スピード感あふれるロック・サウンドでショッキングにデビューしたPINK。一見シンプルなようでいて、その実複雑かつ緻密に織りなされた音づくり。そんなPINKサウンドをうきぼりにしてくれたCDプレイヤーがビクターのXL-V200だ。無共振、無振動思想をつらぬいた本格コンポ・サイズの58,000円だ。 ●解説:小林貢
触れて!音が出て!価格を知って! 感嘆符三連発のCDプレイヤーだな。
CDだと高音の出方と楽器の分離がすごくいいですね
福岡 このCDプレイヤーは高級品なんですか?
小林 いいえ、58,000円です。
福岡 やすい!
岡野 CDソフトの値段も最初の頃から比べると安くなったようですね。
小林 ソフトもプレイヤーの方も安くなってきてるね。このCDプレイヤーはビクターからの新製品でXL-V200というんだけど、レギュラー・サイズとしては現在最も安いものなんだよ。
岡野 デザインがいいですね。高級感があるし。
福岡 でもやっぱりCDの良さってこの操作が楽なところなんだろうね。ランダム・アクセスが出来るところなんかは、テープやレコードじゃ、とてもスピードの面で追いつかない。
岡野 イージー・オペレーションでハイ・クオリティな音が楽しめるっていうのはすごく現代的だね。
小林 知らなくても使えるし、針でキズをつけたりする事もまずない。
福岡 僕たちも実際にCDプレイヤーに触れるのは初めてなんだけど、ちゃんと鳴ったものね(笑)。
小林 どうでしたか、自分たちのCDをお聴きになった感想は?
岡野 音が違う。特に高域の出方がレコードとはかなり違いますね。音の分離がいいっていうのかな。僕たちピンクの音楽には重低音を嫌う傾向があるから、もともと録音されていないんですね。だから高域が良く聴けた事は素晴らしいけど反省にもつながりましたね。こうすれば良かったなんてね(笑)。
福岡 アルバムの音造りがアナログ的っていうか、特別CDを意識した訳じゃないから、ちょっとこの分離の良さには驚きました。これからソフトを造る側でもこの音を意識することが必要になってくるでしょうね。
小林 そうだね。それにCDプレイヤーの方も音が煮詰められてきたからね。このXL-V200もビクターのCDプレイヤーとしては6昨目にあたるモデルで、デジタル・フィルターを搭載したり、新Yサーボ・システムというサーボ回路とISメカニズムというディスク・ドライブ構造を採用しているから、外部からの振動によるミス・トラックを大幅に減少させる事が可能になっているんだよ。こうやってCDプレイヤーをコンコンとたたいても音飛びはなかなか起こさない。この価格としては贅沢な機能といえるんじゃないかな。
福岡 そのメカニズムっていうのは?
小林 ピック・アップ部を本体からフローティングして、音圧などによる本体ボディの振動もピック・アップには伝えないしくみになっているんだ。
福岡 こうしてみると、CDの進歩はすごいと思うけど、他のコンポ、特にスピーカーなんかも結構発展しているようですね。でもアンプが今一歩ってところがあるように思うけど・・・・・。
小林 理論的にはスピーカーも進歩してはいないんだよ。ウーハー等に使われる素材が変化したから、えらく進歩したように見えるの。確かに材料の変化によって音は良くなったんだけどね。CDを再生する場合は、そのスピーカーをドライブしきれるアンプを選ぶ事も大切になってくるんだよ
メロディと詩が自然に融け合うように心がけました!
岡野 CDで聴いてみると、ボーカルってすごくノーマルだね。もっとあれこれすればよかったなって思うよ。
福岡 ラジカセなどで聴いても気持ちいいものっていう事も考えたからね。
小林 これはデビュー・アルバムだよね。こういった傾向のハードな音楽も好きなんだけど、特にリズムがすごくいいね。ベースはどこのを使ってるの?
岡野 ベースはオリジナルです。すみからすみまで。
福岡 ベースにコンプレッサーを使っているものも大きいね。
岡野 もっと音がつぶれてほしかったんだけど。パチッていう感じでね。
小林 オーバー・ダブは結構やってるのかな?
岡野 24chじゃ足りなかったんです。楽器の数はそんなに多くないんだけどディレー音などの処理した音が意外に多くてね。
小林 すべてオリジナルの曲だよね。曲つくる時はどうやるの?
福岡 さあ作るぞ!て感じでいきごみがないとダメなんです(笑)。
小林 詩が先にできるの?
福岡 曲が先です。日本の音楽っていうのは洋楽っぽい曲にはのりにくい。
小林 昔は歌詞がバラバラに切れている曲があったものね。
福岡 メロディと詩が、有機的に肉体化されていないわけだから詩を先に作って曲をつけるっていうのは無理があると思う。意識的には可能でも無意識のうちには出てこないと思うんです。自然じゃない。
岡野 その点で僕らは、あまり無理せずやれたと思うし、完璧にやれれば新しいパターンの確立だと思いますよ。
福岡 このアルバムについては、その分野でオーソドックスなものって感じで、音も完璧とはいかないまでもかなり満足できるものに仕上がったしね。
岡野 10月からレコーディングに入りますが、今度はCDを意識したものをぜひ造りたいと思います(笑)。
「アドリブ」1985年10月号掲載