やはり日本で当てたい、
日本の状況も、おもしろくなるはずだよ


’85年はPINKの動きがおおいに目立った1年だった。5月には待望のファースト・アルバム『PINK』をリリース。以来PINKは大がかりなツアーも行ない、順調に知名度を高めた。多分、’85年もっとも成長をとげたバンドといえるだろう。そのPINKが、さきごろニュー・アルバムのレコーディングを終了。このセカンド・アルバムは、『光の子』というタイトルで、いよいよ2月にリリースされる。(今回のインタヴューには、福岡ユタカ、岡野ハジメ、矢壁アツノブの3人が出席した)

---まずは’85年のPINKの活動を改めてふりかえってみてほしいんだけど?

福岡:まあまあというところかな。

岡野:一応の目標はある程度達成できたような気がするね。

矢壁:具体的にいっちゃえば70%達成というところだね。

---残りの30%というのは?

福岡:もうすこしライヴ活動の広がりがほしかったからね。

---その上で、’86年の抱負っていうのは?

福岡:メジャー。(笑)

岡野:1枚目のアルバムの志から何も変わっていないし、作品内容やレコードの売り上げを落とすことなく、常にレベルを高めていくようにしないとね。

---ロック・バンドとしてはめずらしく全国をまわったわけだけど、かなり手ごたえはあったんじゃない?

岡野:そうだね。小さいところが多かったけど全国をまわれたし、PINKのことを注目してくれているってことは十分に感じられたね。’86年はホールを中心としたツアーもするし、それにつながると思う。やはりPINKは、東京でしか売れないバンドで終わらせるつもりはないよ。全国的に良質のポップとして聴いてもらえる日がくるはずだよ。

---今回2枚目を作る上で、1枚目をふりかって反省した点はある?

福岡:1枚目はすごく思い入れが強かったからね。詩にしても私的なことが多かった。ポピュラリティーが感じられるようになるにはどうしたらいいのか考えたよ。

岡野:1枚目のときは良い意味でも悪い意味でもうっ積してたものがあって、それを一挙にはきだしたって感じ。勢いはあったけど、聴く人にはある意味でヘヴィだったかもしれない。でも、はきだしたことで僕たちは精神的に楽になったね。

---以前、1枚目は「それまでのベスト・オブ・PINK」っていってたけど、バンドにとってやはり2枚目のアルバムは、作るのが大変だと思うな。

福岡:かもしれないけど、ただPINKの場合は、基本的には変わらない。むしろ3、4、5枚目というあたりから、好きなことがやれるようになって広がりもでてくるだろうし、そのあたりのほうが逆に大変なことになっていくんじゃないかな。

---今度のアルバムを数曲聴いたけど、すごくポップだと思えた。特に詩とメロディが素直に耳にとびこんでくるし・・・・・。

福岡:今回は特にポップなものから仕上げているんだ。それに1枚目で思ったのは、中でもB面(ゴールド・サイド)の曲は聴き手には安心できない部分があったってこと。そのあたりのことはかなり考えたよ。今回はシングルも出したいしね。やはり日本で当てたいしね。その後3、4枚目あたりで海外のことも考えたいんだ。

---今回も何人かゲストが参加してるよね。

福岡:RAがギターで。それに吉田美奈子サンがコーラスの作詞。ちなみに曲も、1曲をのぞいて残りはすべて新曲だよ。(笑)

---1枚目と大きく違う点は?

岡野:まずはエンジニアが違う。これはかなり大きいね。でも、あとはほとんど同じ。

矢壁:ノウハウの部分で1枚目で反省したところを、今回新たに挑戦したりしたのは多かったけど、それはさほど大きな違いじゃない。

---2枚目をリリースした後の目標は?

福岡:着実に進んでいくっていうことを大前提において、とりあえず日本で当てたい。次のアルバムを余裕を持って作るためにもね。多分、夏頃には作りはじめるよ。海外レコーディングの予定もあるんだ。

---この1年あたりの日本のロック・シーンをふりかえってみてどう思う?

岡野:今の日本ではロックと歌謡曲では、まず大差はないと思う。手法の違いでしかないっていう気がするね。やはり海外のロック・アーティストっていうのは、個人レベルで社会意識みたいなのを持っていて、ちゃんと主張もする。PINKはメッセージを主張するようなバンドじゃないけど、音楽ビジネスの中では愛はシッカリと歌っていきたいんだ。

福岡:つまらない手法にこだわる前に、PINKはパワーを持ち続けて進んでいきたい。そうすれば新しいブレーンの広がりも生まれるだろうし、絶対に日本の音楽状況ももっとおもしろくなるはずだよ。

(取材・文:山田道成)

 

「ロッキンf」1986年2月号掲載