PINKというバンドはインタヴューが難しい。というのも、全員でインタヴューを受けたりすると、押しの強い個性を持つメンバーそれぞれが、勝手気ままなことを言い放つからで、これはさぞやレコーディングなどでもぶつかりあいが大変だろうと思っていた。
それが、新作『サイバー』(ムーン)では、これまでとはちょっと趣向を変え、メンバーそれぞれが曲を持ち寄り、かなり分業したレコーディングをしている。そして仕上がったアルバムは全14曲、LP1枚半分のヴォリューム(CDは1枚に収録)。岡野ハジメやホッピー神山がヴォーカルを取る曲もあって、バンドの持つレンジがまたひとつ拡がった印象だ。そこで、リーダー・シップを取って来た福岡ユタカに、そのアルバムの制作経緯から、ターニング・ポイントにありそうなPINKの今を聞き出してみようとした。

---今回、レコーディングはいつ頃からやっていたの?
「6月から。ホントは休みを取る予定だったんだけれども。レコード会社の方から、どうしても今、出したいという意向があって、じゃあ、もういっちょう頑張ってみるかなみたいなノリで始めた。それで、僕は3枚目でかなり力入れてやったし、休みの間にソロ活動をしようとそっちの方に思いを馳せてた人もいたから、今回はみんながワーッと参加して作るのが、いいと思ったんですよ」

---というのは、前作でひとつ区切りがついたという感じがあった?
「2年間で3枚作ろうということでやってきて、僕としては『サイコ・デリシャス』で、ひとつ確立できたって自負はありますね。ただ、それはPINKとしてじゃないっていうか、このアルバムはすごく福岡ユタカ的なものが強かったから」

---今回はレコーディングも分業が多かったそうだけれど?
「うん、僕がほとんどノー・タッチの曲もあるし、ホッピーがノー・タッチの曲もある。岡野くんがノー・タッチのもあるね。で、僕は人の曲歌ったのは久し振りだったから、それが面白かった。詞も曲も任して、ある程度受け身でやってみようと思ってね。そうすると、当然、今までの福岡ユタカとは矛盾するところも出てくるんだけれど」

---『サイコ・デリシャス』は、すごくメロディアスな曲が多かったでしょう。PINKの最初の頃のダイナミックなロック・バンドらしさっていう点では、期待を裏切るところもあったかもしれない。
「うーん、僕自身はロックっていうジャンルにこだわっていたところって、1枚目の頃からないんだけれどね。もちろん、僕も1枚目、2枚目の元気なロック・バンドらしさって好きだけれど、それだけじゃなくてね、自分自身のオリジナリティーっていうか、そういうものを一番求めているわけでしょ。メロディーにしても、詞にしても、サウンドにしてもね。ただ、それはすごく個性的な世界でね、もう頭の中で鳴っているから形にしたいって思うわけだけど、PINKはロック・バンドといえばロック・バンドだからね、僕のそういう部分とみんなとの間にズレが出てきたっていうところはあった」

---『サイバー』っていうタイトルはどこから出てきたの?
「今回プロデューサーに立てた笹さんから。でも、その言葉自体にすごくこだわってるわけじゃない。一番のテーマとしてあったのは東京ってとこかな」

---東京って具体的に言うと?
「東京ってもう来るところまで来ているじゃない。この2、3年の変化のスピードってすごいしね。それで、次は東京から何かが出て来るって言われ続けていて、まあ、実際にはロックとか、ストリートの文化とか、そういうのはすごくつまんない状況だと思うんだけれど、もっと大きな意味で僕は東京って来るところまで来た面白さがあるって思っているのね」

---音楽的にどうというより、経済状況とか、そういうところから見てね。
「そうそう、僕はいつもそういうところで見ているから。経済に限らず、テクノロジーのこととか、それはやっぱり”ブレード・ランナー”あたりから出て来た概念だけれど」

---僕が思うには、今、東京はすごい成金シティでしょう。発展しか知らずに来ているけれども、でも、一歩間違うと転落するところにいるとも思う。世界情勢のちょっとした変化で、ゲットーの様にもなれば、死んだ街になるかもしれない。
「そりゃあ、ボタンひとつでどうなるか分からない世の中だからね。原発ひとつでどうなるか分からないし、そういう意味でも、今、これだけ金持ちになっている時に、何にも自分達で誇れる文化を作り出していないっていうのがね。ヨーロッパなんか、今、経済的には駄目だけれど、でも文化はあるからしっかりしている。だからね、僕がオリジナリティーってことにすごくこだわるのもそこなんですよ。日本て、ロック・バンドはいろいろあっても、スタンダードとして残っていくものって全然ないでしょう。右から左に消費されていく音楽ばかりで」

---アルバムに戻るけれど、エンちゃんとしては今回は曲もかなりバンドのことを考えて書いたのかな?それとも、分業の分、自由にやった?
「それは考えて書いた。というか、この曲はバンドに合わないと思ったら、削ったり。今度また、1月くらいにソロのレコードを作ろうと思っているんですよ。そこではまた違うことをやると思うし」

---でも、今回面白かったのは、他のメンバーがヴォーカルを取った曲も、エンちゃんに歌い方似ている。
「不思議なもんで、長い間、一緒にいると似てるところは出てくるんじゃないですか。でも、人からそう言われたのは初めてだった。まあ、知らず知らずのうちに僕の歌い方に影響されてるっていうのもあるんじゃないかな。あと、PINKって、例えば、岡野くんはグラム好きだとか、福岡はエスニック担当だとか、誰は何担当だとか、そういうイメージあるかもしれないけれど、みんなそれだけの人じゃないしね。バンドの中でそっちの方面が得意っていうだけで、共通項はすごくある。だから、考えてみると、おかしいよね。それを無理やり同じオリの中に入って喧嘩しろみたいなバンドじゃないのかな、PINKって。これは外から見てると、無茶苦茶おかしいと思うなあ」

(文・高橋健太郎)