かなり早いペースで作られたにもかかわらず、収録時間66分30秒というボリュームで完成したPINKの4thアルバム『CYBER』(10/28発売)。
とはいっても、かねてからの狙いとしてあった、音源のCDフル対応、を意識してのものだ。デジタル・レコーディング、デジタル・ミックス、デジタル・マスタリング、の条件を満たし、CDというソフトに完全に照準を合わせた、PINKの快挙と言えるだろう。
しかも、今回のアルバムから、新メンバーとして、元イミテーションの逆井オサム(g)が正式参加。今までのライヴでも、サポート・メンバーとして加わってはいたが、これでPINKの正式な一員となったわけだ。ライヴでもオナジミのシャープなカッティング、ハードなギター・サウンドが、PINKに新たな奥行きを加えることは、間違いない。
また、今回のアルバムでは、ソング・ライティングにほとんど全メンバーが参加。今まではほぼ全曲が福岡ユタカ、もしくはプラス、メンバーの誰かとの共作という形になっていた。それが今回は、かねてからライヴでフロント争いを続けているホッピー神山と岡野ハジメが曲を提供。逆井オサム、矢壁アツノブも、福岡ユタカとの共作でクレジット。
今までのアルバム全体の統一感を重視した作り方とは、やや趣きを異にしているのは、そういった各メンバーの個性を今まで以上に前面に出したからだろう。
しかし、結果としてPINKというバンドのスケールの大きさ、全体像が今まで以上にガッシリとした手応えで伝わる1枚となっている。
何といっても今回のコンセプトは、タイトルにもある通り”サイバー・パンク”。そして、テーマは”東京”だ。ここでちょっと”サイバー・パンク”を説明しておくと、昨年発売されるや否や、アッという間に話題を独占した、ウィリアム・ギブソンのSF小説『ニュー・ロマンサー』を形容するために登場した言葉だ。映画『ブレード・ランナー』や『未来世紀ブラジル』をそのまま活字の世界に再現させたようなスピード感と、エレクトロニクスを体に埋め込んで都市の雑踏を舞台に繰り広げられる、ジャンク・フレイバー満載の、ちょっとアメコミ的なアクション。そんなコンピューターのハードウェアと、人間の肉体性の融合が、今回のアルバム『CYBER』のコンセプトだ。
また、一切ゲストを加えていない、メンバーのみのフル・レコーディングも、聞きどころだ。
ジャパン・エイド、そして10/30からスタートする全国ツアーでさらにスケール・アップしていく、今後のPINKの動向は、日本のロック界の動向そのものでもある。
(注:CDでは1枚ですが、LPは2枚組3面、つまりD面に何も溝が刻まれない、という形式をとっています。)
(伏見浩之)

「Player」1987年11月号掲載