PINKの行く末が明らかになるにつれて、自分はやっぱりバンドが好きだって事がわかった

▼アルバムはもう当然通してお聴きになってますよね（笑）。今回のアルバムを聴いた印象というのはどうですか。

「なかなか軽く聴けるなって感じですよね。まあ、おのおのPINKに対する思い入れってところで作ってないから、すっきりしてるよね。気持ちを清算した上でやってるしね。先がどうなるかわかっててやってるし。ここで区切りってことでやってるからね。だから、何もすごいキャッチ―な曲を書こうとか、すごい実験的なことをしようかっていう風におのおのがもくろんだ作品を詰め込んだわけじゃないんだよね。それに、別にエンちゃんに対して、気を遣ったわけでもないし、つっぱったわけでもないからね、僕も岡野君も。『サイバー』の時はまだつっぱってるところがあるからね。そういうのがないと思うのね、今回は」

▼で、開店休業となるPINKに対して、なんかこう、感慨深いものとか、あるでしょ、少しぐらいは（笑）。

「別にないです（笑）。それより、これからの自分の方が大切だと思ってるから。PINKをやったってことは、すごく僕は自分の中で重要なことだと思うから、そのPINKでやったことを今後自分がやることによって泥を塗りたくないし。だから、今後自分が、PINK以上のものを作んなきゃいけなってプレッシャーはありますよね」

▼これから、ホッピーさんは具体的な活動のプランとか決まってるんですか。

「とりあえず、下山（淳）と何らかの形でバンドをやるってのは決まってるんだけど、メンバーは今んとこ発表できる段階ではないんで。本当に全くの新人バンドで、もう屋根裏からやるから、がんばるから、観にきてよって感じでやるつもりですよ。今までいろいろ活動してきた経験があったりすると、計算するでしょ、いろいろ。そういうものをなしにしてあえてやりたいのね。じゃないとバンドなんて魅力出ないでしょ。じじいの集まりみたいのよくあるけど、ああいうバンドは嫌いなんです、僕」

▼去年、ソロを作るって話もあったでしょ？

「いや、僕はどっちかっていうとバンドをやりたいから。ソロなんていつでも作れるしね。PINKのこういう行く末ってのがだんだん明らかになるにつれて、自分はやっぱりバンドが好きで、バンドでいきたいというのがわかったから、だったらそういう準備をしようかなって感じになって」

▼じゃ、ホッピーさんはその時点でPINKの行く末はもうないと思っていたわけですね。もっとPINKで突きつめたいことがあるから未練が残す、みたいなことはなかったんですか。

「ないですね。別にPINKですべてをやり尽くしたなんてことは全然ないんですけど、バンドでしょ、PINKはね。新しいものを作り出すユニットではなかったのね、基本的には。ライヴもやるわけだし、ツアーもやるわけだからね。で、バンドってなにかよくわからないバンド・マジックみたいな魅力ってあるでしょ。そういうエネルギーみたいなのが失われる時っていうのは、やっぱりやっててつまんないのね。何も、すごいカッコいい音とか、新しい実験的なひねくった音を作りたいってことより、僕なんか特に求めるのは、バンドでしか味わえないその”何か”なのね。エネルギーっていうか、燃えちゃうやつね（笑）。それが欲しいわけ。でも、PINKってのは、そういうものを徐々に『サイバー』辺りから失いつつあったわけでしょ。そういう状態の時に、周りが必死になって尻たたいても、それは無理なことで、おのおのの意識の問題で。だったら、別にものすごいケンカしたとか、顔も見たくないとか、そういうんじゃないんだから、もう4、5年ぐらいたって、またやりたい時が来たらね、まあ、やるのもいいんじゃない、みたいな軽い感じですよ。やんないかもしれないけどね」

▼これまでのPINKの歴史をたどってみて、バンドのエネルギーが非常に高くて、で、楽曲も非常にすぐれているというのはいつ頃だと考えていますか。

「僕は一番エネルギーがあったのは、結局１枚目だと思う。曲の完成度が高かったのは、３枚目だと思う。だから、ビートルズに例えると、『サイコ・デリシャス』ってのは『ラバー・ソウル』なんです。そして『サージェント・ペッパー』とか『マジカル・ミステリー・ツアー』みたいなひねったところがなくって、『サイバー』でいきなり『ホワイト・アルバム』に至ってる。で、最後のこれは『アビー・ロード』だと（笑）」

▼で、今後、みなさんそれぞれの道に走り出すわけですが、他のメンバーの今後は気になりますか。

「気になりますよ。だって、面白いことやりそうだしね。例えば岡野君だって、クアドラとかさ、既に発表してていい作品だしね。あと、エンちゃんにしても、僕、今回のアルバムの”水の絆”ってすごい好きなんだけど、ああいうのやらせたら世界一でしょ、あの人。だから、ああいうので突きつめて欲しいなって僕は思う」

◆最後に、じゃあ、ホッピーさんにとってPINKとは何でしたか。

「PINK・・・・・・・・・・。そうだな、例えば、プロペラ飛行機に乗ってる気分って結構似てるかもしんない。プロペラ飛行機って結構揺れるでしょ。危ない。だけどスリルはあるよね、すごい（笑）。しかも低空飛行するから、眺めがいいわけ（笑）」

「ROCKIN’ON JAPAN」1989年3月号掲載記事
（インタビュー：増井　修）

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