エンちゃんこと、福岡ユタカ。カメちゃんこと、矢壁アツノブ。元PINKの”エン・カメ”が結成したユニット、HALO。新たに設立されたZaZaレーベルからデビューした。

PINKが実質的に活動を停止してから2年。ヴォーカルの福岡ユタカとドラムスの矢壁アツノブによる新しいユニットHALO(ハロー)がついに姿を現した。マイルス・デイヴィスの『TU TU』などを手掛けてきたニューヨークのエンジニア、ブルース・ミラーによってミックスされたアルバム『HALO』(アルファ)は、福岡のメロディー・メーカーとしての個性や、矢壁の持つシャープなリズム感覚が凝縮された内容。音楽的には高度ながら、全体の雰囲気は実に気負いがなく、リラックスしているのが印象的だ。

「PINKが終わってから随分経っているから、それと比べて、どういうスタンスを取るかという考え方はなかったのね。ただ、ふたりでやるっていうことで、ゆったり腰を落ち着けてできるようになった。今は機材揃えれば、ひとりでも出来る時代でしょ。そういう意味では、画家の人が絵を描いたりするのと同じようなスタンスで、音楽を作っていけるんだよね」(福岡)

福岡と矢壁のつきあいはビフラトーンズ以前に遡り、すでに12年に及ぶ。そして、アルバムに参加しているメンバーも窪田晴男など、古くからの友人ばかりだ。良くも悪くもメンバー間の軋轢がサウンドにも反映されていたPINKとは対照的に、シンプルかつ、まろやかな感触を持つ音に仕上がっているのは、そのせいだろう。

「何よりメロディーを活かしたかったから、それを邪魔するような音はまったく入れてない。こんなに音が薄くて良いのかな?っていうぐらいのサウンドだよね」(矢壁)

「サウンドでインパクトを与える音楽っていうのには、みんなもう麻痺しちゃってるんじゃないかな。スプラッターみたいな刺激っていうのはあると思うけれど、あれはシミュレーションのなかの刺激で、匂いもなければ、肌触りもないみたいなものでしょ。そういうハイパー・リアルな刺激はどこまでもエスカレートしていくけれど、みんな、それは嘘だと思って楽しんでいるわけでしょ。僕がやりたいのは、そういうものじゃないからね。どこに行っても、これが俺のオリジナリティーだって誇れるものをやりたいし、今はもう、ロックとかそういう枠も取りはらって、すべての人に聞けるチャンネルが開いているような、そういう音楽をやりたい」

1枚目のアルバムはまだ彼らのアイデアの一部を表現したに過ぎないので、ライヴ活動は次のアルバムを作り終えるまで考えていないそう。また、2枚目では海外のミュージシャンとのコラボレーションも積極的にやっていきたいということで、今回、ミックス・ダウンを行ったニューヨークでは、そのためのリサーチもしてきたようだ。表層的なバンド・ブームなどとは無縁のところで、静かにオリジナリティーを追求するこのプロジェクト。「一番長く一緒にやっているけど、一番、ストレンジな相手で、だから面白い」(福岡)というふたりの音楽が、これから、どう発展していくのか、実に興味津々だ。

■取材・文/高橋健太郎 撮影/橘 蓮二