「午前十時の映画祭」という過去の名作映画を1年に渡って上映するプログラムがある。
その2023年度ラインナップの中にあるフランス映画「愛と哀しみのボレロ」(1981年)を見た。公開当時に見て以来のことだ。

1980年代の前半は「愛と〇〇の◆◆」というタイトルの映画が多かったし、やたら「女性映画」という言葉を目にした記憶がある。恋愛ものを中心に、一般的に女子受けしそうなジャンルの映画をそのように呼んでいた印象。
私の記憶に残っている「愛と〇〇の◆◆」映画は・・・・

「愛と喝采の日々」(1977年)
原題「The Turning Point」(ターニングポイント)
これはバレエダンサーとしてのキャリアか、結婚して家庭に入るかを選択せざるを得なかった二人の女性の物語で、邦題は内容を反映している。

「愛と哀しみのボレロ」(1981年)
原題「LES UNS ET LES AUTRES」
ドイツの指揮者、アメリカの作曲家、ソ連のバレエダンサー、フランスの歌手という4人の芸術家たちを軸に、1930年代から80年代にかけて2世代に渡る波瀾に満ちた人生が描かれる。
フランス語の原題は「こちらとあちら」 「一方と他方」 等の意味になるらしいが、邦題を付けるのが難しい。クライマックスが「ボレロ」のダンスシーンなので、この題名はありだろう。

「愛と青春の旅立ち」(1982年)
原題「An Officer and a Gentleman」(士官と紳士)
恋愛も描かれているが、いいかげんな生き方をしてきた男が海軍でしごかれて一人前の男になるストーリーで、このタイトルでは軽すぎる。決して甘ったるいだけの青春映画ではないのだが。

「愛と追憶の日々」(1983年)
原題「Terms of Endearment」(darling,dear,sweeite,honeyなどの愛称の意)
母と娘の物語。既に「愛と〇〇の・・・」が食傷気味でインパクトが弱い。アカデミー賞の作品賞を受賞している映画だが、内容もぼんやりとしか覚えていない。

「愛と哀しみの果て」(1985年)
原題「Out of Africa」(アフリカの果て)
タイトルを聞いて「またこの路線か・・・」とうんざり。原題の方が印象に残る。映画自体もあまり思い出せない。


 

話が飛ぶが、岡野ハジメがインタビュー記事「そしてPINKは4thアルバムに突入した」の中で、「結局、今の日本の音楽ってさ、女子供のものでしょ?別に子供や女性をバカにしているわけじゃなくてね。」と語っている箇所がある。誤解を招きそうな表現だが、彼が言いたいことは分かるような気がする。
PINKのシングルが「Keep Your View」や「TRAVELLER」になったのは、ゆったりしたバラード系の方が、いわゆる女子に受ける(=ヒットにつながる)という業界のパターンに当てはめられたからだろう。
先に書いた映画のタイトル「愛と〇〇の・・・」も同じこと。「女子供」をターゲットにしていたから、「愛」を付けときゃ女子供が映画館に来るだろうーーという図式があったように思う。

アルファムーンに移籍してからのPINKのシングルカット曲は、無難な路線というか「攻めてないなぁ・・・」と感じるものが多かった。
「TRAVELLER」リリース時のインタビュー記事「不可解な”TRAVELLER”達」を読むと、どうもエンちゃんの歯切れが悪い。メンバーが納得した選曲だったとは想像し難い。B面もスローな「SHADOW PARADISE」だし。妥協せざるを得なかったところもあっただろうし、随分悔しい思いもしただろう。
「Keep Your View」については、「怒涛のフィジカル・ポップを目指して」の中でホッピーが「これがバンド・イメージみたいに思われるのは、僕は嫌です」「・・・男のバラードには女が買い手になるわけだから・・・」という発言がある。また岡野ハジメも「夢に妥協できない正直者」の中で、「ああいうのは嫌いです」と明言している。

メンバーがやりたいこと&ファンが望むものと、レコード会社が推し進めたい路線に明らかにズレがあった。


話が映画のタイトルから飛び過ぎてまとまらなくなってしまった。
女子供ターゲットを徹底的に極めた戦略の結果が、ジャニーズやK-POPの隆盛だったろう。