通称カメちゃん。なぜそう呼ばれるようになったのか、きいたことはないが、ドラムセットの後ろから首だけが見える姿を見ていると、なんとなく納得してしまう。
努力家、キカイに強い、エーゴに強い、というのが他のメンバーのカメちゃん評。
ピンクは全員そうだが、彼もドラマーというワクで語ることのできない人のようだ。
「僕はメロディー志向の人間なの。メロディーに触発されてリズムができることが多いんだよね。最初ピアノやったりしてたことが影響いてるかもしれないけど」

ステージをよーく見ると気付くのだが、彼のドラムセットは左右が逆。
「最初知らなくて右利きのセットでやってて全然うまくできなくて、僕はドラムに向いてないと思ってたんだけど、友達に左利き用のがあるって教えられて、それで左利き用でやったら急にうまくできて、なんかドラムやってるのは運命みたいなものだったんじゃないかな。とっつきやすかったよね」

ドラマーとしていくつかのバンドを遍歴した後、福岡ユタカと知りあい、人種熱・ビブラトーンズを経てピンクへ。最近はスタジオ・ワークばかりでなくセッションも増えてきて、ドラマーとしてはもっとも忙しい一人。
「カッコいいと思ってそれぞれバンドは、やり続けてたよね。カッコ悪いなと思いながらやらないもん。自分で自信があって、いつもやってるわけだからさ」
じゃあ彼がカッコいいと思うのはどんなことなのだろう。
「う~ん、よくわかんない」
決してトボけているわけではなく、彼の場合アイマイなことは言いたくないというガンコな部分がこうした答になってしまう。逆を言えば、彼が言い切ったことにはアイマイさがないということだ。そのあたり、キカイと仲がよいのもうなづける。ステージではよく見えないが、彼のドラムセットの後ろにはたくさんのコンピュータが接続されている。
「ウン、コンピュータは好き。外からの刺激をアナライズ(分析)するのが好きなんだよね。ドラムっていう楽器が、僕なんか特にそうだけど、リズムとかを解体して考えていくものだから」

そう言う彼が最も刺激を受けるのが、映像。映画、マンガ、ビデオなど、視覚的な刺激は大歓迎。ウチには28インチの大型ブラウン管TVを置いてビデオなどを鑑賞している。映画の話になるともはやミュージシャンとは思えず、映像作家と話しているような気分。見ている数も並みじゃない。
「映画からドラムのフレーズとか、そういう音楽的な発想が出ることがすごく多い。映画におけるコード進行とか、テンションの使い方とかを見ちゃう。映画も音楽も、時間の流れの中で作るという点で、同じ時間芸術なんだよね」

映画を見るとき、「スーパーを読むのがもどかしい」のと「話が通じないと音楽も海外進出できない」という必然性から、2年前から英語の勉強を始め、その成果は昨年秋、ピンクがロンドンに行った時、大いに発揮された。
「英語も分析的だから好きみたいね。しゃべれると便利だし」
かように向上心と合理精神旺盛な彼だからこそ、
「キカイがこんだけできるんだから、カラダもこんぐらいないとマズイ」
とバランスを取る。その成果があのリズムになるわけ。最近はライブの経験から「行動を伴わない音に観客は反応しない」をモットーに、よりダイナミックなプレイを心掛けているそうだ。

<<その(5)その(7)>>