86年のラストをかざる昨年の12月21日、PINKのコンサートが渋谷公会堂で行われた。昨年は、ロンドンで初のライブを行うなど海外への進出も開始した彼らだが、87年に入ってさっそく3枚目のアルバム『PSYCHO-DELICIOUS』(1月28日発売)をリリース。今年は、勢いにのるPINKのより大きな活躍を期待したい。

オープニングのイントロが鳴った瞬間、客席は総立ちに

86年は何かと動きの激しかったPINKのことだもの、年末の忙しい時期だってへっちゃら、期待して12月21日、渋谷公会堂へ行ったのだ。

3枚目のアルバム『PSYCHO-DELICIOUS』と同タイトルの、このツアー、当然のごとく、アルバムからの曲からオープニング。その「BODY AND SOUL」のイントロが始まった途端、客席は総立ち。これは今までのPINKのコンサートでは初めての現象、それだけバンドサウンドに対するファンの反応が密接になった感じだ。

PINKのサウンドというのは実際、いろんな要素が見えかくれして、良く言えばバラエティに富んでいるんだけれども、そえがそのまま受け入れられてはいなかったんじゃないかって印象がコンサートにはあった。それが今回のコンサートでは解決、ストレートに迫ってくる。もちろん、ダンサブルなサウンドはPINKが最も得意とするところ、最初から客席の連中を踊らせてしまったことは言うまでもない。光の中に浮かび上がったメンバー達は、全員黒っぽいコスチュームに身を包んでいるけれども、その印象は、むしろあらゆる色を感じさせてくれる。

今、東京のモダーン・ミュージック・シーンを仕掛けている先導者だけあって、その演奏能力には申し分のないPINKのメンバー達だがロックバンドにとって、本当に必要なのは演奏能力というよりもバンド自体の持つ色気なんだと思う。3枚目のアルバムを完成したことによって、確かに彼等はスケールが大きくなった。”歌のしめる比重が大きくなって、エモーショナルな表現に深みが出てきたこと、これがまずあげられる。ソングライターでもある福岡のボーカルが新曲のみならず、前のアルバムでも一段と良く聴こえる。シングル・カットされた「KEEP YOUR VIEW」は会場の空気を一変させてしまうほど美しい。PINKのサウンドにとって”歌”が、その輝きを増しているのは「PRIVATE STORY」の途中から、ボーカルで吉田美奈子がゲスト参加したことによっても明らか。作詞家としての活動の方が現在では多い(自主制作でゴスペル集のCDが発売されているが)吉田美奈子だが、彼女のエモーショナルなボーカルが加わって、どれだけそのサウンド、カラーが変わったことか。吉田美奈子の持ち歌「ALCOHOLLER」では余裕のラップ、トウースティングも聴かれ、会場内はホットでフレンドリーな雰囲気に。

今回のツアーから、病気で休養中の渋谷に代わり、ギタリストに元マリノの大谷レイブンが参加しているが、この大胆とも思える組み合わせは、他の血を導入することにより混血の美しさをアンサンブルに求めたPINKの方法論によるところなのだろう。

客席をひきずりこむステージングがPINKの未来を予感させた

日本のロックバンドの中でもPINKは今、独自の位置にいる。規格化したバンドの多い中で彼等の柔軟な遊び心は非常に貴重なものだ。メンバーそれぞれが全く異なる個性を主張していながら、一体となった時に生み出される、計算されたもの以上のもの。そのエネルギーが常に新しい音楽シーンを切り開いていくのだと思う。バンドがいつだって面白いのは、そういうことなのだ。そこに”人間”が存在しなくては面白いものが生まれるはずはない。ファンクを基盤としたダンスサウンドとSF的なスケールも感じさせるバラード、そのいずれもPINK独自の美意識に支えられている。言葉で言うところのメッセージではなく、聴く人に伝えるものがライブにおいて、最大限に伝えられる、そんなロックバンドにPINKは成長している。そう、現在進行形という形で。

この日のコンサートは、最後にはキーボードのホッピー神山が、大きな地球のビーチボール(?)を持ち出して、ステージで遊び回ったり、とメンバーがそれぞれのポジションを離れてノリまくる、といった盛り上がりようで、もちろん客席もステージ同様、ホットになったわけだが、これほどPINKの感情の波が、客席と一致するとは、私も正直言って思わなかった。ダンスフリークと化したファンも、そのことを感じたに違いない。

これから、PINKがもっと大きなバンドになりそうな予感、実感と言った方が的確なのだが、それを感覚と体の両方で受けとめられたコンサートだった。

(文/藤野ともね)

「TECHII」1987年3月号

※サイト「TECHNOLOGYPOPS π3.14」様より、貴重な記事データをご提供いただきました。