ロックはビートルズから

---それで、そのクラシックの趣味と、いわゆるポップスというのは並行して聴いていたんですか?

「僕がヒット・チャート番組とか聴きだしたのは、『オールナイト・ニッポン』で、亀淵さんとか、糸居五郎さんとかやってたころで、そのころから密かに聴いてたんですよね」

---密かにね(笑)。’60年代最後のあたりですか?

「うん。だから、僕はあのころのサイケデリックの時代のものが好きで、その辺を聴くと安心するなっていうのがありますね。やっぱり、あの時代は、ロックも尋常じゃなかったようなときだから(笑)」

---ポップスのほうでの最初のアイドルは?

「やっぱり、ビートルズかな、最初にのめり込んだのは。初期じゃなくて、後期のね」

---ということになると、やっぱりサイケ物ですよね。クラシックの好みと通じてますね。サイケだったら、テープ逆回転やるみたいに手法的に凝っていて、現実とちょっとズレた感覚持ってるみたいなところでは一貫している。

「そうですね。僕は音楽って、やっぱり夢を売るもんだと思うから、ある程度リアリティがあるってことがすごい大事なんだけど、それプラスα(アルファ)の、人を気持ち良くさせるものを加えるっていう。音に関しては、テープの逆回転とかもそうだけど、ビートルズはいきなり生楽器を入れだしたでしょ、ビート・ミュージックに。「アイム・ザ・ウォルラス」とか、すごいアグレッシブな感じしたし、ラジカルですよね。ああいう弦の使い方ってまったく考えつかないようなもんでしょ。だからおもしろい。はっきり実体のつかめるものっていうのは、つまんないんですよね。僕が、トッド・ラングレン好きなのも実体がつかめないからなんですよ。何考えてんだかわかんないっていう(笑)」

---今、自分が音楽作るときも、その辺のズレみたいな部分に興味があるんですか?

「そう。初期のテクノがおもしろかったのも、そのころは音もデジタルじゃないし、プリセットもないから、毎回、音が違うんですよ。今はデータが残っちゃうから、逆にそれができないんですよ。毎回同じ物になってしまうと音楽つまらないでしょ。だから、あんまり簡単に事を運んではいけないなって思います。悪循環ですよね、明らかに。だって、みんな最近のレコードダメだとか言っておきながら、自分が作るときになると、同じことやってるんだもん。言うからには態度で示せっていう」

---リズムがまた注目されてますけど、ホッピーさんは、リズムについてはどういう考えですか?

「リズムっていうのは、ロックに限らず音楽では一番大事な要素だと思うんですよ。その一番大事なところはビート感ですよね。あんまり入り組むことはないけど、いくつかの音が一緒に鳴ってるときのリズムのおもしろさっていうのがビート感だと思うんですよね。まあ、一番むずかしいところなんですけどね」

---ホッピーさんが自分で弾くときは、どんなところに気を使うんですか?

「多分、今のリズムの話と同じ範囲のことだと思うんだけど、僕は弾くときには ”間” で勝負するんですよ。歌とかギターとかベースとかの ”間”、リズムの取り方ね。それで、同じボリュームでやっても ”間 を取ることで前に出て聴こえるっていうのがあってね、それがうまく絡んでるとポップな感じになるし、逆に絡んでないとうるさいだけになる」

---音の選び方はどうなんですか?

「僕は、あんまり元を残さないでやってて、物覚え悪いから全然覚えない。それで、その日の雰囲気とか身体の調子で音色作るんですね。だから毎回違うんです。調子悪いときは、音も調子悪い音になるんです(笑)。シンセも、僕はプロフェットがいつもメインになってて、デジタル・シンセは付け加える程度です」

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