最新アルバム『光の子』で”ポップ”と”アーティスティック”を同一線上に並べてみせてくれたのがPINK。このLPを発火点に、86年は彼らのフォトン(光子)サウンドが日本中を席捲しそうだ。中心メンバーの福岡(vo)、岡野(b)の2人に話を聞いた。
評論家Aは「PINKはスゴ腕のバンド」だという。評論家Bは、彼らの音楽をどういうジャンルに位置づけるかで迷っている。さらに、評論家CからZまで、この6人組に対する意見は諸説プンプン、百人百色だ。でも、よーく考えてみると、何かを表現するためにはテクニックは不可欠だし、オリジナリティのある作品を作っていれば、既成のジャンルにおさまらないのもあたり前のことだ。
そうした”あたり前”のことを、左手にアーティスティック、右手にポップ、両手に花で続けていけるところに、PINKのスゴさがあるのだ。
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―――まず、新作『光の子』とデビュー・アルバムとの違いから聞かせてください。
福岡ユタカ(以下F)▼ デビュー作は”突破口”だったと思う。デビュー以前からいわれていた”PINK=スタジオ・ミュージシャンが作った手練のバンド”みたいなイメージと、自分たちの頭の中にあるバンドのイメージのズレに反発して、バーンと出したみたいな・・・。
岡野ハジメ(以下O)▼ で、それがある程度評価されて、やっぱりボクらの考えていたことは間違いじゃなかったって再確認できた。そのぶん、今回はよりポップな方向へ行けたんじゃないかな。
―――その、自分たちの頭に中にあるPINKのイメージって、どんなものなんですか。
F▼ まず何よりも、音楽に対してピュア。そして、6人それぞれが持ち合わせているものの埋蔵量が膨大!
O▼ いまの音楽シーンってホント典型的なものしかないじゃない!?たとえばバンドにしても、「オレたちにはコレしかない」といってシコシコやってる人たちと最初から売れることを前提にしてる人たちのどちらかでしょ。でも、本当は売れることとアーティスティックなことは、同じもんだと思うんだよね。だから、PINKは、アーティスティックな部分を切り捨てずに、自分たちがいちばん解放された状態で、パーっと花ひらきたい。
―――それって音楽本来の姿だと思います。
O▼ そう!ボクらがいってるようなことは、ミュージシャン同士で話しててもよく出る。でも、みんな成功すると守りの姿勢に入っちゃうんだよね。
F▼ あたり前のことができなくなっちゃう。
O▼ でもPINKは「好きなことやって、武道館を満員にして、みんなを感動させてあげたい」という誰もがアマチュア時代に持っていた心意気をキープしていきたい。
―――『光の子』の話に戻るけど、音作りの方法も1枚目とは違う?
F▼ 1枚目はとにかくデビュー作ということで、パワーのあるものを追求したのね。その結果ちょっと重くなった。
O▼ 2作目は、アレと比べると一歩ひいた作り方だね。客観的に作れたと思う。
―――実際に完成した音を聴いてみてどうですか。
F▼ 1stアルバムはわりとモノトーン感覚だったけど、今度のLPでかなり色彩が出てきたね。自分たちに余裕が出てきたせいか・・・。おそらく3枚目は、より極彩色に近いものになるんじゃないかな。
(インタビュアー:今津甲 撮影:菅野秀夫、大沢秀行)
「FM STATION」1986年3月10号掲載記事