本誌ではしばらくご無沙汰していたホッピー(ファンのみなさんゴメン!)。PINKのファイナル・ライブ終了後も、布袋バンドのツアーなどで活躍を続けている。一瞬音を聴いただけですぐに彼だとわかる(これはスゴイことですヨ、ホント)音を持つホッピーの、ポジティブな近況報告であります。

 

4~5年ブランクをおいて集まりたくなったらまた・・・

---渋公はどうでしたか?

「あれねエ、もうライブは最後だっていうことでやったでしょ。今までのライブだと、個人個人いろんな思惑やらこだわりがあって、ここ1~2年なかなか歯車が合いづらいライブをやってたんですけど、こりゃあ”段取り”かなって思われるようなのが多かったですからね。今回はホント、みんな開き直ったんですよ。別にそこまでこだわる必要はない。これで最後だったら楽しくやろうっていうんでね。別に『楽しくやろうネ』って言ったわけじゃないけど、もうこうなったら関係ないやっていうことでね。東京は1日めだったんでちょっと硬かったんですけどね。なにしろ曲も多いし段取りもけっこうあるんで。だから大阪の1日めってのが一番良かったんですよね。良かったっていうのは、演奏がすごいフリーでトリッキーだったから。アドリブで構成できるっていうのは、PINKでは今までほとんどなかったんでね」

---けっこうカッチリ?

「東京はカッチリしてたんだけど、そのカッチリが全然なくなったライブをしたから。で大阪の2日め、きのうのおもしろかったからもう1回やろうと思ったら、失敗したっていうね」

---(爆笑)。

「うん、やっぱりあれは自然にやんなきゃいけないなっていうね。ウケねらってやっちゃうとこれは失敗かな、と。次に何が来るぞっていうのは、あんまり思い浮かべてやんない方がいいような気がしましたね」

---まるっきりのセッションで?

「そうそう。だからやってておもしろかったですよね。でも、こんなことだったら長く続ければなんていうのは、思うでしょうという風によく言われるんだけど、でも、これが最後だと思うからできるわけで、このまま続けようと思ったらそういうことはできないわけでね。だからまあ、解散っていう形をとっているわけじゃないから、レコードも出るしね。ライブをやんなくて、活動もちょっと止まるかもしれないけど、また4~5年でもブランクをおいて、集まりたくなったら集まって、レコード作ってライブをやるっていうのはすごくイイと思うし。ムリにね、予定のスケジュールをこなすっていうのだとPINKってのは良くないみたいですね」

---お客さんの盛り上がりもすごかった。

「あれも、最後だからっていうのがあるからこそああなんですよ。もしそうだったら、最初からライブに来るのにああいう気構えで来いよって言いたいですね。始めっからああだったらこっちも態度は違うのになっていう。ホント失礼しちゃう」

---(爆笑)。

「まあ、そんなこと言っちゃうと来てくれた人は怒っちゃうけど。まあその、僕らがラフにやったからお客さんもそれを受け止めたんだと思うし。今回のライブは、PINKの中でもツバキ時代以来のけっこう印象に残るライブの1つかなと思ってるんですけどね。

---PINKのニュー・アルバムは?

「まだ終わってないみたいですよ。エンチャンのやる分が終わってないみたいだから。僕とか岡野クンのはもうとっくに終わっちゃって、いつでも出せるようにもう揃ってるんですけどね」

---ホッピーさんのレコーディングはすぐ終わった?

「スグですよ。僕は、布袋クンので行ってたロンドンから、PINKのレコーディングっていうことで引き戻されて。帰って来てすぐ、オケを2日くらいで録って、ダビングを含めてそのぐらいでやって。詞を作って歌入れて、T.D.も2日でやったから、僕のはけっこう一番早く上がっちゃったんです。1曲はもう『CYBER』の時にオケを録ってて、それにダビング直してT.D.したから、それはリズム録りがないから楽だったんです。けっこうスルスルスルっといって」

---どんな感じですか?

「エンチャンのはまだ聴かしてくれないからわかんないんですけど、僕のは、今回はディレクターからポップな作品を作れって言われたんで、じゃポップなのやろうかなと思って、僕のは全部ポップです。『CYBER』で入んなくて今度入れてるのもポップだし。だから実験的なことはしてないけど、ただ、新しい2曲の中の1曲のミディアム・スローみたいな曲は、僕が詞を書いてるんですけど、それはサウンドじゃなくて詞の方で言いたいことがあって。PINKに対してとか、自分に対してとか、あといろんな世界の人々に対しての、今時点での僕の気持ちっていうのをはき出したと思うんですね。けっこうスッキリしたなっていうくらい。元々は、今年NICOが死んだでしょ。僕は彼女すごい好きだったから、彼女の死とかが元になって詞を作ったんですよね。彼女の生き様とかもね。ロック史上に残るものではないけど、ここ20年間に存在したロックの裏っ側の生き様が出ている人だなと思って」

 

PINKには意図ってない 好き勝手にやってるっていうネ

---「ファイナル・ミックス」のアルバムに関しては?

