やたらと難解な形容詞に飾られ
気難しいとかテク志向とか
随分と堅いイメージで
多くの人に受け取られている様な気がする。
とても誤解されている様な気がする。
実際に会って話すと
ギャグの固まりみたいな
5分に1度は突拍子もない事を言う様な人達だ。

確かにグレードの高い音楽をやっている。
単純なスリーコードで
ポーンと演る様なのではない。
でもPINKを聴いてると自然と体が動いてくる。
腰が左右に動いて今にも踊り出したくなる。
リズムは心臓の鼓動の様に肉体と一体化する。
そして美しいと言っても
言い過ぎではないくらいのメロディアスな歌。
素直に楽しむことが出来る音楽だ。

ものすごくPOPなバンドだと思う。
POPと言うのは
チャラチャラと軽いという意味ではなく
多くの人に受け入れられてしかるべき
という意味でのPOPだ。
別に難しい事を好んでやっている訳でもない。
好きな様にやっているだけ。
楽しくやるというのが
いつでもPINKの原点になっている。

エキスパートでありながらも
少しも気負ったところがなく
音楽なんてそんな大したもんじゃないよと
笑って言う。
そのくせ音楽は趣味でやるのは楽しいけど
仕事でやるのは辛いと言う
それは本当に音楽が好きな人が言う台詞だ。

PINKはそういうバンドである。

(Words by Miho Fukahori)


前作の『光の子』が絶品だっただけに、今回のこのアルバムにはかなりの期待をかけていた。全体的にはファースト、セカンドの延長線上という感じだが、今までで一番元気のいいアルバムの様な気がする。相変わらず形容詞のつけ難い独特のサウンドは、日本の、というよりはむしろ、洋楽の、といった方が近く、スピード感のあるロックっぽい曲などは、デビッド・ボウイを思わせる様でもある。今回は疾走する感じの曲が多い。歌詞は、やはり難解、意味不明なのが多いが、歌詞がわからなくてもPINKは楽しめる。ノビのある福岡ユタカの声は、やけに楽しかったり悲しかったり、曲によって様々な色を持っている。与えられた音を目の前にして、頭の中で何処までも広がっていく情景。B-3の『SLIP INTO FIRE』では、目を閉じると雨音が聴こえてきた。足音が少しづづ近づき、少しづづ遠のいて行く。PINKはいつも何気なくやって来て、容易に心を奪い去っていく。(深堀)

「SOUND NEWS」掲載(1986年12月発行)

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