大沢誉志幸、戸川純、太田裕美の影から踊り出た本格派バンド


元ビブラトーンズの福岡ユタカ(Vo)を中心に、矢壁アツノブ(Dr)、岡野はじめ(B)、ホッピー神山(Key)、渋谷ヒデヒロ(G)、スティーヴ衛藤(Per)の6人編成のPINKが待望のレコード・デビューをしたのは、’84年の6月。シングル『砂の雫』は、カセット・テープのCFイメージ曲にもなった。その超個性的でモダンなダンス・ビートは圧巻だった。これに続くのが映画「チ・ン・ピ・ラ」の『プライベート・ストーリー』。これはPINKが一つの要素として持つメロディアスな感覚をドラマチックに表現したものだった。

その後PINKは、エピック・ソニーからアルファ・ムーンへとレコード会社を移籍。現在は5月25日に発表予定のファースト・アルバム『PINK』(仮)をレコーディング中。それが終われば、大規模な全国ツアーも予定されている。

PINKの魅力は、なんといってもライブ感あふれる異常な乗りを持ったリズム。このあたり、さすが’83年に結成して以来、ライブを積極的に行ってきたバンドだけある。最近は結成直後のファンクの要素に加えて、’70年代のシンプルでファッショナブルなロンドン・ポップのエッセンスも加わり、華やかなロックのイメージを感じさせるようになってきた。何しろ各メンバーは、これまでもテクニシャンとして高く評価されてきた人間ばかり。とにかくそのサウンドは強烈だ。

そして、そのサウンドに乗る福岡ユタカの日本人離れしたリズム感とエネルギッシュなボーカルは、聴く者を圧倒すること受け合いだ。

PINKは、ある意味でYMOやムーンライダース以後の日本のロック・シーンで、新しい世代の音楽の流れを作る可能性さえ持つバンドだといえるだろう。

(文/山田道成、撮影/北川澄夫)

「ザ・ベストヒット」1985年掲載(号不明)