキュールやチェリー・レッドのレーベルのように生みの向こうでのアコースティック・ブームは分かるような気がするなあ。初心に帰れというものかな。デジタル・シンセで合成した弦の音よりは生の弦の音がいいのは明らかだものね。
でもそこで認めなければいけないのはシンセの簡易さだと思うんです。欲しいイメージの音が一台で自分の手によって近いところまで表現できるというところ。機械だからミスマッチングによる偶然性とかね。
まあ、そこでバカとハサミは使い様って言うわけでこれから一年間僕の体験上の具体例とかを元に話を進めていきたいと思います。

「Player」1985年1月号より

 

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