先月号、ホッピー神山氏の講座”KEYBOARD MANUAL”のページで、PINKのロンドン滞在中の話が出てきたが、実際10月7日のBUSBY’Sでのライヴはすこぶる評判が良かったみたいで、リズム・セクションの強力さ、特にベースの岡野ハジメの持つ独特のスタイルは、イギリス人にも非常にユニークと感じた人が多かったようだ。そしてエスニックな雰囲気、シンセとギターのシンプルなリフで構成される透明感は、PINKの持つオリジナリティの証しとして、関係者だけでなく会場を冷やかしで覗いた新シモノズキのロンドン子達にもウケたみたいだ。
帰国後は、現在日立マクセル・ビデオ・テープCFでおなじみ「KEEP YOUR VIEW」の(シングル用)プロモTV録り。これは全編モノクロで、メンバーのバスト・ショットが次々とダブっては消える、鋤田正義のカメラによる美しい画面に仕上がった。
そして、この本が出る頃には、あと十数日と迫っているホール・コンサート。12/18大阪厚生年金会館、12/21東京・渋谷公会堂だ。ロンドンで得た体験をもとに、今までよりもはるかに大きなスケールでライヴを展開してくれるのは間違いない。
しかし何といっても待ち遠しいのは、来年の1/28にリリースされる3rdアルバム「PSYCHO-DELICIOUS」だ。”サイケデリック”の語源を意味するこの言葉が象徴するように、きらめくような色彩感覚に溢れた世界が彼らならではの壮大なビートに裏付けられ、繰り広げられている。1st・2ndで聞かれた、豪放さと繊細さの間を揺れるPINKの魅力はここでも余すところなく発揮されており、日本のバンドが到達できなかった地点を軽くクリアーして、遥か彼方に突き抜ける。
この3rdアルバムをリリースした後は、2~4月にかけて全国13ケ所のホール・コンサート・ツアーが予定されており、CF、プロモ・ビデオのオン・エア、アルバム・リリース後だけに、全国津々浦々に増殖したPINKファンにもその姿を強烈に焼き付けることだろう。
また、同じころには、XTCや後期ジャパン等のミキサーとして知られるスティーヴ・ナイによるリミックス12インチ・シングルのリリースも予定されていて、自分の手掛ける仕事に対して徹底的に神経質な彼がOKを出した初めての日本のバンドがPINK、ということもあって今から各方面で非常に注目を集めている。
そのズバ抜けた音楽性が、前述のライヴ、12インチ・シングルを通じて世界に認められようとする兆しがハッキリと顕れてきているPINK。行動範囲がワールド・ワイドに拡がる日もそう遠くはない。
「Player」1987年1月号掲載