ファンの嘆きをよそに、ライヴはもうしません宣言をしてしまったピンク。ニュー・アルバム『RED&BLUE』は出たものの、もうピンクとしてインタビューをうけるのもこれが最後になるかもしれないという話を聞いて、あわててヴォーカルの福岡氏に会った。
--今回のアルバムは、いつごろから作ってたの?
福岡 アルバムを作ろうか作るまいかって話もあったからね。で、やっぱり作ろうって曲作り始めたのが、夏前くらいかな。僕はそのあたりから、MTRの12チャンネルを買ったんで、それを使いながら曲は書いてたんですよ。それは、ピンクになるか、自分のソロになるかわからないけど、とりあえず自宅録音で、曲はボチボチ書いてた。
--まるで個人作業?
福岡 うん。アルバム作るとしたらこれが最後だし、もういわゆるバンドでレコーディングする意義はなかったからね。やるって決めた時点でじゃあバラバラにやろうって。ただ「ベルリンは宇宙」だけは、前回のレコーディングの時にとって、入れるのやめようということになったヤツなの。だから、今回唯一これが、メンバー全員が入ってる。
--じゃあ、もうあとの8曲は、バンドって感じで全員でやったんじゃないんだ?
福岡 そう。レコーディング中も、会わなかったしね。
--ということは、ヴォーカルも全曲福岡さんではない?
福岡 そうです。ホッピーが作った曲はホッピーが歌って、岡野君が作ったのは、岡野君が歌ってるんじゃないかな。だから、これは前作の『CYBER』の延長みたいなもんじゃないかな。で、さらに個人個人が別々になってきたって感じでね。どっちかっていうと、音数の多いバンドだったけど、個人個人でやったほうが、音的には整理されてていいんですね。
--福岡さん自身の部分は、どんなレコーディングだったんですか。
福岡 僕のやったのは、エン(彼のニックネームはエンちゃん)・カメ(ドラムの矢壁氏)・バナナ・ユニットで。それに曲によって(パール兄弟の)窪田(晴男)が入ってる。
--レコーディングするって決まった時に、もうこのユニットだなと?
福岡 うん。でも、単純にこいつが好きだから一緒にやるっていうんじゃなくて、面白いもんができそうな仲間を集めたほうがいいなと思って。
--曲は、個人的に作りためてたものから、ピンクでやったらよさそうなものをピック・アップした?
福岡 そうですね。やるんだったらこの曲とこの曲って感じでね。手を抜くっていうんじゃないけど、最後のレコーディングで新しいことやってもなんだから、ピンク以降にやりたい曲みたいなのは、いちおうとっておいてね。
--福岡さんの曲の中では、「水の絆」がインドネシアのケチャ風エスニック・サウンドで、ボーカルに言葉をのせないっていう、思い切ったことをしましたね。すごく気持ちいいけど。
福岡 スキャットっていうのを、すごくやりたくてさ。詞が重要な部分じゃないってところで、ヴォーカル的なものがよけい目立つっていうかさ、よりヴォ―カリゼーションとしての可能性を引き出せるっていうのが、魅力あるからね。
--でピンクは、これで解散ということなの?
福岡 事実上は多分そうです。僕自身としては、ピンク自体に問題があったから解散ていうより、ほかでやれることをやりたかったから。
--福岡さんに関しては、ソロ・ユニットも考えてるってことなんだけど、それはこのアルバムに入っているものの延長線上と思っていい?
福岡 それはちょっと違うよ。うん。
--それが、秋頃に見えるかもしれない?
福岡 かもしれない。それは乞うご期待で。
(文・角野恵津子/写真・ヒロ伊藤)