実質上のラスト・アルバムRED&BLUE。
5年間の歴史にPINKはどう決着をつけたのか?
まず、PINKファンなら誰もがまっ先に知ろうとする主導権分担について説明すると、今回の場合、福岡ユタカが4曲、ホッピー神山が2曲、岡野ハジメが1曲、福岡&矢壁アツノブで1曲、ホッピー&福岡で1曲という構成になっている。ところが、実際のレコーディングにおいてPINKの全メンバーが揃って録音したものは、たったの1曲しかない。その1曲とは前作『CYBER』の時に録音されたものなのだ。つまり、今作『RED&BLUE』はメンバー個々のソロ作品を集めた、PINKという名をクレジットすることすら、もはや適切ではないようなアルバムなのである。
しかし、そうやって文字通りバラバラになって作ったこのアルバム、これが先入観に反して、実にいいアルバムなのである。アルバムの統一感、曲のまとまり、PINKがこれまで苦しみ続けてきた難題がきれいさっぱり解消されている。こざっぱりしすぎているキライはあるものの、CDにパッケージされたものとしてはこの上なくスマートだ。音楽性の異なるそれぞれのメンバーが、自分の思い通りに作りあげてしまったこの作品群が、どうしてスマートにまとまっているのだろう?
すでに知っている人も多いと思うが、PINKはこの『RED&BLUE』をもって、5年に渡るその活動を凍結する。解散ではないが、現メンバーが今後PINKとして活動する可能性は極めて薄い。なぜ、そうなったのかについてはインタヴュー中で語っている通り、「音楽性の相違」である。いわゆる感情的なしこりは、このバンドのコンセプトとして初めからなければおかしいような種類のものだから、改めて問題になるはずもない。「俺達は仲良しバンドではない」というクールな認識こそが、メンバー同士でしのぎを削るPINKを支えていたはずだからだ。しかし、音楽的な「目標」それ自体がずれていってしまったらメンバーを結びつけるものは、もう何もなくなってしまう---今回はまさに、そういう状況下でレコーディングされたわけである。人間的な結びつきも音楽的目標もない中で、PINKとしてのアルバムをリリースする。そこに残されていたのはただひとつ、「PINK」というイメージだった。過去の作品からイメージされるPINK像だけが『RED&BLUE』の強力な指針になったのだ。
それにしても活動休止の土壇場に来て、最もPINKらしい、本来言われるところのバンドらしい作品が出来あがってくるこの不思議。皮肉といえばあまりにも皮肉な決着のつき方だった。
【各自のインタビューへ続く】
(インタビュー:増井 修/撮影:村越 元/ヘア&メイク:太田年哉)
「ROCKIN’ON JAPAN」1989年3月号掲載
>>福岡ユタカ インタビュー
>>岡野ハジメ インタビュー
>>ホッピー神山 インタビュー