その時、みんながステージにあがりたくなった!
やっぱり、日比谷野外音楽堂でのコンサートは、スカッと晴れた青空の日が気持ちいい。もちろん、大雨の中で見るコンサートの雰囲気だって、なかなか捨てがたいものはある。だけど、それもコンサートの出演者しだいってことだ。
6月8日。あぶなくツユに突入する直前のこの日は、まさに絶好の野音日より。さすがにアン・ルイスの人徳はスゴイ。などとへんなことに感心しながら、日比谷公園を抜けて、野音の入り口にたどりついてビックリ! こんなにたくさんの人が、この狭い野音に入りきれるのだろうかと疑ってしまったほど、人の波・・・。
どうもビール片手に楽しもうという人が、絶好の天気に誘われて、フラフラと野音に集まってきたようだ。またもやアン・ルイスの人徳に感心しているうちに、ステージには、オープニングを務めるアースシェイカーが登場。
1月の武道館以来、東京で彼らのステージが見られるのはひさしぶりのこと。スッと肩の力を抜いてリラックスしたプレイは、ビールをグッとおいしくしてくれた。
そこに荻野目洋子が乱入。なんとマーシーとデュエットで、シェイカーの「ラジオ・マジック」を歌い始めたから、もうタイヘン。観客席はいっきにお祭り気分に突入してしまった。
アースシェイカー&荻野目洋子に続いて、ステージにはPINKが登場。あいかわらず、鋭い切れ味のサウンドを聴かせてくれているうちに、ステージに乱入してきたのが、あの近田春夫。
お祭り気分が最高に盛り上がったのは、続いてステージに姿を見せた古館伊知郎とアン・ルイスが司会で幕を開けた、その名も「夜のロック・スタジオ」のコーナーだ。
アン・ルイスのバック・バンドであるPINXをバックにして、モッズの森山達也がステージに姿を見せた。アンにキスしようとせまる森山、逃げるアン。思わず、「そこだ!やっちまえ!!」と叫びそうになるほど、気分はハイ&ドライ。
森山達也に続いて、湯江健幸が観客に紹介される。アイドルとしてデビューしたせいか、はたまた若さユエか、盛り上がる野音の観客を前にして、ドギマギしたようすの彼に、アンが優しく笑いかける。”あぁ、人徳・・・・・・”などと、アッ、しつこいな。
というところで、シブがき隊のモッくんが登場。2番手にはフッくんが登場したわけだが、そこにサンプラザ中野が参加したから、タマラナイ。フッくんとサンちゃんの軽妙なノリに、野音は「笑っていいとも」の新宿アルタと化してしまう。
そしてヤッくんが登場。こうなったら、やる時はやります、とばかりに「スシ食いねェ!」が爆発!!
一時的な頂点に達したステージには、シブがき隊に代わってBOØWYが登場。やはり、今いちばんノッているバンドだけに、エネルギッシュでワイルドなステージングが、ストレートに体を撃つ。
BOØWYのステージ後半には、吉川晃司が参加して、デヴィッド・ボウイの「サフラジェット・シティ」や、ミック・ジャガーとボウイのデュエットで知られる「ダンシング・イン・ザ・ストリート」が演奏されたのだ。
BOØWYと吉川晃司が、熱狂を残して去っていったステージに現われたのは、なんと、ウルトラマンをヴォーカリストにしたウルトラ兄弟と、カネゴン、バルタン星人たちのバンドだったのだ、ハハハハ。
ちなみに、ウルトラマンの「フォッ」とか「ジェイッ!」というかけ声は、ステージそでにいたアクションの大谷ケイイチが担当。
ウルトラマン・バンドのアトラクションからバトン・タッチしたのが、この日のメインともいうべき、ロック・セッション。
高橋よしろう(B,Vo)、うじきつよし(G,Vo)、織田哲郎(Vo,Ds)、チャー(G,Vo)、忌野清志郎(Vo)、北島健二(G)といったミュージシャンが次から次へとステージに登場し、70年代ロックの代表曲をプレイしていく。
とくに圧巻だったのが、チャーと北島健二のツイン・ギターによる、クリームの「クロス・ロード」と、清志郎が歌った「サマータイム・ブルース」とストーンズの「ルビー・チューズデイ」。
アンコールには全員でトゥイステッド・シスターの「アイ・ウォナ・ロック」を大合唱。アンが北島健二にキスしちゃったり、ホント、サイコーにハッピー!!
ANN CALL演奏曲目
●アースシェイカー●
①モア ②ざわめく時へと ③ウイスキー&ウーマン ④T-O-K-Y-O ⑤カモン
with 荻野目洋子
①ラジオ・マジック ②ダンス・ビートは夜明けまで
with 荻野目洋子&アン・ルイス
①ダンシング・ヒーロー ②イン・プレジャー
●PINK●
①Don’t Stop Passengers ②光の子 ③日蝕譚 ④砂の雫 ⑤Young Genius ⑥Zean Zean
with 近田春夫
①マスコミュニケーション・ブレイクダウン ②金曜日の天使
●夜のロック・スタジオ●
司会:古館伊知郎&アン・ルイス 演奏:PINX
①フラッシュ・ザ・ナイト(森山達也) ②ロックン・ロール・メドレー ③涙のLove Somebody(湯江健幸) ④昭和の恋の物語(古館伊知郎) ⑤17日目の孤独(本木雅弘) ⑥フックンの頭脳改革(布川敏和&サンプラザ中野) ⑦Like A Wolf(薬丸裕英) ⑧スシ食いねェ!(シブがき隊)
●BOØWY●
①Image Down ②Give It To Me ③Justy ④Baby Action ⑤Bad Feeling ⑥Dreamin’ ⑦Honky Tonky Crazy ⑧No!New York
with 吉川晃司
⑨サフラジェット・シティ ⑩Label of Complex ⑪キャンドルの瞳 ⑫Dancing in The Street
●ウルトラ・ギター・バトル●
①ハイウェイ・スター ②ブラック・ナイト(高橋ヨシロウ) ③Jail House Rock ④Goin’Down(織田哲郎) ⑤サンシャイン・オブ・ユア・ラブ ⑥クロス・ロード(チャー&北島健二) ⑦C’mon Everybody ⑧Rockn’ Roll Hoochie Koo(うじきつよし) ⑨ルビー・チューズデイ ⑩S.F. ⑪サマータイム・ブルース(忌野清志郎) ⑫六本木心中(アン・ルイス)
●ANN CALL●
I Wanna Rock(全員)
(取材:大野祥之、編集部/撮影:梶木則男)
「ロッキンf」1986年8月号掲載
【関連記事】
>>日本の80年代にはアン・ルイスがいた!「六本木心中」からの「遊女」で最高潮!(Re:minder)