85年までに現れたバンドたち(続き)

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同じく第一印象から脱皮して、一気に切り込んできそうなのは、モッズ。ひとつのバントとしてみても、今の彼らの音楽とステージはエンターテイメントの水準が高い。この隠されていた魅力を満載したシングルやツアーが展開されれば、ぼくらは新しい宝物を得ることになる。
完全にそのキャラクターで人気を確立したのは爆風スランプ。バンドの楽しさのひとつの極がここにある。できるなら今年、楽曲としてパワーのあるナンバーを発表できれば、さらに大きくなるだろう。
米米クラブはユニークなステージ・パフォーマンスでバンド・オブ・ニュー・エイジを彩ってくれる。バンドがレコードというメディアだけのものでないという認識を強く打ち出すキッカケになりそうなグループだ。
くじら、キリング・タイム、ゴンザレス三上&チチ松村はゆうゆうとオリジナリティーを探索するバンドだ。どうしても均一化する傾向のある日本の音楽シーンの中で、彼らの存在は不気味に小気味よい。
同じく、自分たちの音楽衝動に素直で、かつクオリティーの高いサウンドを創造しているのは、リアル・フィッシュ、詩少年(SHI-SHONEN)、ピチカートⅤ、ワールド・スタンダードたちだ。日本のバンドに欠けがちなロングレンジでのサウンド作りとユーモアのセンスをたっぷり感じさせるやり口は、バンド・シーンを飛び出して新しいカウンター・カルチャーを造り出すパワーがある。

 

そしてこれからのバンドたち・・・

ニュー・エイジのバンドたちには問題がないわけではない。
たとえばラジオやTVで彼らの音楽が流れたり紹介されるワクは、非常に少ない。あるいはバンドの場合、機材や人数の多さなどからくるコストの問題で、長期間にわたるコンサート・ツアーによって大きくなっていくことは難しい。それに代わる方法としてビデオ・クリップやビデオ・コンサートなどがとられているわけだが、全面的な解決方法ではないことは確かだ。
また、これだけチャートの移り変わりが激しい中でバンドがバンドとして完成していく速度のゆっくりなことがマイナスになる側面もある。が、このペースがバンドの魅力でもあるので、周囲のスタッフの理解がソロ・アーチスト以上に必要なのだ。
音楽的な部分で言えば、バンドの音を具現化できるエンジニアが少ないこともあげられる。ノリをそこなうことなく、メンバーたちが交す音の会話をどう録音するか。しかしそのことも、バンド好きのエンジニアが以前よりも増えてきているので、好転の兆しがある。
もし、バンドのみならず、エンジニア、マネージャーなど周辺のスタッフに若くて新しい人材が現われれば、この”バンド・オブ・ニュー・エイジ”のムーブメントは音楽シーンにその根をおろすことだろう。

さて、86年、このシーンに登場するバンドを最後に紹介してみよう。
正確にはデビューは去年だが、今年その活躍がさらに本格化しそうなのが、デル・ジベット、アイリーン・フォーリーン、ザ・東南西北たちだ。耽美的なテーマを掲げるデル・ジベット、曲の良さを大切にするアイリーン・フォーリーンは、完成度を高めていくことだろう。若さとはイコールでないエネルギッシュな表現法を持って欲しいとも思う。反対にザ・東南西北は、あまりにも従順なイメージで、もう少し手応えが欲しい。ボーカルの久保田が逸材だけに、どこかで10代の手強さを感じたいものだ。
ガールズ・グループではコンセントピックスが最注目株だ。演奏力がとぼしいままデビューしてしまったが、昨年1年で見違えるほど成長した優れた作品創作能力と、歌唱力に加えて、サウンドにも迫力ある主張が出てきたので、セカンドLP『ハツミミ』でその評価は一変するだろう。
新グループでは、ストレートでダンサブルなロックのアップビート、モダンドールズ。シンプルでポップな音楽とステージが期待できるヒルビリー・バップス、キャディラック。とても素直な感情を10代とは思えないグレードの高いサウンドできかせるBe-Modernがいる。
またインディーズ・シーンから打って出たラフィン・ノーズやウィラードが、そのままの良さをキープしたままどんな音楽・ステージで楽しませてくれるか、期待できる。

もし、ぼくらがこのバンド・オブ・ニュー・エイジから、自分たちの世代にフィットした楽しさを得られるなら、それが音の仲間(レコパル)のサクセス・ストーリーなのだ。

バンド・オブ・ニュー・エイジを知るためのディスク

レベッカ 『REBECCAⅣ』
ストリートスライダーズ 『夢遊病』
BOØWY 『JUST A HERO』
PINK 『光の子』
バービーボーイズ 『Freebee』
TMネットワーク 『ナーバス』
エコーズ 『JACK』
爆風スランプ 『しあわせ』
米米クラブ 『シャリシャリズム』
くじら 『KAPPA』
ゴンザレス三上&チチ松村 『SUNDAY MARKET』
リアル・フィッシュ 『テナン』
SHI-SHONEN 『DO・DO・DO』
ピチカートⅤ 『イン・アクション』
ワールド・スタンダード 『ダブル・ハピネス』
デル・ジベット 『紫色の舞踏会』
アイリーン・フォーリーン 『プラスティック・ジェネレイション』
ザ・東南西北 『飛行少年』
コンセントピックス 『HA-TSU-MI-MI』

REPORT/平山雄一 扉PHOTO/川口裕之、広瀬雅敏

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「FMレコパル」1986年5号(2/24~3/9)掲載