3rdアルバム『PSYCHO-DELICIOUS』を発表し、3/25にはJAPANやXTCを手がけたスティーブ・ナイのプロデュースによる「TRAVELLER」もリリースするPINK。そのほとんどの曲を作曲している福岡ユタカ(Vo)に新作アルバムについて語ってもらった。
(※プロデュースではなくミックス)

福岡 今回はより内省的で、しかも世の中の動きとは全然関係ない、自分の作りたい音を作ったっていう感じです。1、2枚目でPINKのキャッチ―な部分はある程度わかってもらえたと思うので、今度はもう少し奥深い、よりメロディアスな面を出したかった。自分の内的な世界、特に静かな音を、出来のよくない曲をアレンジで何とかするみたいな作り方はしたくなかったからね。

―――メンバーの一人、特にボーカリストとしてはどうですか?

福岡 今までちょっと失敗したなと思うのは、どうしても最終的に僕がまとめていくでしょ?そっちの方にエネルギーを費やして、ボーカルを入れる時にエネルギーがなくなってたっていうか(笑)。そういうペース配分に今回は気を使って時間もかけて、ライブの時って自分がボーカルだって意識するけど、やっぱりレコードってことになると、全体的な物の見方をしていかなくちゃならないし。トータル的にその楽曲を、どういう風に自分達の創りたい方向に持っていくか。プロデューサー的な面も兼ねてしまいます。

―――吉田美奈子さんの詞が多いですが、その辺は?

福岡 彼女自身がすごいボーカリストでしょ? ボーカリストの心のわかる人だから、やっぱり難しくても、やり甲斐のある難しさですね。彼女はメロディー・メーカーとしての僕のことと、ボーカリストとしての声質をとても認めてくれていて。

―――それぞれがアレンジやプロデュースで活躍中という、個性豊かなPINKのメンバーのバランスという面は?

福岡 今回はある程度、みんなプレイヤーに徹してくれて。でもPINKはバンドですから、アレンジャーがいてプレイヤーがいて、プロデューサーがいる、というのでは絶対にありませんからね。僕らの場合、もう少し有機的にからまってますし。音楽的に近いとか遠いとかいうことだけで言えば、近い人はいないな。でも違った良さを持った人から触発されてるっていうのはありますね。スタジオで活動してて知り合ったんじゃなくて、無名時代に出逢ってこうなったわけで。この人のここがおもしろいって惹かれ合ってるんでしょうね。

―――この間の渋谷公会堂でも、それぞれの個性がすごく出てましたが。そこに美奈子さんという強力な個性までが加わって。

福岡 あの時はかなり盛り上がりましたね。あの年齢層にしては(笑)。3枚目は特にメロディアスな曲が多いから、次のツアーでは落ち着いたコンサートになると思うけど。こんなに音楽が多様化してきてるのに、ライブの楽しみ方っていうか、ノリ方みたいなものは画一的でしょう?一人ひとりのノリ方で構わないと思うよ。静かに聴いても踊ってもいいわけだし。ロンドンのバス・ビーズ・クラブでのGIGの時は、みんなスゴく静かにシリアスに観てたね。でも反応は好評で、大成功でした。

―――今後のPINKの方向性については?

福岡 曲を書く立場からすると、もう少しダンサブルで、しかもビートが変ってるもの、ロックのビートじゃなくて、間をうまく使ったようなものを、例えばエスニックなんかにも興味がありますね。「シャドウ・パラダイス」という曲は、僕は島根県の浜田の出身なんですが、リズムは石見神楽からとりましたから。実体験のエスニックから作ったのは初めてですけど、日本に限らずおもしろいものはとり入れていきたいですね。

『光の子』から約1年半。PINKの3rdアルバムには、惹き合い反駁し合う個性の集団としてのバンドの姿が浮き彫りにされている。文字通りワールドワイドな活躍ぶりを見られるのももう間もなくだろう。

インタビュー●原千鶴
撮影●松村秀雄/原千鶴

「週刊FM」1987年 No.4