ムフフフ、現在着々と進行中のピンクのレコーディングは、話題がいっぱい。岡野ハジメ大先生のお話を聞きながら、私しゃ10月28日の発売が待ちきれない気分になってしもた。

話題その1。今回は基本的に全員が曲を書いている。これだけで、もう興味がズンズンとつのってしまう。集まった曲は、約20曲。その中から15~16曲を選んでレコーディングして、最終的にまたしぼりこむという方法をとっている。もち、自分の作った曲に関しては、その人がディレクションを行っている。
「だから、キャラクターはものすごく出るんじゃないかな。僕にしてもホッピーにしても、今まではピンクの中で楽器によってカラーを出すみたいなのが多かったし、評価もそういうところにあったと思うんです。それが、今回はサウンド的なとこも含めて自分でやっているんで、各々のキャラクターは露骨に出てると思う。今までのピンクになかった曲っていうのも、いっぱい入ってるな」

話題その2。ホッピーと岡野さんが、リード・ヴォーカルをとってる曲がある!岡野さんは若干照れくさそうに、話してくれたのだ。でも、これは聞きたい。歌入れの日に押しかけてでも聞きたいと思ったら、「もう、家のスタジオでやっちゃいました。恥ずかしいから(笑)」だって。残念。早く来い発売日。

すでにタイトルは決まっていて、『サイバー』。これに込められたテーマは、マジだ。
「サイバーパンクっていうSF用語みたいのがあるでしょ。『ブレード・ランナー』っていう映画が、サイバー・パンク映画の代表とされてるんだけどね。どんな映画かっていうと、『メトロポリス』や『モダン・タイムス』のように文明批判するんじゃなくて、そんな都市文明の中でも生きていかなきゃいけない。こんな機械に押し流されて人間の情のなくなった世界は壊れてしまえっていうんじゃなくて、そんな中でも生きていくっていう、カッコよさがテーマなの。で、今回のピンクのテーマも、東京というところに住んでいて、その東京を批判するんじゃなくて、批判ももちろんあるんだけど、でも東京が、都市が好きで、僕達はそこで生きていかなきゃいけないみたいな、そういうとこかな。だから詞にしても、そういうことを歌ってる曲もあるしね。『東京ジョイ』っていうタイトルの曲もあるし」

テーマのことになると、岡野さんの話は延々と続く。それが興味深い話で、こちらものめり込んでしまいそうになる。岡野さんを始めとしてピンクの連中って、クリエイターとしてアーティストとしてすんごくきちんとしたスタンスを持っていて、それでいて人間はすごくラフ。そこがたまんない魅力なのだ。
では、そのきどんないラフな性格の一面を見せた、ホッピーさんの話をひとつ。
「いつだったか、僕が疲れちゃって、遊びに行きたいと思って、ディレクターに東京タワーに行ってきていいですかっていったの。1時間ぐらいならいいよっていわれたんで、ホッピー行こうぜっていったら、ホッピーはダメだっていわれてね。そしたらホッピー怒っちゃってね。何で岡野君はいいのに、オレはダメなんだよ、こんなバンドやめてやる!!だって(笑)。机ドンとたたいて、目が本気なの」
念のために、こういう性格はホッピーさんだけじゃありません。大の男が、みんないいたい放題いっちゃうのが、ピンクのコミュニケーションなのだ。
「最近、マニアックであろうとホップであろうと、どっちでもいいなと思う。とにかく、自分が楽しむことが一番大切だなって」
そう、ピンクが楽しんで作れば、私達も楽しんで聴けるはず。感性を楽しみに待ってまっせ。

(レポート:カドノ・トツゲキ・エツコ)

「ARENA37℃」1987年9月号掲載