強力なリズム・セクションからはき出されるビートは壁にぶつかり、床にぶつかり四散する。飛び散ったビートは圧搾されたボーカルと絡み、お祭り状になって体にのめり込んでくる。けたはずれの躍動感。言葉が急に飛ぶ。つられて表情も飛んで行く。この歯切れ良さが、PINKの魅力!
去る6月27日に行われたモダン・コレクションVol.5におけるPINKのライヴ。ステージに登場した彼らはのっけから明るい。ステージにしゃがみ込んで最前列の客と話をするボーカル。客「今夜は踊ろうぜ」ボ「おお、いいぜ」だがマイクには既にエコーがかかっていて、会場にこだまする。「イイぜイイぜイイぜイイぜ・・・」なんという奴らだ。しかし、このこだわりの無さが彼らの素晴らしいダンス・ビートを支えているのかも知れない・・・。
という訳で今年注目のグループ、PINKにスポットを当てることにいたしましょう。先月21日にエピックソニーから発売されたシングル「砂の雫」を聞いて”こりゃ凄い!”と思われた方も大勢いらっしゃるでしょう。まだ聴いたことが無いという人も、実はあなたが知らないだけで既に耳にしているかも知れません。というのはこの「砂の雫」、フジ・カセットのCMソングとしてオン・エアされていますので。また、彼らはこの他にも色々なCMに曲を提供していて、ざっと上げるとUCCコーヒー、日産ガゼール、マクドナルド、求人タイムス・・・ときりがない。
ではまずメンバーから紹介して行きましょう。
ピンクのリーダーはボーカル/作曲の福岡裕。以前近田春夫&ビブラトーンズに在籍し、パーカッションも担当していました。声域の広さ、高域倍音を多く含んだ声質、大きなパワーには定評があります。ベースを担当するのは岡野はじめ。スペース・サーカス、サロンミュージックを経てピンクに参加。ドラムの矢壁カメオとのコンビネーションは強力。キーボードのホッピー神山は爆風銃、HERO、近田春夫&ビブラトーンズを経てピンクへ。モジュレーションやベンダーを駆使したフレーズが印象的。音楽家の父の影響を受けてこの道に入ったパーカッションのSTEVE衛藤は数々のアマチュア・バンドに参加。ドラムの矢壁カメオは近田春夫&ビブラトーンズからピンクへ。昨年後半よりパーマネントメンバーとして参加したのがギターの渋谷ヒデヒロ。伸びのあるソロと、パーカッシヴなカッティングを絶妙に使い分けます。
さて、この6人で編成されたピンクは昨年3月、目黒鹿鳴館にてデビュー。その後、S-KEN、戸川純&ヤプーズ、小林克也&No1バンド、サンディ&サンセッツ等との共演を経て現在に至っています。ライヴには定評のあるピンクですが、これから秋口にかけて暫くお休みで少し淋しい気もしますが、9月には12インチ・シングル(ひょっとしたらLPになるかも)をリリースする予定。現在のところ「砂の雫」(英語バージョン)、「ムーン・ストラック・パーティ」、「ZEAN・ZEAN」の3曲が仕上がっていまして、中でも「ZEAN・ZEAN」はライヴで得意としているナンバーだけに、最高のノリを持っています。チョチョチョチョ・・・という高速ボーカルかけ合いが刺激的。期待していて下さいね!
「Player」1984年9月号記事