「これはディレクターの佐々さんが、1人でガンバッテ曲順決めて。元々、1年前ぐらいに業界用に出した『プレジャー』っていうのがあったんですけど、それと曲順はほとんど一緒で。でもあんまりそれと一緒だとバチが当たるっていうとこで佐々さんも四苦八苦して、ロンドンで3曲ミックス直してきたっていう。ま、どっちみちリミックスですからね。メンバー立ち会わなくてもいいんですよね。曲をバラバラにするのがリミックスのいいところだから。まあでも、そういう場には居たいなっていうか、いちおうそのリミックスをするエンジニアには1つ菓子折りでも持ってってあいさつの1つもというのはありますよねェ、普通ねェ」

---エンジニア3人クレジットされてますよね?

「あの「TRAVELLER」とか「SHADOW PARADISE」とかはスティーヴ・ナイがやった12インチのやつで、ティム・ハントが今回の謎のリミックスって呼ばれてるヤツ。それが「TOKYO JOY」とか「MACHINE GUN HEART」とか、そんなところだったかな、あとはこっちで寺田さんがやってるやつなんですよね」

---PINKを振り返ってみると?

「ひとことでは言い表せないのがPINKだったと思うんですよね。そこがおもしろかったけど、でもよっぽどの音楽通でないとなかなか把みどころはないかもしれないですよね。そこが弱点だったかもしれないけど、そういうバンドって日本には少ない、少ないっていうか皆無だしね。あんまりヤラシイ意図っていうのはないんですよ。好き勝手やってるっていう。本来バンドがあるべき姿をけっこう露骨に出したバンドだと思いますけどね、PINKっていうのは。ホントに何事にも前向きに、アグレッシブな気持ちで作業しなきゃいけないっていうのをまず第一に置いてね、売れ線には絶対に向かわないし。わかんないヤツは別に来るな、聴かなくてイイっていうね。で、全員がおんなじ方向を向いていないっていうのがまたおもしろい、だから、1つの曲を全員で取りかかると、いろんな1人1人の音楽ベクトルがけっこうぶつかりながら混じるから、始めに頭で想像したものには絶対ならないですね。やってて新たな発見みたいなのがね、けっこう楽しいですよね。でもそれが度をすぎるとケンカになるんだけど。テメエが入り込んで来たからこんな変なんなったとかね。やっぱり、みんな仲良しすぎますよね、日本のバンドは。自分の主張っていうのがみんなあんまりないですよね」

---ずっとやってきて、お互いの手の内が見えてきちゃうなんてことは?

「いやね、こういうのが好きでこういうやり方するなっていうのはだいぶ前からわかってるんだけど、あまりお互いコイツはどういうヤツだなんて深く話すの嫌だから、そういう話は普段しないんですよ。だからわかんないというね、お互いあんまり。人間性も、未だにつかみづらい。逆に、お互いを知るのを避けてるっていうね、なるべくそれだけには触れないように触れないように。触れると、寝られなくなりそうだっていう、そういうところですね、やっぱり。だから、好き勝手にラフにやって今まで楽しんできたわけだから、そういうところで、みんな集まった時に楽しいっていう気持ちがなかなか出にくくなった時には、今みたいにちょっとブレイクをせざるを得ないっていう感じだと思うんですよね。たまに集まればいいと思うんですよ。でもバンドってなるとね、プロジェクトじゃないからどうしても頻繁に会わなきゃいけないし、頻繁に同じ作業をしなきゃならないから、そうなるとPINKみたいなのは煮つまってくるんだと思いますね。でも、事務所としてもレコード会社としても、それじゃ困るっていうね。まあPINKなんか自由にやらしてもらった方だから、そのへんは感謝しなきゃいけないし、自由にやれたからこそ、僕ら1人1人のキャラクターが、気に入ってくれる人たちにわかってもらえたような気が、僕はするんですよね」

---今後の活動予定は?

「またバンド形式のものはやりたいんですけど、それは今、練ってる最中です」

---下山さんとかと?

「うん、下山とはやると思いますよ。あと、今ちょうどボーカルとかを募集しているような段階です」

「キーボードマガジン」1989年1月号掲載

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