僕自身は自分のやりたことを、自分の立場を自由にしてやりたいと思っていた
▼今度のアルバムはソロの集合体といった感じなんですが、ちゃんとアルバム全体を通して聴きましたよね?(笑)。
「ちらっとしか聴いてないんですよね(笑)」
▼今回は福岡さんの曲の比率が今までで一番高いわけですけど、自分の曲に関してはどう自己評価していますか。
「今回はね、作り方を以前とちょっと変えたんですよ。新しい12チャンのテレコを買ったんですよ、自宅録音の。機械に今まで弱かったんだけど、打ち込みから何から結構自分でやってみて、試作っていうところから始めていったから、割と時間はかかったね、試行錯誤の連続があったんですよ。今までは他のメンバーにまかせてた部分もあったけど、ある程度自分でやってみたいっていう欲求が前々からあったんで」
「自分で採点するとね、75点かそこいらだな。”水の絆”に関してはうまくできたと思うんだけど、他の曲はとりあえず根本の部分はできてるかもしんないけど、ツメの部分がね。まあ、自分の作品としての次につなげるステップにはなってると思う」
▼PINKはこれにて開店休業状態というか、このアルバムがひとつのケジメという感じで、ライヴもやらないし、今後レコードのリリースも全く未定であるということなんですが、なんでこういうことになっちゃったんでしょうか。
「個人個人で違うと思うんだけど、僕自身は自分のやりたいことをもうちょっと自分の立場を自由にしてからやりたいというのが、もう去年の春くらいからあって。もっと他の人達ともやりたいなってのがすごく出てきて。やりたいことをやりたいってのが一番大きいですね」
▼今さらこんなこと言うのも何なんですけど、なんで福岡さんはもっとPINKというバンドを統制しなかったんだろうという気がするんですよ。「俺が全部仕切ってやるんだ!」という感じで。
「それは、あの、最初のうちはしたけど、資質的にね、そういうことができる人じゃないんですよ、僕は。いわゆる管理者タイプじゃないから。ある面ではすごい強引だったりわがままだったりするんだけど。ただ、そういう強引なやり方もソロだったらすごくやりやすいだろうなって気はするね。PINKってほら、後半になるにしたがって、よけいに1人1人の活躍がいろいろあって、外から1人1人のツブ立ちが見えるバンドで、どっちかっていうと、1個のバンドとしてドーンとあるというより、この人達がどういう関係で、どういう考え方、思想を持って、どういう音楽をやってるのか、とかそういう見方をされることの方が多かった気がするのね。1人1人がケンカしたりとか、一緒にやったりとか、そういうのが結構外から見えた1個の器だったって感じがするのね」
▼うん、まさにそうですね。では福岡さん個人のこれからのプランということについて、今言える範囲で教えて下さい。
「僕のソロって感じになると思うけど、まあ、でも、ドラムのカメさんとはある程度一緒にやってくと思うのね。あと、キーボードだったらバナナとかね。窪田(晴男)ともちょっとやってみたいしね。曲は今、例の12チャンのテレコである程度ためてるんですよ」
「この間、アッコさんのレコーディングでコーラスをやったのね。ワン・トラック好きに使って下さいってことでさ。そのアッコさんのレコードってのが、今パット・メセニーとかすごい人達ばかりで作ってて、で、僕もそれと結構やりたいこと似ててさ。今、僕のデモテープって打ち込みとか多いんだけど、そういうんじゃなくて、腕利きの奴いっぱい集めてさ、生っぽいぐっとくる一発録音みたいなのやりたいんだけどね、本当は。でもそれは僕だけじゃどうしようもないからね。ミュージシャンがね、少ないからね、日本って。いいミュージシャンがね。ある意味じゃPINKって本当おいしいミュージシャンばっかりで・・・・・。なんか、これから永遠のお別れみたいなこと言ってる(笑)」
▼PINKの他のメンバーがこれから何やってくのか気になりますか。
「あんまり気になんないね。今んとこ自分のソロ作るのに必死だから。でも、またしばらくしたら、それは気になると思うよ」
▼例えば5年後に、やっぱりまた一緒にやりたくなったからPINK作っちゃいました、という可能性ありますか。
「先のことはわかんないけど、その可能性薄いと思うな(笑)」
▼これまでのPINKを総括して、感傷的になったりということはないんですか。
「これが本当にないんだよね(笑)。隠してるとかそういうんじゃなくて・・・・・ないなあ、全然。運命共同体みたいなバンドなら別だろうけど、PINKの場合、メンバーはメンバーでやりたいこともあるんだし。僕も、次にやりたいことが結構自由にできるかなってのと、これから1人でやらなきゃいけない部分が多いから、そっちをがんばらなきゃいけないかなってことの方がずっと大きいんだよね」
「ROCKIN’ON JAPAN」1989年3月号掲載記事
(インタビュー:増井 修)
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