10月に渡英しロンドンでの初ギグを成功させ、12インチ・シングル「Soul Flight」を英ライム・レコードよりリリース、日本ではシングル「Keep Your View」がCFソングとして巷に流れたりと、このところ話題には事欠かないPINK。去年6月から9月にかけてレコーディングされた待望の3rdアルバム『PSYCHO-DELICIOUS』がいよいよ1月28日に発売された。
この3作目で、PINKの音はさらに深く成熟に向かっていることを実感させる。無駄な音は極力排し、一音一音がそこに在る意味を持つ、的を得たアンサンブル。それは充分に練られてシンプルでさえあり、彼らの研ぎすまされた音に対してのセンスが並みでないことを物語るものだ。そして本格的なロック・バンドとしての評価をますます強固にすると同時に、今まで以上にファン層を広げるきっかけとなり得るアルバムという気がする。それだけ今回は質の高い楽曲が多いし、現在までのPINKの幅広い魅力を凝縮し、わかりやすく整理された作品集といえるのではないだろうか。
2月24日から全国10カ所を回るツアー「PSYCHO-DELICIOUS Act2Ⅱ」を前にして、PINKの牽引者であるヴォーカルの福岡ユタカに話を聞いた。現在の日本及び以外の音楽状況と自分たちの位置を冷静に見きわめつつPINKの音楽に対しての確固たる自信をうかがわせる彼は、その音楽と同様、骨太の頼もしい存在に映った。

---今回は特に楽曲重視って気がするけど?

「前からそうだったけどね。本当マジで思うんだけど音楽聴く人の耳ってすごく低いと思うよ。巷でうけてるロック・バンドとかほとんどどうしようもない曲ばっかりでしょ。歌謡曲だって全然いい曲ないし。メロディの感覚とかどんどん貧弱になってると思う。質が落ちてるのに皆気づかない。今回のアルバムも、ある人にはやたらうけてるし、あるいはおとなしくなったねって人もいるし、当然いろんな聴き方されるんだけど。僕自身はハデでうるさいのってキライなのね(笑)。うるさい曲って意識的に作らないとできないし。生音がとにかく好きだからね。だから今回自分で力入ってていいなと思うのは静かな曲が多いね」

---今回も全曲福岡さんの作曲ですね。

「うーん。なんか”暗黙の前提”になっちゃってるね。メロディって事になるとゆずれない所が多いし。僕のメロディの良さとか、特に今回はいい曲が出来たし、皆その辺は認めてくれるから。やっぱり自分に合わないメロディは歌いたくないしね。声質もあるし。他のメンバーはどっちかというとコンポーザーというより、アレンジャーやプロデューサーの資質がある人が多いからね」
「今回は特にイメージ的に”風”とか”水”とか”流れ”とか、『自然』ってものが大きかった。僕はイメージ浮かべる時、ビルとかストリートとか絶対浮かんで来ないんです。やっぱり生まれ育った所が都市じゃないから、都会の喧噪がどうのとかってリアリティないんだよね」

そう言われてみれば、特に印象に残ったのは「Shadow Paradise」(B-1)や「Slip Into Fire」(B-3)といったスロー・ナンバーの美しさだった。それは東洋的な奥深さをたたえて、余白を活かした墨絵の風景を連想させるような抑制したアレンジが実に効いている。

「そうなんだよね!”Shadow—」なんて、もろそうだもん。トラック・ダウンの時とかも”これは墨絵なんだから、その感じで”って言ったし。自分が帰属する部分だし、東洋とかに対するアプローチって絶対これからもやっていきたいし、いちばん興味ある部分なんだよね。風とか水とか自然を表現する仕方も向こうの人とは全然違うと思うしね。似たような雰囲気はあっても本質的に違うというか。僕らには間(ま)の世界みたいなものがあるし」

その幽玄の世界と対照的なのは、最近はラッパーとして快気炎を上げる近田春夫が詞を提供したスピーディーな「Scanner」(A-5)だ。

「これは唯一都会っぽいという。いわゆる”ブレードランナー”的な世界だよね。近田さんともまたなんかやりたいなと思って。好きな人だからね。すごいビートが速いでしょ。そこに言葉を乗っけるってのがまずひとつのテーマ。この曲作った時のイメージは『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』って映画のイメージだった。SFでも大仰じゃなく、日常的にポンとあるSFというか。東京なんてもろそうだと思うんだ。例えば電話回線とか、目に見えない所から情報の網の目がジワジワ浸食してきてるでしょ。人間とそういう物との関り合いとか、その中での孤独感とかをSFでやったって感じ」

その(2)へ続く>>