音のこもったカセット・テープで聞いたのだが、そのこもり、くもりガラスのむこうにくっきりと色彩感の際立つ風景が見えてきそう。強靭なグイノリのベース、ストレートなドラムスのむこう、複雑に入り組んでいるはずのギターやキーボードで埋めつくされた音の表情が、それぞれにくっきりと際立って聞こえてくるような感じ。ま、テープの音がそうよくないんで勝手に想像しちゃってるところがあるかもしれないけど、でも、その質感、肌ざわり、カチッと構築された音は、まさにディジタル・レコーディングを絵にかいたようで気持いい。CDで聞きたかった。

音作りばかりじゃない。そのもと、つまりは演奏、アレンジ、アンサンブルがしっかりしてるからこそ、この迫力、ダイナミズムを生み出せたのに違いない。ファーストもよかったけど、このアルバムの出来も相当なものだ。その演奏の技量をまず買いたい。ノリのセンスも相当なもの。どっしりとした手ごたえがあって、グイグイとうねっていう。もちろんいくらかカタさを残すところもあって、柔軟さがもっとほしいという気がしないでもないが、その辺は今後に期待したい課題のひとつ。

注目したいのはべース。グイノリのダイナミズムにほれちゃいます。それに対抗するドラムスのキックの迫力も並みじゃないが、スネアのキレが、欲を言えばもうひとつ。いや、その辺、ミキシングとも関係してるのかも。ボブ・クリアマウンテンあたりがミックス・ダウンを手掛けたら、その表情も大きく変わったに違いない。ヒュー・パジャムでもいいけど。そしてギター、キーボードのアンサンブル・プレイ、とりわけ12弦を含めた生ギターとキーボードのリズム・センスがよい。

という風に、演奏は文句なし。アレンジもなかなか絶妙でありながら、たとえばA①、B①での作風とサウンドのポリス風の処理が解せない。ポリス風というのは前作にもあって、それも敬意のくみとれるものだっただけにほほえましくも思ったが、もはや彼らには必要のないものではないか。彼らなりに咀嚼したものであろうと、その色彩は、やはり誤解をまねくに違いない。となると、A⑤やB④あたりでのプリンス風のペイズリー・センスも糾弾すべきなのだろうが、それらに関しては身に付いたものをくみとれるし、とりわけB④でのサイケデリック風の消化は地平の広がりもあり、ポジティブな姿勢が窺えるのである。そのB④に、ファンク風味のベースと生ギターのからみがおもしろいB③が聞きどころ。福岡裕の歌はしなやかさが魅力だが、べったりとしすぎない情緒が、も少しあっていいのでは?それとも潔いクールさを強調するかだ。

(小倉エージ)