PINK待望のサード・アルバム『PSYCHO-DELICIOUS』が届いた。バンドとしてのオリジナリティの輪郭が増々クッキリと浮き立って見えるこの新作について、リーダーである福岡ユタカにインタヴューしてみた。

PINKのメンバーはみんなインパクト主義に辟易している

---まず、今回一番強調したかった部分というのは、どの辺ですか?

福岡 やっぱりメロディーですね。普通の人に聴いてもらってもいいと感じてもらえるものというのかなあ・・・・・。今までPINKって、雑誌なんかではいわゆるサウンド重視だという取り上げられ方をされてますけど、1枚目からPINKは代理サウンドというのは一度も使ったことがないんですよね。同期も実に少ない。ずっと生音でやってきてるんです。今回もそうで、ギミックを使ったサウンドというのはひとつもないんですね。しかも、PINKはバンドだし、今みたいにサンプリング関係が究極までいこうとしている中で一番新しいことは何だろうと考えてみると、やっぱり生音をどこまでカッコよく録るかという部分になるんですよ。その辺に気を遣ったから、今回ヴォーカルなんかも今までで一番たってるしね。基本的には、いい曲をたくさん入れるということ。しかも、アレンジはあくまでも曲に沿ったものでね。アレンジがアレンジとし目立っているのが、一番カッコ悪いからね。

---レコーディングに入る段階では、もう曲は全部できていたんですか?

福岡 そうですね。6月ぐらいから曲を作り始めて、1カ月くらいリハーサルをして、7、8、9月で実際のレコーディングでした。アルバムに入ってるのは9曲ですけど、実際には12、3曲ありました。レコーディングの最中は大体全員揃ってましたし、本当にノーマルな形でやったんですよ。リズム録りをして、それからおこしていくというやつね。けっこう”生音、生音”とか言いながら細かいところは凝ってますけど。

---福岡さんの目から見て、今回メンバーの方々の意気込みみたいなものはどうでしたか?

福岡 いい感じでコンビネーションがとれてきたから、お互いにやることがスムーズにいくようになりましたね。バンドとして1枚目、2枚目である程度理想的なものができているから、今回はもうちょっとリラックスしたムードが出てきたという感じです。ともすると音の圧力で、聴いてる方が疲れちゃうというところもあったと思うんですけど、今回はその辺がとれたように思うんですよ。もちろん、アップ・テンポの曲ではものすごくビートが出てるんだけど、スローな曲で僕が”風のようにやりたい”と言うと、そういう風になるんです。みんなインパクト主義に辟易している部分が多少あってね、何回か聴きこんでいいレコードと思えるような味わい深いものを作りたいなあっていうのは、すごくありましたよね。

---さっき”風のように・・・”とおっしゃってましたが、B①(SHADOW PARADISE)、B③(SLIP INTO FIRE)なんか特にそれを感じますね。今回も吉田美奈子さんが3曲で作詞をやってらっしゃるんですが、やっぱり美奈子さんてはまります?

福岡 うん。話はパチパチ合うし、音楽的なところで共通点が多いしね。あ・うんの呼吸がもうできていて、音も一緒に作りたいなあなんて言ってるんですよ。PINKじゃない部分でね。

---それから近田さんも作詞で参加してらっしゃいますね。

福岡 近田さんはもう昔から友達だし、僕、近田さんのやってることって大好きなんですよ。近田さんの詞ってちょっと近未来的な感じがするでしょ。だからその曲は、『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』みたいな、大袈裟じゃないSFを思い描きながら作ったんですよね。

---今度は音的なことをお聞きしたいんですけど、全体的にリバーブ関係が少なめという印象ですよね。その辺どうですか?

福岡 やっぱりアンビエントをきれいに録るのが一番カッコいいんだけど、スタジオとの関係というのがあるでしょ。で、デジリバといのはメンバー全員が好きじゃないし、特にドラムのカメ(矢壁アツノブ)さんとかはダメなんです。そのあたりへのこだわりじゃないかな。今回スネアの音とか結構スティングのやつと近いね。ドラム・サウンドには、タイムの人達がやってるようなものも一方であってすごく面白いんだけども、バンド・サウンドではないでしょ。PINKは生音重視ですよ。ここまで日本のバンドでできますかという自負みたいなものは当然あります。生音がきれいでインパクトがあって、できそうでできないこの音というのがね。

---ホント、このドラム・サウンドは日本じゃ聴いたことがないもんですね。

福岡 うん。マイクのセッティングなんかは、ミュージシャン側とミキサー側がいろいろ言い合ってやりましたよ。

---リズム録りの段階で音はできあがってたという感じですか?

福岡 もう、ほとんど。リズム録りはすごく早かったですよ。だいたいテイク3ぐらいまでですね。

---本当に?じゃリハーサルの段階で形になっちゃってるんですか?

福岡 スタジオでやってると、リハーサルでは聴こえなかった音まで聴こえてくるから、当然上にのっかるフレーズも変わって、アレンジというのもやってて気持ちいい方向に変わっていきますね。あと、リズム録りのときは仮歌を歌うんだけど、それがよくてね。そのままレコードにしちゃった方が面白いかなって場合もあるんですけど、あまりにも歌詞がデタラメだったんで(笑)。日本語はどうしてもノリづらいから、歌入れは難しいですね。

---歌入れは大体どのくらいのペースで・・・・・?

福岡 僕そんなにのど丈夫じゃないし、ましてリーダーなんで長時間のレコーディング中ずっとついてるわけだから、歌入れまでに結構疲れちゃうんですよ。1日1曲ですね。今回、イギリスで発表する、「SOUL FLIGHT」の英語ヴァージョンの録音もあったから大変でした。どうしても仮歌の出来がいいだけに(笑)。あと、日本語がのると、その意味の方に引きずられちゃうというのもありますね。その辺、美奈子さんなんかの詞は仮歌のニュアンスを大事にしてくれるから入りやすいです。ともすれば防御的に自分がなっちゃうんだけど、できるだけそう思わずにもっていこうという気持ちで歌いましたよ。

---今、「KEEP YOUR VIEW」がCMでバンバンかかっていますけど。

福岡 なんとかヒットして欲しいですね。

---PINKもオリコンのチャートに登場して・・・・・。

福岡 上がりたいですよ、ホントに。

---プロモーション・ビデオもよく流れてますね。

福岡 今回は「業界くん物語」をやったタイレル・コーポレーションの中野さんという方にお任せしたんですけど、割とシックないい感じで録れてますね。メンバーみんな映像にウルさいからねェ(笑)。今度は絵コンテ描きたいなって話しもしてるくらいで。このあいだ、竹中直人さんとずっと話してたんだけど日本の映画監督ってあんまり絵コンテ描かないらしいんだよね。CMなんかでは絵コンテがあって、何秒から何秒まではこのカットで、そしたら音楽の方もその秒数で小節数を決めていくという、いわゆるカット・トゥ・ザ・ビートの関係ができてるでしょ。ヒッチコックなんかも全部そうでしょ。ドアを閉めたとたんに音楽が始まるとか、ミュージカルじゃないかと思うくらいに、動きと音楽が合ってますよね。その辺だけはなんとかしたいと思いますね。

(2)へ続く>>