PINK東京公演

会場内に煙がたちこめてきたので、さあくるゾと思っていたら、「オッオッオッ・・・(?)」という「光の子」のイントロが流れてきた。それにメンバーの生演奏がかぶさっていくという美しいオープニングでコンサートは幕を開けた。
ツアーの初日ということもあってか音のバランスがあまり良くなく福岡ユタカのヴォーカルは聞きとりづらいが、レコードでの緻密な音作りとは一味違ったダイナミックな演奏は彼らのもうひとつの魅力を教えてくれた。もちろん、そのダイナミズムを支えているのは、レコードからもわかるメンバーひとりひとりの高い演奏力であることは間違いない。なかでも際立っているのがリズム隊のふたりだ。

単音でストレートに押してきたかと思えば、今度は一転して自由に飛び回るようなフレーズで迫る雄弁な岡野ハジメのベース。ヘッドフォンをして注意深く叩いているようでいて実に思いきりのいい、しかしビートは限りなくジャストに近いという不思議な”ディジタル感覚”を持った矢壁アツノブのドラムス。このふたりのコンビネーションがPINKの独特なサウンドの根幹を成しているようだ。

コンサートは『光の子』からの曲が多かった前半から、福岡がギターを持ってソロで歌う「ルシア」をはさんで後半へ。後半ではデビュー・アルバムからも多く演奏された。ちょうどリリースの順とは逆になっているわけだが、ロックンロール的展開の前半とファンク色の濃い後半という対照がはっきりしていておもしろかった。僕個人としては、一度聞いてしまったが最後、その日一日は頭からそのフレーズがはなれないという恐ろしい(?)「Don’t stop Passengers」のような曲入りの2枚目の方が好きだけど・・・。

ストーンズの昔のツアーや、ヴィデオにもなった「ワン・トゥ・ワン・コンサート」でも使われていた、鏡でライトを反射させる、というアイディアを応用した照明は効果的だったけど、肝心のメンバーの衣装は中途半端、左手を前にかざしながら歌う福岡のアクションもいただけない。気を配って欲しかった部分だ。

評価が高かったアルバムをひっさげてのツアーなだけに、メンバーの一生懸命な姿が印象的なコンサートだった。
[3月29日 中野サンプラザ]

寺田正典