ベーシストは責任重い!!

―――ところで、ベースを弾きながら唄うってことはむずかしいんですか?

岡野 ハッキリ言ってムズカシイ。

小嶋 ムズカシイ。特にノリが違う時。こっちはドースタッドスタってやってるのに、タラリラタラリラっていうコーラスとかいれなきゃいけないとね、どっちかがやっぱりね、どっちかに合っちゃうの、口にベースがとか・・・・・。

岡野 歌とおんなじになっちゃう(爆笑)。

小嶋 私もそうなの!(爆笑)

岡野 タラリラ~♬(笑)特にモニターがねベースの音、結構でかく返すから自分でつられちゃって情けなくなってくる(笑)。

小嶋 私だってイジメられてるもの、ちゃんとコーラスやるようにって。

岡野 だからコーラスの時はなるべくルートにして下さいって。

小嶋 そうそう(笑)。

岡野 5度かルートにして下さいって(笑)。どちらかというと、やっぱり昔のポップスの人とかの方がウマイんじゃない?

小嶋 ポール・マッカートニーとかねぇ・・・。

岡野 うん、こう弾きながらフツウに歌ってるじゃない。で、けっこう年輩のミュージシャンでもうまい人多いじゃない。普通の簡単なベースでもムズカシイんだよ、歌って。
その点、キャロルの矢沢永ちゃんはうまかったね(笑)。

小嶋 ムズカシイ・・・・・。いまだにライブで私がコーラスに参加できないってあるもの、何回練習してもダメで。

岡野 歌の方行っちゃうとベースめちゃくちゃになっちゃうとか(笑)。

小嶋 そうそう。”どうしてギターの人はできるのにベースは普通にできないの?”って言われる(笑)。

岡野 ギターはできるよ!(笑)

小嶋 できるよねー(笑)。でもでも、わからないわけ、それ、なかなかわかってもらえないのよ。

岡野 だってギターいなくなってもいいんだもの。

小嶋 うん、ネ!

岡野 とりあえず曲は前に進むでしょ(笑)。

小嶋 だって、ベースが止まっちゃったらさ曲が止まっちゃうもんね。

岡野 ヤバイよねー!

小嶋 だからドラムだけになるところとか、なるべく多くしようと思って、その時は思いっきり歌ってる。(笑)

 

―――岡野さんの写真のベースは?

岡野 あれはですね、今をさかのぼること、もう6、7年前にいろいろ改造しまくってて、売ってる楽器がとにかく気に入らなかったのね全然。何か今ひとつ気に入らなくて、結局こりゃ自分で作ろうってことになってね、グレコのね5Bのボディだけをイシバシのパーツ屋さんで1万6千円で買ってきて、それをノコギリでガリガリ切って、ピックアップをヤマハに付け換えて、で、自分で作ったんですよ。

―――小嶋さんはどんなベースを?

小嶋 私は今ライブで使ってるのは、写真の白いヤツ。ライブ・レコーディングの時もアレで。あれはねファンの人が作ってくれたの。何か楽器工房に努めてる人でね、送ってきたのね、事務所に。で、弾いてみたら、それまでアリアのマイクをEMGに付け換えたやつ使ってたんだけど、それより何か気に入っちゃって、私、結構ルックス重視なところで、あれキレイだなと思って。でも今「理想のベース捜し」っていうのをやってて、やっぱり内の、気に入ったのが。

―――さてさて、この辺でまとめましょうか。

岡野 考えてみるとベーシストって色々と、反動あるよねー。

小嶋 あるよねー。

岡野 もういーよー俺は(笑)って。

小嶋 何だかんだ言ってツライ時結構あるし。まあ、弾き始めれば、ライブで弾いてれば楽しいけど。

岡野 弾くのもイヤだ(笑)ってのはあるよね。

小嶋 責任が重いって感じはあるよね。

岡野 ベーシスト、責任重い、ってのが、無責任な人はやっちゃダメ(笑)。

 

いや―――――――――。そうかあ!ベースって結構たいへんなんだな。ふむふむ、やっぱりベース弾きながら唄うのってむずかしいんだな。知らなかったねぇ。為になるねぇ。次回は何のバトルにするかな。誰と誰に二次元バトルしてほしいかリクエストしてくり。あ、わかってると思うけど、同じ楽器の人じゃなきゃだめだぞっ!

小嶋さちほ PROFILE
’58年12月26日生、女性ロックバンドの草分けともいえるZELDAのリーダーであり、ベーシスト。
自主制作盤「アシュラ」を皮切りに、日本フォノグラムより2枚のアルバムをリリース。’85年CBSソニーに移籍、名盤の誉れ高い「空色帽子の日」を発表。以降も順調な活動を続け、バンド以外にもロック評論、エッセイ等を数多く手掛けている。
10月21日発売予定の6枚目のアルバム制作に忙しい日々を送っている。
岡野ハジメ PROFILE
’56年11月26日生、スペースサーカス、東京ブラボーを経て1983年PINK結成に参画。強者集団PINKのベーシストとしてはもちろん、最近はプロデューサーとしても活躍。ちわきまゆみ、デル・ジベット、DEAD END等のアルバムプロデュースを手掛け、10月末にサロン・ミュージックの吉田仁とのユニットのアルバム「クアドロフォニクス」をリリースする。
PINK最後のライブとなる11月5日の渋谷公会堂を間近に控えた31才。
写真/小野寺俊晴  構成/ ON STAGE編集部

「ON STAGE 」1988年10月号掲載